擽ったい…

〈ユキナ視点〉













週明けの今日…

久しぶりに出勤した私は

少し…緊張をしていて…





いつもよりも

更に早く会社へと着き

誰もいない静かなロビーを歩いていると

エレベーターの前にいる青城君を見つけた







「・・・ぁっ……おは…よう…」






「早いよ、先生…笑」







機嫌よく笑って近づいて来る彼の笑顔に

数日前に見た…あの…

夢の中の顔が小さくフラッシュバックして見え

思わず半歩後ろに下がってしまうと

「別に怒ってないよ?笑」と言いながら

私の目の前へと立つ青城君を見上げた








「・・・あの……わたし…」







アスカ「・・・・・・」








「6年前に何かした?」と…

問いかけたいのに…



 




私を見下ろしている青城君の顔を見ていたら

言葉にする事が出来なかった…







アスカ「なに?休みボケとか?」







最近の青城君は…

機嫌がよくて…

こんな風によく笑っている…





目を細めて笑うその笑顔は

可愛いいし…

7年前に彼が嫌いだと言っていた

ぽてっと厚い唇は少しだけ赤い血色もあり

白い肌に映えて、まるで…







( 女の子みたいだ… )







この笑顔を壊してしまうのが怖くて

彼の機嫌を損ねない様にと

言葉を飲み込んでいた…








アスカ「ギブス生活には慣れた?」






「・・・・なれ…た…」








私の背中に手を当てて

エレベーターへと促す青城君に従い

コツコツ…と静かなロビーに響く

二人の足音を聞きながらエレベーターへと歩いて行き…







アスカ「またお昼にね」







4階で私をエレベーターから降ろすと

ニッコリと笑ってそう言い…






彼の乗ったエレベーターが

上昇していくランプを眺めながら

変な気分だった…







別に用があったわけでもないし…

機嫌を悪くして私を待っていたわけでもなかった…






ロビーからエレベーターまでのこの距離も

大した距離ではなく…






たった数分間の為に

私を待っていた理由が分からなくて






「なんの為に…」と…

此処にはもういない彼に問いかけていた…






私に対して

〝恋〟なんて感情があるとは思えないし…








「・・・・・・」








( だけど… )








〝なんで?〟と言う疑問に

少しだけ擽ったい感情も混ざっていて…






いつもよりも

軽い足取りで廊下を歩いている自分がいた…































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