病院…

〈ユキナ視点〉










D r「左腕はギブスで固定して…

  左臀部側は強い打撲跡はありますが

  骨に異常はないので…

  痛み止めと湿布で様子をみましょう」







フクタニ「そうですか」







あの後…

連絡を受けた福谷さんが

高島さんと駆けつけてくれて

「労災の件もあるし私が一緒に行きます」と言ってくれた…








( ・・・福谷さんで良かった… )







溝口さんが電話をかけた甲斐さんは

営業課の課長さんと一緒に現れ…

「なんで…二人で階段に?」と

怪我よりもそっちの方が気になっていて…







トオル「エレベーターが混んでいて

   たまたま階段を使ったら

   白石さんもいたんだよ…

   俺が驚かせたから彼女は足を踏み外して…」







課「病院は…福谷かのじょにまかせて…

  君は…全員、自分の仕事に戻るんだ!」







自分の責任だからと

病院に付き添おうとする溝口さんと…

私の腕をずっと掴んで支えている青城君…

二人に向かってそう言っているのが分かって





他部署に迷惑をかけている自分が

また情けなく思え

顔を下げたまま福谷さんに

「お願いします」と伝えた…







フクタニ「私はこのまま会社に戻るから

   白石はタクシーで家に帰りなさい」







病院から出て来たのは13時半を過ぎていて

お昼休みも取れていない福谷さんに

申し訳なく感じながら頭を下げて…





「ありがとうございました」とお礼を伝えてから

タクシーへと乗り込むと

「課長と話してから、また連絡する」と

コンビニのビニール袋を窓から渡してきた






フクタニ「料理は無理だろうから

   今日はコレを食べてゆっくりしてなさい」






ビニール袋の中にはパンやおにぎりの他に

カップ麺や小さなサラダが入っていて

会計の途中かギブスをつけている時に

買って来てくれたんだと分かった






「ありがとうございます…

 本当にいつも迷惑…ばかりかけて…」







フクタニ「後輩っていうのはそういうモノなのよ」







同性から…

こんな風に言ってもらえるのは

いつぶりだろうか…




あまりの久しぶりさに

目頭が熱くなってきて「ありがとう…ございます」と

もう一度お礼を伝えてから運転手に住所を伝え

ゆっくりと発進しだしたタクシーの中で

溝口さんと…青城君の事を考えていた…







トオル「診察が終わったら一度連絡もらえるかな?」







胸元から名刺入れを取り出して

名刺の裏に携帯番号を書き出した溝口さんに

「気にしないでください」と伝えたけれど

溝口さんは名刺を私の右ポケットへと入れて

「必ず連絡して」と言ってきて…






私を支えている青城君の手が

ギュッと腕に食い込み…

彼が…青城君が怒っているのが

ヒシヒシと伝わってきていた…







フクタニ「随分と気にしてるみたいだったし…

   連絡してあげてやって?」







会計を待っている間

待合室の椅子に並んで座っていると

福谷さんからそう言われ…

「はい…」とは答えたけれど…






( ・・・かければきっと怒る… )







ギブスをつけている左腕よりも

溝口さんの番号が入っている右ポケットと

青城君に掴まれていた右腕の方が

遥かに重くて痛い気がしていた…

























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