第8話 あなたに逢いたい〜転校先は不良(ヤンキー)校!?

いつから


気になる人に変わってた?


自分でも気付かない間に


彼の事を好きになってた?


からかわれ


面白がる




だけど―――――



すぐに助けに来てくれたのは


彼だった


そんな彼が


ベールを脱ぐのは


そんな遠くはなかった……






「…えっ…?…あ、うん、分かった…」




学校帰り。


いつものメンバーでいる時、突然、吉良君に電話が入った。


様子がおかしい。




「どうした?」と、蒼介。


「…いや…それより今日、希美ちゃん、お願い出来るかな?」



《あれ?今…吉良君…》



「…えっ?」


「それは…かまへんけど…」



《えっ?二人も気付いた感じ?》



「ありがとう。頼むよ。それから…2人共、気を付けて行動して」



《やっぱり何か違う?》



「えっ?いや、いつもの事なんちゃう?」


「そうじゃん!俺等、こんなだし。一・応、女の子の希美いるし!」


「ちょっと!一応は余計!女の子!」



《そんな事よりも、吉良君、何回か、一瞬、変わったよね?》




「…後…アイツ…脱獄したらしいよ…?」




《また、変わった…よね…?》


《つーか…今、脱獄って言った!?えっ!?それって…かなりヤバイんじゃ?》



「それ言ったら分かるよね?」



二人の表情も、みるみる変わっていくのが分かった。


そんな吉良君も、普段の吉良君から想像つかない位、別人に変貌している事は気のせいじゃなかったようだ




「じゃあ、頼んだよ!」



そう言う吉良君は、普段の吉良君だ。




「………………」



「希美ちゃん」


「何?」



平然を装い、返事をする。



「送れないけど、大丈夫だよね?」

「うん。二人いるし」

「そうだね。じゃあね」と、頭をポンポンとされる。


ドキン…




そして別れ際、耳元で――――




「俺が本気になった時は、怖がらないでね」




そう言うとウィンクした。


ドキン…



「えっ?」



そして、私達より先に帰って行った。




『俺が本気になった時、怖がらないでね』



そう言う吉良君の中に、きっと違う吉良君が存在するのだろう。


さっきの変貌ぶりが脳裏に過る。




「じゃあ、俺達も早く帰るか」


「そうやな」


「希美、帰るぞ」


「あ、うん…」




私達も帰るのだった。





吉良君抜きで帰るのは初めてだけど


何も変わらない私達


だけど寂しさを感じるのは


きっと吉良君が、いないから?


