第9話 動画配信サイトはSF

 竜一りゅういちが転入という形で高校2年生の春を迎えた週の週末……スマホを売る携帯ショップに竜一と竜二りゅうじがいた。


「ではこちらになりますね」


 竜二は竜一用に旧式で安いスマホを買い与え、回線も新規に契約したのだ。


「へぇー、これがスマホか。SFにもないアイテムが量産されてて一般の人にも幅広く普及してるんだって? スゲェなー、どんなSF作家でも予測できなかった世界だなー」


 物珍しそうにスマホに触れる竜一。おっかなびっくりでスマホの画面に触れたりフリックを試してみたりと「未知の道具」に慣れようといろいろいじくっていた。

 弟の竜二が運転する車に乗り、携帯ショップから帰ってきた竜一はさっそくおい竜也たつやに聞く。


「なぁ竜也。スマホ買ってもらったんだけどオススメとかある?」

「オススメ? うーん……YouTubeとかどうかな。あ、デフォルトで入ってるようだね」

「『ゆーちゅーぶ』? なんだそれ?」


 聞きなれない言葉に彼は甥に聞く。まぁ竜一は30年前で技術の発展が止まっているのだから仕方ないのだが。彼は竜也に言われるがままアプリを開く。


「動画投稿アプリだよ。誰でも気軽に動画を投稿して見せ合いができるんだよ」

「動画……!? 何だこれ!? これ全部動画なのか!?」


 アプリを起動させると動画やアニメがいくつか表示される。これが全部動画だとは!


「そうだよ。大抵の人はスマホで撮ってるから割と簡単に動画は作れるよ」

「へーこれ全部動画かー! 昔は8ミリビデオぐらいでしか動画なんて撮れなかったのになー。それがスマホ1台でできるとは時代は変わったなー」


 竜一はYouTubeの動画を見ていて、あることに気づいた。




「なんかみんな最初に「はいどうもー」って言ってるけど何かの決まりでもあるの?」

「ああ、それは「YouTuber」っていう人たちで、再生回数に応じた報酬をもらって生活している人たちだよ」

「ええ!? 令和の時代にはそんな仕事があるの!? なんだ、その……『ユーチュバ』とか言ったっけ?」

「YouTuber。で、ガワがバーチャルなキャラクターなYouTuberがVTuberって言うんだ」

「な、何ぃ!? バ、バーチャルなキャラクターが動画作ってるのか!? そんなことまで出来るのか30年後の未来は!」

「そうだよ。VTuberも「中の人」がいて裏で作業やってるけど、とにかく表向きにはバーチャルなキャラが出演していることになっているんだ。

 でも動画の再生時間が伸びないとそもそも収益化されないし、みんな同じようなことやってるからライバルが多すぎて抜き出るにはとんでもなく苦労するって話だよ。

 俺の友達にもYouTuberやってる子がいるけど全然再生回数が伸びないってぼやいてたよ」

「へーそうなんだ。いやー未来だなー。センスオブワンダーを感じるよ」


 平成初期からしたら想像もつかないような職業があることに未来を感じる竜一、そこに竜也があるものを見せてくれた。


「あと伯父さんからしたらこの動画は気に入ると思うよ」


 そう言って竜也は自分のスマホでとある動画を再生しだす。


「!? な、何だこりゃあ!?」


 動画の内容は、とある海外のロボット研究会社が2021年の元日にアップロードした動画で、ロボットたちがダンスを踊っていた。

 しかもそれは一般的に「ロボットダンス」という、人間っぽくない機械的なダンスではない人間のような滑らかな動きで、

 プログラムされた通りの事をやってるだけなロボットには本来は無い感情までも伝わってくるものだ。

 特に人型ロボットは半回転ジャンプや片足立ちなどの極めて高度な振り付けを見事にこなしていた。


「うわなんだこれ! スゲェわこれ! もういつ人型ロボットが発売してもおかしくないぜ! いやー進んでるなぁ、さすが令和の時代だけあるわ。ビックリしたぜ。

 そのうちもっと人間に近いアンドロイド辺りも出てくるんじゃないのか?」

「かもしれないね。気に入ってくれてよかったよ」


 竜一はロボットの「凄まじい進歩」にただひたすらに感動していた。これが令和のロボットダンス! というのを見せられ良い時代になったものだと本気で思っていた。




【次回予告】

「スターウォーズでデス・スターの設計図を電送した」とあったがそれが本当にできる時代になっていた。

 昔はゲームよりもメールをやり取りする方が楽しかった時代もあったそうだ。 


 第10話 「電子メールはSF」

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