第8話 携帯電話ですらもう古い!?

「……というわけで今日から新しい仲間が入ることになった」

門河かどかわ 竜一りゅういちって言います。SFが好きなんでよろしく」


 竜一が帰ってきて10日ほどが経った。新たに戸籍を取得したり学校に転校手続きをしたりしてドタバタしたが、無事に高校二年生として新学期を迎えることができた。


「ハァーア。にしても伯父おじさんと同級生とはねぇ……とりあえず学校では伯父さんの事は「竜一」って呼び捨てにするけどいい?」

「構わないぞ。俺も竜也たつやって呼ぶからおあいこだな」


 2人の間にクラスメートが話をかけてきた。


「竜也、竜一の奴お前と同じ苗字で顔が似てるから兄弟か何かか?」

「血縁はあるから似てるかもね。いとこだよ」

「ふーん、いとこねぇ。そりゃ似ててもおかしくねーな」


 竜也は周りの人間には竜一との血縁関係を「いとこ」という事にしている。今のところは納得してくれているようだ。




「なぁ竜也。30年後の世界だったら、もしかしたら携帯電話ってあったりする? いやぁさすがに無いよなー」

「え? 携帯電話? ガラケーの事? 古いよそれ」

「へ? いやいや携帯電話だよ携帯電話。どこにいても誰にでも電話を掛けられるすんげえ便利だけど実現のしようが無いSFのアイテムだぞ?

 ポケベルよりも何倍も凄いSFにしか出でこないアイテムが古いなんて冗談もきついよ」

「だからガラケーなんてもう古くて生産終了しちゃってるよ。今はみんなスマホだよ。っていうかポケベルって、昔の人が使ってた道具だよね? それはもう使えなくなってるよ」

「すまほ? 何だそれ?」


 そう言ってくる竜一に対して竜也は自分のスマホを見せながら説明する。


「これだよ。これ1台で通話からゲーム、音楽、動画、カメラ、メール、SNS、電卓、何でも出来るよ」

「……」


 竜一はただぽかんとしている。


「え、ええと、整理する時間をくれ」


 待つことおよそ数分。整理がついたのか竜一は語りだす。


「お前の言う事が確かならポケベルはもちろんの事、もう携帯電話すら古くなっていてその「すまほ」とか言ったか? それに取って代わられている、と。

 で、その「すまほ」とやらがあれば通話やゲーム、音楽にカメラ、あとは動画と「めーる」とか「えすえぬえす」とかいったか? それが出来ると?」

「うん。そうだよ。大体あってる」

「……とんでもねえな。俺が生きてた頃は音楽はウォークマン、ゲームだったら携帯ゲーム機、写真を撮りたければカメラ、とそれぞれ必要だったんだが全部1つに統一しちまったんだ。スゲェなよく考えつくよなそんなこと。

 トランシーバーとかじゃなくて電話をポケットサイズで携帯できるってだけでもスゲェのに……」

「別に大して凄いってわけじゃあないんだけどね。触ってみる?」


 そう言って竜也は自分のスマホを竜一に差し出した。表面は完全に板状で、ボタンのたぐいは一切ついていなかった。




「え、どうやって操作するんだ? ボタンが一切無いんだけど」

「「タッチパネル」って言って指が触れた場所にあるアイコンが反応するようになってるんだよ」

「お、おお! 本当だ! スゲェ! 未来的だなー。まるでSF映画に出てくる道具みたいだな。バックトゥザフューチャー2でも無いぞこれは!」

「あとフリックもやってみて。こんな風に「はじく」ように指を動かすんだ」

「お、おう……うお! 画面が変わった! さすが30年後の未来だけあるなー、スゲェハイテクだな。こんなのSF作家でも思いつかないぜとんでもねーな」


 竜一は感心しながら改めて周りを見渡す。すると数人の学生は竜也のスマホに似たようなもの操作していた。


「ひょっとしてみんなスマホを操作してるっぽい?」

「だろうね。みんな持ってると思うよ。高校に入ったらスマホ解禁っていう家も多いそうだからね。今時スマホが無ければ何もできないよ。特にSNSが出来ないのは痛いよ」

「ふーん。30年後の未来では『えすえぬえす』ってのがコミュニケーション手段になっているとは聞いてるけどそれほど重要な物なのか?」

「そうだよ。おじ……じゃないや竜一も、もう少ししたらスマホを買ってもらえるだろうから手に入れたら自分でいろいろ試してみたらどうだい?」

「お、おう。そうするわ」




 まさか携帯電話が、あの「電話機を気軽に持ち運べる」という実現したら便利だけどまず実用化はされないだろうなぁ。

 と思っていたものがまさか現実に存在したどころか「すでに旧式の古いもの」と言われる世の中になるとは!

 想像をはるかに超える事が現実に起こっている30年後の未来は本当にSFワンダーランドだ。

 やっぱりあの「運命修正担当の天使」から言われた30年後の未来に行く選択は間違ってなかった。もし生まれ変わることを選んでいたらこんな驚きは待っていなかっただろう。


 ここまでSFのガジェットが現実になっている、あるいはSFの世界にすら出てこないものが次々と出てくるとんでもなく素晴らしい世の中になっているとは!

 竜一にとって令和の時代は到底予測する事すらできない驚きの連続で、SFの世界が現実になっていることが何よりも素晴らしかった。




【次回予告】

 竜一が復学して数日、週末に携帯ショップでスマホを買ってもらった。

 竜也から色々教えてもらったところ、今では動画がすごく流行っているという。そこでとんでもない動画を見ることになるのだが……。


 第9話 「動画投稿サイトはSF」

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