第10話:適材適所が尊重される社会へ ③

そのためには周囲が理解をする事を含めてどれだけサポートを得られるか、本人の心理的な回復がどこまで進んでいくかに掛かっていると思う。これは本人の努力もそうだが、周囲も理解を示して個々にあった仕事を見つけるもしくは創っていく必要があるだろう。ただし、これは本人の能力や周囲の価値観によって変わってくる。これは自分がどの環境でどのように花開くのかを考える事が大切で、相手に合わせられる部分は合わせるべきだが、合わせすぎることで自分の本心とのバランスが崩れてしまう。だからといって、自分軸でいってしまうと周囲とのバランスが崩れてしまい、長期化してしまう。その結果、本人たちが働く事に対するハードルが高くなり、なかなか働きたいと思える状態にはならない。そして、不採用が積み重なりすぎると今度は組織に対して不信感や自分の立ち位置が分からなくなり、就職活動などに対して恐怖感を覚えてしまう。もちろん、不採用が増えるという事は自分の適材適所ではないという事にはなるが、生きていくためには何らかの働き方をしなくてはいけないという事になる。しかし、彼らの中には“働きたいがここまで不採用だと自信が無い”・“やっぱり自分は必要とされていない”という心理が出てきてしまう。


 1番良いのは現在無職状態にある人、解雇や雇い止めなどで職を失った人に対して個人で活動する事を容認し、活動内容に対して社会貢献などいくつかの条件を設定してそれらの条件に当てはまるもしくはそれらに類似する場合には本人に対して通知を出し、本人が希望した場合に補助金申請など一定のプロセスは必要とするべきだが、本人が持っているその意欲の灯火を消さないように大切に扱う事が重要だと思う。


 これは今の日本ではあまり一般的ではないし、一般論としてもあまり定着していない。その結果、せっかく本人たちが意欲を出したとしても社会から見放されているという心理が働いてしまう事で本人が挫折してしまうのだ。そして、これらの不公平感が本人たちの自己肯定感を奪い、社会復帰などを阻んでいる。そのため、本来の労働人口の減少、採用人材の二極化を生み、良い人材はどんどん出世し、そうではない人たちは生き殺し状態になるという社会の縮図がこの状況下で以前よりも顕著に表れ、厳しい現実が露呈し始めているような印象だ。


 そもそも、これらの格差が拡大する要因として“企業による人材選別”が要因だろう。今の時代は“自分たちに有益な人材”を求める傾向にある。そのため、採用しても一定期間経ったときにその社員を残すかどうかを判断する企業が多く、仮に要らないと思った社員を不当解雇や精神的に追い詰めて退職などの会社から去るように仕向けることも十分あるのだ。私はこれらの行為が定常化していること、これらの行為が他人事として捉えられる事に対してよく思っていないし、これらの行為が繰り返される事で不当と判断されるべき行為が正当であると誤認を起こす事になるのだ。そして、これらの問題を表面化させないように会社など組織側が圧力をかけているケースも少なくないため、個人に保障されている労働権が十分行使できないという結果を招くのだ。

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