どーしよー

 …私は本日バイトがお休みです。

 普段ならイェーイなんて心で叫びながら、

 お菓子とジュースを買い家の漫画を読み返

 してダラダラ過ごす。

 

 しかし…

 しかしどうしても胸騒ぎがして仕方ない。

 彼氏が妖怪に喰われるかもしれないのに、

 のんびりほっこりしていていいのか‼︎

 

 ビタン‼︎

 頬を叩き、自分に喝を入れた。

 少し控えめに。

 だって痛いじゃ〜ん。

 なんて言ってる間にも…

 妖怪がよだれを垂らして迫って…

 

「でもー、やっぱり信頼されてないのは辛い

 ですよねー。」

「あー、わかるー。疑われてたのって思った

 とたん冷めたりねー」

 

 …テレビからそんな言葉が聞こえてきた。

 

 ウッ…

 そうか…。

 信じて待つのが出来るイヌ…だ。

 待てもできない私は、イヌ以下。

 

 じっとお座りして待ってれば成瀬くん迎え

 に来てくれる?

 

 ただ待ってるだけでいいの⁇

 飼い主が喜ぶのってペットが美味しそうに

 ご飯を食べてる時…

 はぁはぁ言って飼い主さんにしっぽ振って

 る時…

 

 私に出来ること。

 成瀬くんが私といて苦痛じゃなく、楽しい

 とか落ち着くとかそんな存在になる事。

 

 偵察なんかに行っても仕方ないんだ。

 それに、成瀬くんが田口先輩を選んだら…

 それは、単に…私の魅力不足なんだ。

 

 成瀬くんにとって私が、おまえといると楽

 しいよ。離れるなよ的な存在にならなくて

 は、いけないんだ。

 

 次の日

「おはよ、成瀬くん」

「あぁ、おはよ」

 …うーん。

 エスパーじゃないから読めない。

 

 昨日妖怪に喰われましたか?って聞いてみ

 ようかな?

 でも…探りは、よくないよなー…。

 

 あぁぁ〜…

 今すぐここで泣き崩れたい…。

 ワンワン泣いて成瀬くん‼︎行かないで‼︎私

 を選んでー‼︎って大騒ぎしたい‼︎

 

 …でも、そんな事して繋ぎ止めてもムダな

 んだ。

 

 クスクスってこっちを見ながら田口先輩が

 微笑んだ。

 

 えっ…なんですか、あの勝利の笑み的なも

 のは…。

 やっぱり昨日何かありましたか⁈

 

 よくわからないままバイトをこなす。

 そして成瀬くんと帰る時間。

 成瀬くん…

 今日も一緒に帰ってくれるよね?

 

「な、成瀬くん…」

「ん?なんだ、帰るぞ三上」

「うんっ」

 

 ほっ

 よかった。


 でもさ、でも…

 いつもの定位置で成瀬くんが拒んだら…

 それは、もう気持ちが田口先輩に向いてる

 って事だよね。

 

 …定位置に思い切って行ってみた。

 

 えいッ‼︎

 

「カレン」

 えっ…い、今カレンって言った?

 いつも三上なのに。

 な…何?

 まさか、別れようって言われる?


 …   …   …

 

「な、成瀬く…ん。」

 ビクビクしながら、成瀬くんの顔を覗き込

 むと…

 

 チュゥ〜〜〜ッ。


 いきなり…キス

 えっ。

 いつもと違う優しくも熱烈なキ、キス…

 

 な、なんで…

 嬉しいけど、どうしたの⁇成瀬くん…。

 

「な、成瀬くん…?」

「オレ、昨日田口さんに告白された。」

「やっぱり…」

「やっぱりって事は、なんか言われてた?」

「う、ううん。そんな事ない」

 

 ぎゅ〜。

 えっ…

 成瀬くんが私を優しく包み込んだ。

「気づかなくてごめん。もっと早く守ってや

 れればよかった。」

「ううん。私は大丈夫だよ。それに今成瀬く

 んがこうして居てくれるから。」

「うん。」

 成瀬くんは、私を優しく包み込みながら頭

 をポンポンしてくれた。

 

「成瀬くん」

 もう一度成瀬くんを見上げた。

 すると、成瀬くんは

 また優しく私を包み込み

 甘〜いキスをしてくれるのでありました。

 キスで愛情が伝わる。

 はぁ〜。

 やばいです。

 

「成瀬くんありがとう」

 くしゃくしゃ

 成瀬くんは、私の髪をくしゃくしゃってし

 た。

 

 きっと照れ隠しなんだ。

「ぐしゃぐしゃじゃーん」

 ははっ。

 成瀬くんが笑った。

 

 じゃって成瀬くんが帰ろうとした時

「またね、かずや!」

 って思い切って呼んでみた。

 

 一瞬へ?みたいな顔したけど、そのあと笑

 顔で、

「じゃーな、カレン」

 って言ってくれた。

 

 これからは、たまにかずやって呼んじゃお

 っと♡

 

 続く。

 

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