a letter

29. March

 今日、村を新たに旅立ってから、はじめて人間を見つけました。

 まだ小さな男の子でした。

 お母さんにべったりで、とても独り立ちなんてできそうにない――そんな小さな子どもでした。


 父さんと母さんと一緒に暮らしていたときのことを思い出します。

 私たちもあんな時期がありました。

 今となっては、宝物のような思い出です。


 あの子にも、いつかきっと、別れの時が来る。私たちが、母さんと別れたときのように。

 いつまでも来ることがないように、と願っても、どうしてもその日は訪れるんだよね。

 そんなときに、私たちがあの子を迎え入れられてあげられればな、と思いました。


 結局、ただ会うだけじゃ物足りないのだと思い知らされました。

 この滅びた世界で、私たちはきっと身を寄せ合わないと生きていけないから。だから、おせっかいでも手を差し伸べてしまうのだと思います。


 傲慢なのかな。


 迷ってしまうことはありますが、私たちは私たちのやりたいようにやると決めました。

 だって、新しい世界を作るのは私たちなんだから。

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