第13話 サーティー・センス

 キーンコーンカーンコーン。チャイムが鳴って休憩時間になった。


「ねぇ、かすみちゃん?問題出してあげよっか?」


 いつも通りほのかが聞いた。


「…いや、いいや。」


 かすみは、スマホに目を向けながら言った。


 ほのかはかすみのスマホを取り上げて電源を消した。


「ちょっと!なにすんのよ!」


「私が問題考えてきたんだから、かすみちゃんはそれをありがたがって聞かなきゃダメでしょ?」


「いや、毎回迷惑してるんだけど?それに、なんでありがたがらなきゃいけな…」


 かすみの発言の途中でほのかはバン!と机をたたいて笑顔で言った。


「かすみちゃん?聞いて?」


 笑顔のほのかを呆れた顔をしながらかすみは見て言った。


「わ、わかったわよ…」


「大きくなるほど小さくなるものはな〜んだ?」


 ほのかはニヤニヤしながらかすみの方を見た。


「ああ、それなら簡単よ。答えは『服』でしょ?」


 かすみはジト目をしながらほのかに言った。


「服?」


「そう。人間の身体が大きくなるのに対して、服の大きさは変わらないでしょ?だから人の身体が大きくなると服が小さくなる。つまり、答えは服よ。」


 かすみはほのかに人差し指を向けて言った、


 それを聞いたほのかは顎に手を当て「う〜ん」と考えた後、かすみの方を見て答えた。


「30点!…かな!」


「は?30点?」


 かすみはキョトンとしながら聞いた。


「え?何?その点数?部分的に正解みたいなこと?」


「ううん!違うよ!そうじゃなくて…」


「じゃあ、なんの点数よ?」


「かすみちゃんのセンスだよ!」


「おい!」


 かすみはポケットに入っていたハンカチでほのかをしばいた。


「いった〜!何すんのさ!」


「誰のセンスが30点だ!ってか、『服』が答えじゃないならなんなのよ?」


 頭を押さえて、かすみをジト目で睨みながらほのかは答えた。


「答えはないよ。なんて答えるかは人によって違うから。これはその人のセンスを見る問題だよ!」


「センス?ふーん。じゃあ、あんたはなんて答えんのよ?」


 かすみにそう問われたほのかは「うーん」と顎に手を当てて考えた。


 やがて、考えが纏まったのかかすみの方を見て答えた。


「私はねぇ…『人の器』かな?」


 ほのかは急に真顔になってかすみを見た。


「え?何…?またこの感じ?」


 かすみは少し困惑しながらほのかの方を見て言った。


「かすみちゃんが言った『服』って答えも悪くはないんだよ。でもね、かすみちゃんは見えているものに固執し過ぎてる。服ってのはこの問題においての模範解答なんだよ。でも、だからこそ私はそれを評価できない。私達はもっと見えていない物に目を向けるべきなんだよ。例えば、私の答えた人の器って答え。これは普段見えないけど服のサイズなんかよりよっぽど目を向けないといけないことなんだよ。人間は大きくなればなるほど人としての器が小さくなっていく。だから、常に私達は自分の器が小さくなってないか確認するべきなんだよ。」


 ほのかは真っ直ぐかすみを見て言った。


「…人のスマホ取り上げて、自分のなぞなぞを無理矢理聞かせる奴が言うこと?」


 かすみは呆れた顔で言った。


 それをほのかは目を逸らさずに真顔で見ていた。


 キーンコーンカーンコーン。チャイムが鳴って休憩時間が終わった。

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