第20話 弟 2

彼は中学生になると、更にその奇行ぶりは理解を超えていった。


父母はその奇行に気づきながらも、無関心のように何もせずに


見守る訳でも無く、放置していた。


うちにはその頃、猫が2、小型犬1、大型犬1を飼っていた。


普通の家よりは楽しめたと思う。広かったし、大型犬が


思いっきり走れるくらい廊下は長かった。


そして弟は同級生にはあまり知られていなかったが、


私を通じて、1歳上の私の同級生たちから危険な人間だと


知れ渡っていた。


私にとって初めて友達ができたのは、小学1年生だった。


入学式の後、同じクラスになり、遊ぶ約束をして


私にとって初めての友人が出来た事に、私は気持ちを言葉に


出来ない程喜んだ。


家に帰り、友人が出来た事を話して、準備して待った。


しかし、いつまで経っても彼は来なかった。


私は母に、まだ来ないからどうしたのかなと話した。


母は言った「あの子は帰した」


私は幼稚園でも虐められ、親からも虐待を受けて


家庭教師や少数制の塾で、必要なら暴力を許していた事で


泣いた事は一度も無かったが、私は泣いた。


泣いて泣いて泣き尽くした。


母は私が泣き止まない事に対して、自分は悪く無い態度で


仕方ないから自転車で送ってくれた。


友人がとぼとぼと歩いて帰っているのが見えた。


私はそれから、私とその友人と私の弟とよく遊ぶようになった。


当然、喧嘩もし合った。二人は私より1ランク上な程強かった。


私の友達は強い奴だったが、私の弟とはいつも引き分けで


終わっていた。私のその友人は、後に己の人生の選択を誤り、


苦難する事になるが、それはまた別の機会に話そう。


私の弟はそれほどまでに強かった。


喧嘩に強い人間は、体格は実際あまり関係ない。


強い奴は、手加減しない奴が強い。私はもう一生分の


喧嘩はした。長い間、誰も殴っていない。


友人も30代の頃言っていた。


高校生に喧嘩を売られて困ったと、苦笑いしながら言っていた。


昔、やんちゃをしていた奴は皆、今は大人しい。


私も中学生の頃、毎日のように喧嘩をしていた。


一度、その友人に言われた。ヤバい奴の目で見てくれるな、


怖いわと、言っていた。


弟は中学生時代、友人もいないまま過ごした。


そしてPL高校に入った。

実力でいうと私と同じ高校になるからだった。


私も弟も新興宗教嫌いだ。そして弟はPL高校を辞めて


帰ってきた。


その頃私は、弟と会話を少しする程度の関係だったから


理由を尋ねた。


毎日封筒にお金を100円以上入れて、


お祈りに行かなければ怒られるからだと、彼は言った。


そして毎日、弟は1円を入れていたが、それがバレて


怒られたと言った。


そりゃ辞めるなと私は思った。


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