第24話
「おはよう、フローラ、トレヴァー」
「おはようございます。アルフレッド様、何か御用ですか?」
まだ夜が明けたばかりの厨房で、トレヴァーとフローラはパンとお菓子作りを始めたばかりだった。
「とくに用事はないよ。お菓子作りを見に来ただけさ」
「アルフレッド様、春先とはいえ朝はまだ冷えます。お部屋でもう少し休まれてはいかがですか?」
トレヴァーの言葉を聞いて、アルフレッドは微笑んだ。
「そうだね。そうしようかな? じゃあ、もう少し部屋で休んでくるよ」
「おやすみなさい、アルフレッド様」
「おやすみ、フローラ」
アルフレッドが部屋に帰ると、トレヴァーとフローラはお菓子作りとパン作りに戻った。
「フローラ、なかなか良いですよ」
「ありがとうございます、トレヴァー様」
フローラはクッキー生地を鉄板にのせてオーブンに入れた。
「それにしても、フライパンでパンが焼けるとは知りませんでした」
トレヴァーはちぎりパンをフライパンで焼いている。
「そうですか? これだとオーブンを使っていても作れるので便利ですよ」
朝食の時間がせまったころ、最初のクッキーとパンが焼けた。
「トレヴァー様、出来ました」
「それでは、ちょっと味見をしましょうか」
トレヴァーは焼きあがったばかりのクッキーを冷えた台の上に置き冷ましてから、半分に割った。ひとかけらをフローラに渡した後、残りの欠片をトレヴァーがかじった。
「うん、いい味です。焼き方も上出来です」
「……美味しい」
二人はにっこりと笑った。
「おーい、そろそろ朝食にしてもらえるかな?」
「はい、ただいまお持ちいたします」
トレヴァーは焼きたてのちぎりパンと、スープ、紅茶とベーコン、卵焼きを急いで準備すると、フローラに持たせた。
「アルフレッド様にお出しください」
「はい、トレヴァー様」
フローラは朝食を食堂に運んだ。
「おはようございます、アルフレッド様」
「おはよう、フローラ」
フローラが一人分の食事をアルフレッドの前のテーブルに並べるとアルフレッドは不満そうに言った。
「あれ? 今日は僕一人で食事?」
「はい、今日は午後の外出の準備をしているところですから、私とトレヴァー様は厨房でかるく食べようと思っております」
アルフレッドは少し寂しそうな表情で言った。
「そうか、ならしょうがないね」
「それでは、アルフレッド様の食事が終わるころにまた参ります」
「ああ、そうしてくれ。フローラ」
フローラはアルフレッドにお辞儀をして厨房に戻った。
二回目のクッキーを焼く準備が終わったころ、アルフレッドの朝食を下げにフローラは食堂に移動した。
「ごちそうさま、フローラ」
「あわただしくてもうしわけありません、アルフレッド様」
食器を片付けているとアルフレッドがフローラに尋ねた。
「お菓子とパンはどんな出来だい?」
「順調です」
「それはよかった」
アルフレッドが自室に戻ると、フローラは食事の片づけを終え、三回目のクッキーを焼き始めた。
昼食の時間には、孤児院に持っていくクッキーとパンがすべて焼きあがった。
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