夢と記憶…

〈ユキナ視点〉










生徒「ちゃんと先生になってよ?笑」





「ふふ…任せてよ!笑」






実習最終日の放課後…

親しくなった女子生徒数人と職員室前の廊下で話していると

「あっ!青城君だ」と少し離れた距離から

浮かれる様な楽しそうな声が聞こえ

話していた生徒達と顔を向けると

袴姿の男子生徒達が窓の外を歩いているのが見えた





女「やっぱり1番は青城君だよね?」





女「バスケ部の萩君もカッコよくない?」






耳に届く高校生らしい

甘酸っぱい内容に思わず頬を緩め

皆んなが見ている青城君に目線を向けると

一瞬目が合った様な気がして…






「・・・・ぇっ…」






パッと目が開く感覚の後…

視界に映る暗い自分の部屋の天井を眺めながら

「ゆめ…」と声にならない様な

小さな呟きを漏らし

目を覚ます直前までみていた

7年前の…夢の記憶を辿った…






( ・・・・なにか……言ってた? )






目が合った青城君の唇は…

小さく動いていて…

私に…何かを言った様な気がする…






「・・・夢?…それとも…」






夢なのか…

本当にあった記憶なのか…

ハッキリとしない映像に

少しだけ気持ち悪さを感じながら

寝返りをうとうとして

「ッ…」と左腕に感じた痛みに顔を歪めた






ギブスがつけられた左腕の存在を忘れ

左側に寝返りをうってしまった自分に

「ばかだな…」と呟き

体をベッドから起こして

キッチンの方へと歩いて行った





冷蔵庫の扉を開ければ

少しだけ眩しさを感じる光が目に飛び込み

2時位かなと思いながら

ペットボトルのお茶を手に取り

緩められた蓋を軽く回し

ゴクゴクッと冷たい緑茶を喉に落としていく…





「ハァ……」





冷えた緑茶によってスッとしたのは

喉元だけではなく頭の中も

すっかり目覚めてしまったようで…




右手にあるペットボトルに目線を落とし

開けやすい様にとペットボトルの蓋を

わざと緩めて閉めていた青城君の事を考えていた






アスカ「後ろ向いて…」






「え?」






帰ろうとする青城君を

玄関まで見送ろうと後をついていくと

急に足を止めてそう口にした彼は

私の肩に手を乗せて

後ろを向く様にと促してきた





彼が何をしようとして

そう言っているのかが分かり

ゆっくりと背中を向けると

髪の毛を持ち上げられたのと同時に

自分の首後ろに熱い吐息が触れ

「んッ…」と小さく声を漏らした






彼が…青城君が

私に痕をつけるのは決まって

首の後ろ側で…






「・・・・愛情じゃ…ないよね…」






好きだからつけると言うよりも

何か…違う意味がある様な気がしていた






「・・・・・・」






ペットボトルを冷蔵庫の棚へと戻し

パタンと閉じた扉の前で

もう一度さっきの夢の事を考えていた…






アスカ「……………」






( ・・・・・・・ )






夢の中の青城君のあの目は…

まるで私を軽蔑するかの様な目で…





もし…

あれがただの夢ではなく…

本当の私の記憶なら…







アスカ「昔っから…アンタは最低だったよね」








私は彼に…

何かしたのかもしれない…












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