タイプ…

〈アスカ視点〉










アスカ「あの人じゃないんですか?」







社食に行ってメニューを眺めていると

経理課の女の人が座っているのが目に入り

隣りに立つ溝口に指を差して伝えると







トオル「えっ…あぁ…

   向こうも食事中だしまた後で話に行くよ」







アスカ「・・・そうですか…笑」








あの女の人は

よく社食で見かけるし…

入社したての時に「お疲れ」と

溝口も普通に声をかけていた






休憩に入って15分ほど経ったあの時間に

訪ねて来るなんて変な話だし





探していた人物がいるのに

声をかけないのも…変だろ…







( ・・・・・・ )







定食の乗ったトレーを手に持ち

甲斐達のいる席へと近づいて行って

腰を降ろして箸を握りながら

「先輩は…彼女はいないんですか?」と質問をした






トオル「なんだ急に?笑」







カイ「俺も入社したての時によく聞いたよ!笑

  仕事は出来るしカッコイイし…クォーターだし…

  めちゃくちゃ可愛い彼女がいるんだろうと思って」







トオル「クォーターは関係ないだろ?笑」







カイ「いやだから!青い目をした美人ですよ!」








俺の質問に食いついてきた甲斐は

口に入れたフライが見える位に

ペチャクチャと話だし

内心目を細めたい気分だったが

あまりプライベートな話をしない溝口には

甲斐位にズケズケと質問をする位が丁度いいのかと思い

口の端を上げて溝口の返答を待っていた







トオル「青い目の美人って…あーそういう事か…笑

   俺は日本人としか付き合った事はないぞ?」







カイ「そーなんですか?

  先輩ならいけそうですけどね…

  じゃーどんなタイプが好きなんです?」







「そうだな」と目線を上にあげて

考えている溝口に目を向けた





ガッシリとした骨組みに程よい筋肉のついた体は

シャツの上からでもいい体だと分かるし…





目鼻立ちもハッキリとしているのに

妙に爽やかな感じがまた鼻につく…






( ・・・身長も181だったな… )






173センチの身長は高くもなければ低くもなく…

至って普通の身長の俺から見ると

やはり溝口はイイ男だと思う…







トオル「・・・タイプか…

   強いて言うなら清楚な感じじゃないか?」







カイ「清楚?」







トオル「いつの時代も男は

  守ってやりたくなる様な子が好きだろ…笑」







アスカ「・・・・・・」







口の中にあるハンバーグが

奥歯にガリっと当たり

異物感の様な塊に眉をピクリと寄せると

「どうした?」と

俺の表情に驚いて声をかけてきた先輩に

「スジの部分があって」と笑って答え

テーブルに置いてある紙ナプキンを手に取り

噛み砕けなかった肉を吐き出して

ギュッと握り潰した






( ・・・守って…やりたくなるねぇ… )






先輩の答えに

さっき経理課に訪れた理由は

やっぱり、あの人なんだと分かり

水の入ったコップを手に取り

ゴクゴクと喉の奥に冷えた水を流し込みながら

「お疲れ様」と機嫌良く入って来た

溝口の姿を思い出し

あの時間に訪れたのは

今日が初めてなんかじゃないなと思った







トオル「俺よりもお前達はどうなんだ?笑」







カイ「俺は可愛い彼女を絶賛募集中ですよ」







トオル「お前はいつもだろ…笑

   青城はどうなんだ?誰かいるのか?」








手に持っているコップをトレーに置き

顔を溝口の方へと向け「いますよ」と笑って答えた







カイ「はっ!?お前彼女いんの?」







アスカ「彼女っていうか…

   ずっと欲しい人がいるんですよ」







カイ「ほっ…欲しい?」








そう…欲しいんだよ…

俺はあの人が…





「好き」なんて軽い言葉じゃなく…

全部が欲しいんだ…







いつもの雰囲気とは違う俺に

皆んなが少し驚いているのは分かっていたけど…

口に出さずにはいられなかった






溝口は「意外だな…」と目を見開いた後に

ニッと笑って「手に入るといいな」と

俺に言ってきたから「そうですね」と笑って答えた







( アンタには渡さないよ )







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