呼び出し…

〈ユキナ視点〉











定時を迎え

いつもの様に階段を使って一階まで降りながら

夕方のLINEの確認をしていない事を思い出し

慌ててバックからスマホを取り出すと

LINEの通知が表示されていて

ホッと息を吐いてから通知をタップした






先輩達のいる経理課あそこ

スマホを触るのは何となく嫌だし…






退社時間は出社時間みたいに

早めたりは出来ないから

人通りの多い一階ロビーを歩くのは

ヤッパリ…緊張してしまう…





だから、いつも顔を下げて

早足でアパートまで帰っていて

青城君の言う夕方のLINEの確認を

忘れてしまう事が何度かあり…






電話の青城君は

「ふふ…慣れないねぇ」と笑っていたけれど…








アスカ「連絡取れないスマホなら…いらないでしょ?」







また…あんな風に言われるんじゃないかと

ヒヤッとした気分になる…








【 明日のお昼も一緒に食べよう 】







「・・・・えっ…」







送られてきていたメッセージを見て

自分の顔も声も…戸惑っていた…






今日は金曜日で…

彼の言う明日は土曜日だから

会社は休みだ…






( ・・・明日… )






勘違いしているのかとも思ったけれど…

もし間違いでなかった場合…

彼の機嫌が…悪くなる気がした…






「・・・・・・」






GWの時も

彼は私の予定を聞いていたから…




青城君は…

会社の外で私と会おうとしているんだろう…






スマホを握っていない方の手が

小さくピクリと動いて

無意識に自分の唇へと伸びていった…






「・・・・外…は…」






会社のこの階段でも

身体を抱き寄せて

あんなキスをしてくるくらいだ…







( もし…人の来る事のない場所だったら… )








アスカ「先生から絡ませてよ…」






「・・・エ…」






そう言って自分の唇を少し開いて

顔を近づけてくる彼に戸惑いの顔を見せると

グッと唇を重ねられ荒いキスの合間に

「ホラ…」と催促され…





目をギュッと閉じたまま

自分の舌を…彼の舌に触れさせた…







( ・・・・・・ )







会社の外で会ってしまえば

彼はキス以上の関係を求めてくる気がする…







「・・・でも…どうしよう…」







GWの時の様に無視をすれば

また機嫌の悪い顔で立っているはずだ…






実家から母が会いに来る事にしようと思い

LINEに入力しながら

彼が勝手にスマホを見たらと不安がよぎった…






前回も実家に帰省すると言って…

その嘘はバレてしまった…






スマホを見て

なんて返そうかと悩んでいると

【22時に電話する】と

新しくメッセージが届き

唇が小さく震えた…






既読マークがついているのに

いつまでも返事を返さないから

そう送ってきたのが分かり…






きっと今も

直ぐに既読のマークがついたの見て

私がスマホを見ている事は丸わかりだろう…






機嫌が悪くなるのが怖くて

【はい】とだけ返事を返し

鉛の様に重くなった足を動かして

階段通路から出ていくと

「いたッ!」とよく知っている声が聞こえ

ゆっくりと声のする方へと顔を向けると






ついさっきまで

私の右隣に座っていた高島さんが

小走りに駆け寄ってきたから

何か書類の不備でもあったのかと思いながら

ズレてきている眼鏡をカチャッと上げた







タカシマ「お前…はえーよ…笑」






「すっ…すみません…アノ…何…か?」







人の通りも多く

周りの視線を気にしながら

小声で問いかけると

「あっ!そうそう」と言って

一歩私に近づくと「今からちょっといいか?」と…

高島さんも小声で話してきた







「・・・何か不備がありましたか?」







タカシマ「あー…うん…そう!笑

   とりあえず俺が訂正したからいいんだけど…」








どの書類だろうと思い

経理課に戻って確認しようかと思っていると

「仕事の事で話あるからちょっと付き合え」と

スタスタと歩き出した高島さんに

「えっ?」と戸惑いながらも






ここでは話せない程のミスなんだと思い

高島さんの背中を小走りで追いかけた





















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