第9話 不審者〜転校先は不良(ヤンキー)校!?

ある日の休日。



「宅配便でーす」

「はーい」



家に私が一人でいる時の事だった。

宅配便が届いた。

玄関先に向かう私。



ガチャ

ドアを開けると、宅配便の荷物運びの人が小さい箱を手に立っていた。




すると――――



「黙ってついてきてもらおうか?」




ドクン…



「…えっ…?」




《嘘…》




――――油断していた。


と、いうより、こういう方法で危険な目に遭うなんて思いもしない。


誰もが予想つかないだろう?


だけど、ある意味事件に巻き込まれ死と隣り合わせともいえる危険な世の中。


人間は何をするか分からない。




「付き合わなきゃ傷つくけど良いのか?」



「……………」



荷物の箱の下には、チラリと見えた、キラリと光るモノ。


ナイフだ。




「…!!!」



私は押し飛ばし逃げる事にした。


家の周囲の色々な道に入り込み、身を隠す。



「………………」



《…携帯、持って来てれば…連絡出来たのに……》




私は周囲の状況を気にしつつも気を付けながら家に帰る事にしたんだけど……




「おかえりー」



ビクッ


「棚峅 希美さん」



「………………」



「もう逃げられないぜ?ほらっ!付き合いな!」




グイッと強制的に連れて行かれそうになる。




「ま、待って!」

「何だ!?」


「せめて家の鍵くらい良いでしょう?私、一人しかいないの!」



「………………」



「あんたも見張りに来れば?その方が良いでしょう?」


「そうだな。さっきみたいな事されたらかなわねーしな」




私は家の鍵を手に取り、家を出るとついていくしかなかった。


向かった先は、とある雑居ビルの廃虚場所だ。




そこには、既に何人かの仲間と思われる人達がいた。




すると――――



「離せよ!」



そういう声が、出入口の階段の方から聞こえてくる。



「うるせー、黙れ!」

「やだね!」

「野郎っ!」

「辞めとけっ!後の楽しみに取っておきな!」



「チッ!後でだってよ!良かったなーー。後で覚えてろよ!」


「誰が覚えてるかよ!つーか、もう忘れた」


「くそガキ!お前、本当マジムカつく!後でボコボコにしてやるからな!あー、腕が鳴るぜ」


「腕は鳴んねーし!」


「はあっ!?お前、馬鹿?喧嘩用語だし!」


「喧嘩…用語?俺、高校生のくそガキだから、そんなの全然、分かりませーん。腕が鳴るって…骨折したんじゃね?」


「バーカ」



《明らかに言いそうな奴…アイツだ》




そして、顔を見た瞬間――――



ビンゴだ。


やっぱりアイツだ。


匠 蒼介だ。




蒼介は、後ろ手で縄で縛られている。


そして、私の元に連れて来られた。



「おいっ!女も縄で縛れ!」

「えっ!?」

「待てよ!女に縄はねーだろ!?」

「…えっ…?…蒼介…」

「コイツは逃げねーし!だよな?希美」



私は頷いた。



「縄は野郎だけにしとけよな!」


「まあ良いっ!様子見ようじゃねーか!変な真似したら即、縄で縛れば良い!見張ってろ!」


「りょーかい」




「あんた案外優しい所あるんだね?」


「はあぁぁぁっ!?てめー、俺の事、何と思ってやがんだ?人間だぞ?優しい心くらいあるし!やっぱ、お前、縄で縛られろ!ちょ、コイツ縄で縛って!」



「はあぁぁっ!?やっぱ、優しくないっ!」


「縛るのか?」


縄を手に取る見張りの人。




「しなくていいし!」と、私。


「嘘だ!」と、蒼介。


「信じらんない!」と、私。


「信じられなくて結構だ!…つーか…お前には痛い思いして欲しくねーから」



そう言うと微かに微笑む蒼介に胸が、高鳴る。



「…蒼介…」


「…俺さ、お前と言い合ってっけど…気付いたら…好きになってたのかな…?って…」




ドキン



「えっ…?…蒼介…こんな時に何言…」

「良いから聞けよ!」



「………………」



「この間、お前が優人と手繋いでんの見て、すっげー嫉妬してたっていうか…そん時、俺、あ!俺、コイツの事が好きなんだって…でも…そん時って既に遅くってさ」


「そりゃ、そうやわー」


「うわあぁぁぁっ!」

「きゃあぁぁぁっ!」



私達は大声を出してしまった。




「何だ!?どうしたんだ!?」



「いや…」


「いいえ」



「すんません。俺が二人を驚かしてもうてん」



そういう、木戸君も、どうやら後ろで縄で結ばれているようだ。



「…紛らわしい…」



「てめー!いきなり何だよ!」

「いやいや。最初からおったで?」

「全然、気付かなかったんだけど?」

「そりゃー、そうやろ!かくれんぼ得意やし」




ドカッ


蒼介から蹴られる木戸君。



「ってー!何すんねんっ!足、折れるわ!アホっ!」

「折れたら病院行きやがれ!」



ワアー、ワアー騒ぐ二人。


それをうるさく感じたのか―――





「うるせーんだよ!」



相手から言われピタリと辞める2人。



すると、コソコソ話す中、口パクで言い合っているようにも伺える2人の姿がいつもと変わらない。


声を出していなくても、この二人の光景は、もう何度見て来ただろう?



