第12話 勝手に心理テスト


 キーンコーンカーンコーン。チャイムが鳴って休憩時間になった。


「ねぇ、かすみちゃん?」


 左胸に手を当てながらほのかが聞いた。


「…何よ?」


 かすみは、スマホで音楽アプリを開きながら言った。


「いま、なんじ?」


 ほのかは天井を見ながらかすみに聞いた。


「え?ああ…そうねぇ、だいたいねぇ…」


 かすみはそう言った瞬間、顔を少し赤らめながらほのかの方を見て言った。


「いや、違う!今のは違う!そういうノリだと思ったわけじゃなくて、たまたま出た言葉がそれだっただけで…!」


「…何言ってるの?かすみちゃん。」


 ほのかは、戸惑いながら呆れ顔でかすみを見ていた。


「…ゲフン、わからないならいいわ。」


 かすみは冷静になり、足を組み直した。


 ほのかはその様子を見ながら改めてかすみに問い直した。


「で、問題の答えは何?『いま、なんじ?』の。」


「ああ…なぞなぞだったのね、それ。だとしたら…『2文字』かしら?」


 かすみはしたり顔で答え、続けてその問題を解説しだした。


「その問題は、現在の時刻を問いかけてるようにみせておいて、実は『いま』って文字が何文字なのかを聞いてるだけなんでしょ?つまり、答えは現在の時刻ではなくて2文字よ。」


 得意げな顔をしているかすみを見て、ほのかは「へ〜」と感心した後、自分のスマホに目線を移した。


「なんかよくわからないけどかすみちゃんの答えは『2文字』だね!えっ〜とね〜…あ、あった!」


 スマホをスワイプして何かを見つけたほのかは嬉しそうにかすみの方を向いた。


「あった?何が?」


「この問題で答えを『2文字』と答えた人の心理は…」


「は?え、ちょっと待って!」


 キョトンとしてやいるほのかにかすみは慌てて聞いた。


「え、なに?これ、心理テストだったの?」


「そうだよ!『2文字』と答えた人はとても偏屈な人です!なぞなぞと言ってないにも関わらず、素直に時刻を答えないのは常に人のことを疑っているのからです!」


「は?いや、ちょっと待ってって!」


「おまけに頭カチカチで応用力がなく、友達も全くいなくて、生涯孤独で死んでいくでしょうだって!」


「言い過ぎでしょ!?何よ、その心理テスト!心理とか以前に心が病むわ、そんなん聞かされたら!ちょっとスマホ貸して!」


「あっ!ちょっと!」


 かすみはほのかからスマホを取り上げた。


 かすみがほのかから取り上げたスマホを見ると、確かにその文章が書いてあった。しかし、スマホで開かれているアプリはメモ帳であった。


「って、あんたこれ!自分で考えたやつでしょ!こんな辛辣な心理テストがあるわけがないでしょ!」


「もう!かすみちゃん文句ばっかり言うじゃん!そうだよ!確かに私が考えた心理テストだよ!だけど、全部当てはまってるじゃん!」


「そりゃそうでしょうよ!!こうなることを見越してあんたが書いたなら当てはまって当然でしょうが!!」


「もう!かすみちゃん嫌い!そんなんじゃ一生他の人と分かり合えず、悲しみに暮れて死んでいくから!数年後にね!」


 ほのかは首を斬るジェスチャーをしてから机に突っ伏した。


「まだ早いわよ!それに分かり合えないのはあんたとだけよ!不思議なもんね、一緒にいる時間多いのに!」


 キーンコーンカーンコーン。チャイムが鳴って休憩時間が終わった。

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