私の中で吉良君は


大切な存在だからだろう―――




そんな3人で帰る中、私は吉良君を気にしつつも妙に後ろが気になる。


ふと足を止め振り返るものの誰もいない。




「希美、どうした?」と、蒼介。


「…いや…」




《何だろう?》




「どないしたん?」

「…うん…ちょっと…」


「…“いや” とか “うん、ちょっと” って…それだけかよ!」


「…脱獄した人って…勿論…仲間いたりするんだよね?」


「えっ?」


「いきなり何やねん!」




「アイツ…南波 了(なんば さとる)っていう奴なんだけど……アイツが単独行動するのは、ありえねーな」


「…仲間がいない方が、おかしいんちゃうか?」


「そっか…そうなんだね…」




――――次の瞬間――――



「誰か来る!」

「えっ!?」



気配を感じた私は闘う体勢に入る。



「木戸君どいて!」


「うわっ!何やねんっ!」



人影を蹴っ飛ばす。



「…うっ…」

「強っ!!」

「蒼介!どいてっ!」

「えっ…!?」



またもや人影を、今度は回し蹴りだ。




「…っ!」



「………………」



ホッとする間もなく、私の背後に人影が来たのに気配を感じたものの余裕がなく捕まりそうになるところを



グイッと私の手を掴み、私を木戸君に渡すと相手を殴った。




「…っ!」



蹌踉(よろ)めく相手。





「野郎っ!おいっ!撤収するぞ!」




3人は逃げるように走り去った。





「……………」




「…マジ単独はヤベーな…」


「俺達が一緒にいる所を狙うとは…ホンマ気が抜かれへんな…」


「…吉良君…大丈夫かな…?」


「…南波 了(やつ)の目的は分からねーけど…しいて言うなら…仲間に入れってやつじゃねーか?」


「俺達捕まえて、脅して仲間入りさせる…そんな所なんちゃう?」




「………………」




その時、携帯が鳴り響いた。




「うわっ!何だよっ!?……勇真の??」

「いや…俺の着信ちゃうで。お前のなんちゃう??」

「俺…??…あっ!」



蒼介が確認した所、蒼介の携帯が鳴り響いていた。



「わりぃ!優人からだ」



ドキン

名前を聞いて、胸が大きく跳ねる。



「もしもし?いや…まだ帰ってねーよ。希美も一緒。ああ、勇真もいる。みんな無事。ああ……ただ……さっき…奴の仲間と思われる奴等に襲われてバトった」




少し、話をすると、蒼介は私に携帯を渡す。




「優人が、お前に変わってってさ」



私は携帯を蒼介から受け取る。





【もしもし?】

【希美ちゃん?大丈夫だった?】

【うん…2人がいてくれたから】

【そっか…希美ちゃん無茶したら駄目だよ】

【大丈夫だよ】

【でも、やっちゃったんでしょ?】

【それは…】




クスクス笑う電話越しからの吉良君の声。


いつもの吉良君に安心と無事だという思いから何故か涙がこぼれそうになる。




《……吉良君に……逢いたい……》






さっき別れたばかりなのに



どうして



こんな想いになるんだろう?






やっぱり――――





彼のことが





好きだからなんだよね――――?








【希美ちゃん、今日は無事で済んだけど、アイツを甘くみたら駄目だよ】


【うん…】


【もちろん取り巻き達も】


【分かった…】


【じゃあ、蒼ちゃんに変わって】


【うん…】




蒼介に携帯を渡す。





もう少し話をしたい……




だけど……





「ああ、分かった」




そして、再び2人に送ってもらい、その別れ際―――





「希美、携帯、寄越しな!」

「えっ?」

「蒼ちゃん、モノには頼み方があるやろう?」



笑いながら言う木戸君。



「コイツに遠慮なんているかっ!」



バシッと蒼介を打った。




「ってぇな!打つなよ!」

「打ちたくもなるしっ!相変わらずムカつく!」

「また始まったで!夫婦喧嘩」


「違うしっ!」

「ちげーしっ!」



私達は同時に言った。




「ほらっ!早く!携帯!」

「分かったわよ!」




そして携帯を渡す。




少しして―――




「ほら!」

「何したの?変な事したんじゃ?」

「するかっ!」




ベシッとオデコを叩かれた。



「った!」

「さっきのお返しだ!」

「馬鹿になる!」

「俺は腕が折れる!」



「ぷっ…ハハハ…超ウケんねんけど!で?何したん?隠しカメラか?それとも盗聴器か?」


「えっ!?や、やだ!ちょっと!」



私は携帯を見渡す。



「するかっ!」

「本当に!?」

「してねーよっ!」



「………………」



疑いの眼差しを送る。



「お前の携帯に俺達の連絡先を登録したんだよ!」


「えっ?」


「優人がしてやってくれって!」



「………………」



「アイツもアイツなりに心配してんだろ?いつか交換しなきゃって思ってたし丁度良かったんじゃね?」



「そうか…ありがとう…」


「じゃあな!勇真、帰るぞ!あっ!後で、勇真と優人には連絡しろよ。俺は交換済だから」


「うん…分かった。木戸君、今からここで交換しとく?」


「ええよ」



私は、木戸君に連絡をし、交換する。




「二人共、気を付けて帰ってよーー」


「俺達は、男だぞーー」


「そうやでーー」




二人は帰って行った。





「…吉良君に…連絡…」




考えるだけで、胸の鼓動が早くなる。



私は一先ず、ショートメールで連絡をする事にした。





『無事についたよ。希美です』


『蒼介から連絡先を登録してもらい、連絡先を教えておくね』





♪〜


『了解!無事に受け取りました』





「あっ!吉良君からだ」





本気で心から嬉しいと思った。


顔がニヤけてしまう。




「…吉良君…何してんだろう…?」







さっき別れたばかりなのに


声が聴きたいとか


何してるんだろう?とか


気になるのは


やっぱり好きなんだって……


そういう事なんだよね……?





