第22話

 御子の任命式が終わった。

 レイスは白色のローブをまとい、胸を張って笑顔で立っている。

「クリフ様、式典が終わったようなのでこれで失礼いたします」

 アルフレッドはクリフ達にそう言うと、トレヴァーに帰り支度をするよう指示した。

「アルフレッド様、今夜はお越しいただきありがとうございました」

 去ろうとするアルフレッドにクリフが声をかけた。


「土地を治めるものの仕事ですから」

 アルフレッドは笑顔でクリフに答えた。

「アルフレッド様、フローラ様は十分働いていらっしゃいますか?」

 レイスがアルフレッドに言った。

「ああ、よくやってくれているよ」


 レイスの目が冷たく光った。

「御子よりも、メイドのほうがお似合いのようですわね」

 フローラはレイスの言葉に笑顔で返した。レイスの表情が醜くゆがんだ。

「……私をバカにするのは楽しいですか? フローラ様」

 レイスの言葉にフローラは戸惑った。

「馬鹿になんてしていません。御子の仕事は大変だと思います」

 レイスは横目でフローラを見たまま、去っていった。

「さあ、いきましょう、フローラ」

「はい、アルフレッド様」

 帰りの馬車で、トレヴァーがアルフレッドに言った。


「アルフレッド様。レイス様を刺激するようなことは控えたほうがよろしいかと」

「え? 僕は特に何もしていないよ?」

「フローラに氷結の杖を渡して、雪を降らせたでしょう? レイス様のプライドを傷つけたのだと思いますよ」

 トレヴァーはため息をついた。


「そうか……式典が盛り上がったから良いとおもったんだけどな……」

「アルフレッド様、レイス様はもう御子様なのですから、余計な気遣いは逆効果かと思います」

「そうなのか? フローラ?」

「さあ……私は何も……」


馬車がアルフレッドの屋敷に着いた。

「ああ、寒かった。トレヴァー、フローラ、お茶の用意をしてくれ」

「かしこまりました」

「かしこまりました」


トレヴァーはアルフレッドからコートを受け取ると、洋服掛けに片づけた。

「さあ、フローラ、お茶をいれましょう」

「はい、トレヴァー様」

 二人はキッチンに入ると、アルフレッドのためにお茶とクッキーを用意した。

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