《この2人って、どんな時も変わらないんだ》



「つーか…3人と引き換えに優人を呼び出すつもりなんだろうな」


「…そうなんちゃう?」


「希美」

「何?」

「優人、キレたらヤバイんだ」

「えっ?…そう…なんだ」



《確かに以前、言ってたっけ?》



以前の吉良君の言葉が脳裏に過る。




『俺が本気になった時、怖がらないでね?』




「それにアイツ、あー見えて、体鍛えてるから」

「ありとあらゆる武術、身体に染み込ませてんねん」

「…今もしてるの?」

「してるんちゃう?」

「…そうか…」



《一回辞めて、また始めたのかな?》




その時だ。




「おいっ!女っ!来いっ!」




グイッと捕まれた。



「いったいな!もっとレディを優しく扱えっつーの!」


「…レディだってよ…自分で言うなし…」と、蒼介。


「何か言った!?」


「べっつに〜」


「つくづくムカつく!」



アカンベーをする蒼介。



「なっ!」

「ほらっ!来いっ!」


「分かったから!だから、そんなに引っ張んないでよ!」




私だけ移動する。



「了さん、連れて来ましたよ」


「あー、わりぃな!」




《…コイツがテ南波了…?》



「へえー…可愛いじゃん」



私に歩みより、顎をクイッと掴まれた。




「………………」




そして掴んでいた顎を離すと耳元で……




「今から良い事しよっか?」


「えっ?」


 

ドサッ


押し倒された。



「きゃあ…」

「まだ、男と寝た事ないみたいだし」

「…や…やだ…」




私は以前の先生との事件が脳裏に過ると一気に怖くなり身動きがとれない。




「………………」



「あれ〜、どうしたの〜?そんな怯えた表情で…もしかして、こういう事過去にあった感じ?」




「……………」



「それとも…本当に怖い感じなのかな?」



洋服を引き裂いた。




「い…いやああっ!辞め…」



荒々しく裸にされ、肌が露わになった。


私は暴れ逃げようとする。




「この女!ジッとしやがれ!おいっ!お前ら押さえろ!」




数人の男の人達に押さえ付けられた。




「は、離してっ!」

「この女!マジムカつく!」




手を振り上げられ打たれそうになり私は覚悟の上で目を閉じた。




「……………」



「彼女に傷でも作ってみなよ。ただじゃ済まさないよ」




《……誰……?》

《…もしかして…吉良…君?》



「チッ!…あーあ。もう来ちゃったの?優ちゃーん」




《…やっぱり…吉良君だ…》




「せっかく良い事しようと思っていたのになぁ〜」

「良い事!?」

「彼女、良い身体してるぜー?優ちゃん」



「………………」



「なあ、仲間に入ったら、彼女を一番に抱かせてやるぜ?」


「良いなー、俺達よりも先に良い思いするなんて」




一人の人が私から離れる。




「超羨ましいんだけどー」



更にもう一人離れる。




「彼女はおもちゃじゃないよ?」

「おもちゃでしょ?男のおもちゃに過ぎないじゃん」

「気持ちよーくさせてくれるしさーー」

「自分のして欲しい事を言えばしてくれるしさーー」



「………………」



抑えていた人達が私から離れ私はゆっくり起き上がり乱れた服を隠すようにする。


しかし、全体的に隠せる状態ではない。




「なあ、優ちゃん。彼女とはまだなの?さっきさすっげー、怯えてたんだけどさー、あの子、何かあったの?」



「話す理由はないでしょう?第一、君達には関係ないはずだよね?」




「………………」




《吉良…君…じゃ…ない…みた…い…本当に……別人だ…》




「超気になるんたけど?」



そして私の方に歩み寄る人影。


グイッと肩を抱き寄せられる。




「や、やだ!触んないでよ!」

「彼女に…馴れ馴れしく触るの辞めてもらえるかな?」


「良いじゃん!彼女、可愛いよなー。マジ、どんな声を出して興奮させてくれんの?」


「マジ食べちゃいたい」




「……………」



「スケベ野郎っ!」




ドカッ



「…っ…」



肘鉄をした。




「この女っ!」



私は吉良君の元へと行った。 




「無茶するな!それより、その格好何とかしなよ!」


「し、仕方ないじゃん!」



「………………」



「蒼ちゃん、勇ちゃん…希美ちゃん連れて逃げて!」

「えっ?」



気付けば縄が解かれた二人がいる。



「…でも…」

「俺の事より…彼女…お願い出来るかな?」

「優人…」


「ここにいたら危険なだけなんだ。彼女をこれ以上、巻き込むわけにはいかない!」


「分かった。行くぞ!希美!」

「でもっ!」

「言う事聞けよ!優人の想い無駄にすんな!」



「………………」



「優ちゃんは希美ちゃんに無事にいて欲しいんや。奴等はタチが悪いねんて!ここは優ちゃんに任せとき!」




「………………」



「希美ちゃん、言う事聞かなきゃデートしないよ」



「………………」



そう言う吉良君は、いつもの吉良君だ。




『この事件が解決したらデートしようか』



吉良君の言葉が脳裏に過った。





「優人っ!必ず戻って来て!戻って来なきゃただじゃ済まさないからねっ!」



「………………」


微笑む吉良君。



「希美もここから無事に逃げてくれなきゃただじゃ済まさない」




私は微笑み、私は後ろ髪を引かれるように、そこから去った。





本当は傍にいたかった



だけど――――



約束果たす為には



行くしかなかった


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