「…逢いたいとか言ったら迷惑かな?…だけど…私達は付き合っているとかじゃないし…。その前に…吉良君…カンが鋭いから…私の気持ちバレそう…」




――――その時だ――――




私の携帯が鳴った。


私は驚いて携帯を落としそうになった。





「わわ…」




心臓が、バクバクな中、携帯のボタンを押す。




【…も、もしもし】


【おかえり〜】


【た、ただいま……ていうか…吉良君…突然の電話、心臓に悪いし!】


【ハハハ…ごめん、ごめん。じゃあ携帯を手元に持って考え事してた感じ?】




ギクッ



【えっ!?ち、違うよ!】

【そう?】

【うん…】

【明日は俺が送迎出来ると思うから】

【あ、うん…分かった…】

【じゃあ、明日】

【…うん…】




《明日か…》

《長いな…》





【…吉良君】

【何?】

【…ううん…ごめん…やっぱり…何でもない】

【そう?】

【うん。それじゃ】

【うん】




私達は電話を切る。



「………………」




そして、その直後。


私の携帯が鳴り響く。


メールだ。




『今から逢おうか?』




ドキン



「吉良君…」





♪〜


『今から行くね』




かなりの沢山の改行を使ったと思わせる画面。


2回に分けてメールが届いた。






画面いっぱいの中に……



     ……一言だけ届いた



2通のメール……







♪〜♪〜

『迎えに行かなくていい?』




♪〜


『迎えに来たら駄目!何かあった時、遅いから家にいて』



♪〜♪〜

『分かった』




しばらくして。



♪〜


『ついたよ』




私は玄関に行った。




「吉良君!」



そう言いながら玄関先から飛び出す勢いで来る私を抱き留めるかのように……


吉良君は私の手を同時に引き寄せると抱きしめた。


私も迷わず吉良君を抱きしめた。




「…どうして来てくれたの?」

「さあ、どうしてでしょう?」

「いつも、そうやって誤魔化す」


「俺の性格。……でも……きょに限っては俺も不安だったから…」


「えっ?」




抱きしめ合った体をお互い離す。




「いつも送っているのが俺だから…帰り着くまで見届けているけど…今日は見届けてあげることが出来なかったから…」


「…吉良君…」


「だから逢いに来た。無事に帰ったメールが届いて、それが本当の事だとしても俺の目で見届けていないから…不安で心配で仕方がなかった…」




そう言うと、もう一度抱きしめた。




《吉良君…私…やっぱりです吉良君が…好きだよ…》






この想いを伝えたら


私達は


どうなる……?



仲……


壊れちゃうのかな……?





私も吉良君を抱きしめる。



「…吉良君…」


「何?」


「…私…」





《どうしよう…?》

《……でも…言わない方が良いよね…?》




「希美ちゃん?」



抱きしめ合った体を離し、私の顔をのぞき込む吉良君




「………………」




頭をポンポンとされる。



ドキン




「この事件が解決したら、デートしようか?」

「えっ?」

「友達としてじゃなく…恋人デート」




ドキン…




「…えっ…?…恋人…デート…?」

「そう」

「だから…お互いの気持ちは、まだ言わないでいよう」




《つまりそれって…私の想いに気づいた?》


《でも…お互いの気持ちとか…恋人デートとか…どういう…》


《もしかして…もしかすると…相思相愛だったりするのかな?》




その時、オデコに何か触れた。




「…?…」



「今…何かした?」

「おまじないした」

「おまじない?」

「そう」



そして、唇を人差し指で触れる。



ドキン




「希美ちゃんに、俺からのおまじない」





そして、耳元で――――




「唇はお預け」



「………!!!」



「クスクス…反応凄いよ?」

「だ、だって……」

「それじゃ、また明日ね」

「…帰るの?」

「うん。帰るよ~。顔見たら安心した」

「そっか…分かった…また…明日…」



言い掛ける私の頬にキスをした。



「………!!!」



「うわ…本当凄い反応するんだね〜」

「も、もう!面白がって、おもちゃにしないで!」

「だって面白いから〜。じゃあね〜」



そう言って吉良君は帰って行った。



「…吉良君の…バカ…だけど…憎めないんだよね…でも…私と吉良君ってつりあわないよね…カッコイイし…吉良君なら…もっと美人な人が良いと思うんだけど…私達…本当に…相思相愛って…思って良い…の…かな…?」





次の日。


吉良君は、いつも通り迎えに来てくれた。



「おはよう」

「おはよう」



オデコにキスされ、スッと私の手を差し出し私達は手を繋ぐ。


登校中に手を繋いだのは初めてだ。




《やっぱり…これって…》



恋人繋ぎはしていないけど普通の繋ぎ方で私達は二人の元へと向かう。



「あーーーっ!!何で、お前ら手繋いでるんや!?」

「いつの間に、そういう関係に!?」


「えっ?これ?別に友達でも手を繋ぐでしょう?二人共、俺と繋ぐ?」


「誤解されるわ!アホ!」

「俺は、ノーマルだぞ!優人!」



冗談で言う吉良君に対して相変わらずな対応をし、普通に交わす。




「繋ぐなら女の子に決まってるやん!」

「そうそう。でも、昨日は繋いでなかったぞ!」


「1日で…いや…一晩で何が起こったんや?何かあったんか?」


「別に普通だし〜」




相変わらずな、3人の会話。


この光景を見ては笑みがこぼれる。




ベシッと頭を突然叩かれた。



「ったぁ!!いきなり何すんの?」

「お前が幸せそうにしてるのがムカつく!」

「なっ!な、何それっ!」




クスクス笑う吉良君。




「もうっ!吉良君まで笑わないでよ!」

「二人って本当面白いよね〜?」

「いっつも夫婦喧嘩してんねんもん」

「そうだよね〜?仲良い証拠だよね〜?」

「コイツと夫婦になったら絶対無理!」

「その言葉、そのまま返す!」




私達のいつもの言い合いが始まる。


そして、私達はいつものように学校へと向かうのだった。






























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