第4話「おうちDEお芋HORI☆」

「ワイ、痩せるんや」

「今度のワイは本気やで~」 


その言葉を聞いて、僕に戦慄が走った。


嫁がスーパーで買って来たサツマイモ。

これで、ふかし芋を作って痩せるらしい。


「やせねーよ?バーカ(笑)」

心の中で、小バカにするつもりが、つい笑い声と一緒に発してしまった。


「オイお前、嫁ちゃんを傷つけた罰は重いぞ……」


「……」

あ~、メンドクセ~


この前の繰り返しになるが、ここからの押し問答は、もはや伝統芸能の域に達している。


「やれ」

「やんないから」

「やれよ!」

「いや、お前がやれよ」

「いや、お前だろ」

「いやいや、お前だって」

「はっ?お前がやるんだよ」

「なんでだよ?」

「なんでもだよ」


「レンチンするだけだから~」

「レンチンするだけならお前でいいだろ!」

「お前、さっきから、嫁の事お前っていうな!」

「お前がお前って呼んでんだろ」

「簡単だから~」

「はっ?簡単なら自分で作ればいいじゃん」

「作れない~・・・」


「HA? FUCK くたばれ KU・SO・YO・ME」


「甲斐性ナシ、髪も~ナシ、お前は、もう用ナシ」


こんな時ばかり、やたらと頭の回転が早い嫁

僕は、謎のラップバトルに完敗した。。。


disったらdisり返す。それが嫁の生き方。ANOTHESKY


そんなこんなで、ふかし芋を作った。


作ったら、作ったで、『まだ硬い』とか『ボソボソする』とか『麦茶いれろ』命令ばっかしてくる。

だから、嫌なんだよ~。


そもそも、美味しくないからと言って、芋にバター乗せて食べたら、ダイエットになんねーじゃん。

ホントに嫁は“あたおか”だよ全く。


そして、芋の流行りも一日で終わった。

でも、本当に大変なのはここからだ。

残された芋たちが、何故かとんでもない所から出てくる。


嫁のドレッサーの椅子の下から、芋が出て来た時は、爆笑した。


災害と夫の恨みは、忘れた頃にやってくるのだよ……ふっふっふ。


妙案を思いついた僕は、メガネをクイッと上げた。


嫁のビジネスバックに、バレないよう芋を忍ばせる。

この事は、当然嫁にはナイショ……クックックッ。


しかし、僕自身もすっかり忘れてしまっていた。


ある日、『ピンポ~ン・ピンポ~ン』『ガタガタガタガタ』

呼び鈴と同時に、ドアノブをガタガタと引っ張り、“早く開けろ”の合図をする。

それだけで、誰が帰って来たかすぐ分る。


「あ~、うるさい!行動がマジで猿」


『ガチャ』


「カギ持ってんだろ、自分で開けろ」

「オイ、お前やってくれたな?」

「はっ?何が?」

「何が?じゃないよ!ここんトコやたら鞄、重いな~と思ったらコレだよコレ!」

そう言うと、鞄の奥底から、あの日、忍び込ませたサツマイモが出て来た☆


「ぶぶぶっ」

笑いを堪えるのに必死だった。


「ぶっ、え~そうなんだ~ブハッ(笑)」

「笑ってんじゃねーよ」


「え~、だって大切そうにしてから~www」

「お腹空いた時、すぐ食べれていいじゃ~んwww」

「筋トレにもなって、痩せれるねーwww」

僕はここぞとばかり、嫁を煽った。


「じゃぁ、せっかくだから、お芋ふかしてあげようか?www」


「いらない!今はいい。そんな気分じゃない」

「お前、ワザと言ってんだろ💢」


「うんwww」


その後、嫁はソファーにどっしりと座り、テレビを観ながら、スマホをいじっていた。


「わ~☆サツマイモの芽ってよく観ると綺麗だね~☆」

僕は厭味ったらしく嫁に言った。


「食べないの~?」

「食べるよ💢」

「いつ~?」

僕はワザと言葉の語尾を伸ばして嫁をイラつかせる。


「いつかだよ💢あーうっせーな、こっちはオセロで忙しいんだよっ!!」


「チッ」

鬱陶しそうに舌打ちする嫁。


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