記憶…
〈ユキナ視点〉
早い時間からベッドの中に入った筈なのに
なかなか眠りにつけなくて
時折聞こえてくる
隣人たちの立てる物音だけが耳に届く…
( ・・・・さい…てい… )
自分の唇へと指を当てて
青城君から言われた言葉の意味を考えていた
彼の言う「昔から」は…
間違いなく6年前のあの2週間で…
「・・・・・・」
あの頃の私は
今みたいに顔を隠して歩く事もなく
ちゃんと顔を見合って話していて…
普通に過ごしていた…
6年前とは違って
見た目も…中身も…
情けなくなってしまった私に対して
あの告白をなかった事にしてほしいと
青城君が思うのは当然だし
誰かに言わないかと心配なんだろう…
「・・・・昔…から… 」
( 何か…したのかな… )
青城君から告白された事は思い出したけれど
特別嫌われる様な事をするほど
彼と話した記憶はなかった…
あの日の返事も…
「気持ちは凄く嬉しいんだけど…
その…お付き合いしている人がいるの…」
本来…先生という立場にあった私が
生徒相手にそんなプライベートな話をする事は
あまり良くないのかもしれないけれど…
本当の事だった…
あの頃の私には
付き合っていた彼氏がいて…
「キミとは年も離れているし」や…
「お互いの事よく知らないから」なんて
適当に流すよりもいいと思ってそう答え
青城君も「そうですか」と
顔を下げたけれど
最後は笑って
「幸せになってくださいね」と言っていた…
記憶の中の青城君との会話は
これだけで…
どうして私に告白してくれたのかも
何が最低だったのかも
正直…全部わからない…
【 男相手だとワザと上目遣いでさ…笑 】
「・・・ッ… 」
枕に顔を埋めて
グッと奥歯に力を入れながら
6年前よりも少し先に進んだ記憶を
思い出してしまった自分に後悔し
(消えて、消えて…)と必死に願った
【 あの目だって、絶対コンタクトじゃん 】
( 消えて…全部消えて… )
5年前から昔の記憶は…
全部消えてなくなってほしい…
だからこそ青城君にも
これ以上私に関わってほしくなんかないし
今日の事も全部なかった事にしたい
誰とも関わらず
只々、大人しく地味に過ごしたいだけだから…
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