第6話 イブからの相談

 いつもより早く返事がきた。

「ディア、アダム

 毎朝の配達ご苦労さんです。天気予報で梅雨が明けたて言ってました。新聞が濡れなくなるから良かったね。


 夏休みのことは置いといて、聞いてみたいことって言うか、相談があります。妹の同級生の男子がいじめられていて、彼女からどうしたら良いか聞かれました。悪ふざけの域を超えているようです。

 明日にでもバスケ部の顧問で、今、妹の担任をしている先生に会って来るつもりです。アダムはいじめを体験したこと、見たことがありますか。何か参考になることがあったら教えてください。


 夏休みはこれッと言った予定はありません。父の仕事は何かと出張が多いので、夏休み中に家族で出かけることもあまりありません。多分、部活のない日は買い物に出かけるぐらいで、後は半径一キロ当たりを中学時代の友だちとうろついていると思います。(小さな恋のメロデイー)は見ましたか。ラストシーンは感動的です。まだ見ていないかもしれないので、詳しくは書きません。部活に配達、ほんま、偉いなとお思います。                            イブより」

 

「お兄ちゃん、はい、これ」

 小学校に上がったばかりの弟が僕の部屋に入ってきた。


 戦後まもなく建てられたこのアパートは、元は会社の寮として使われていたそうだ。木造二階建てでL字の形になっている。

 炊事洗濯などで水を使う時は、階下のL字型の内角に設けられた共同の場所を使う。便所も共同で各階の中央にあり、六畳と四畳半の部屋が板張りの廊下を挟んで十部屋ぐらい並んでいる。


 郵便物は、一階の表玄関のガラス張りの扉の横に据え付けられたポストに入れられる。住民はそこまで足を運び、自分の郵便物を見つけ出し持ち帰っている。


 多分、母がこの手紙を見つけ出し、今、弟に持って来させたのだ。

 僕を含め六人の家族は、二階の三部屋を借りている。僕が一人で使っているこの部屋に、たまにではあるが、義父の弟が寝泊まりしにやって来る。

 

 いつものようにイブの写真をを取り出してから、封筒を開ける。

イブからいじめについて聞かれた。精神的肉体的虐待なら充分過ぎるほど義父のお陰で体験してきたが、いじめとなると少し話が違ってくると思う。まあ、どちらも強い者が弱い者を虐げることに違いはないだろうけど。ふと、小学校の四年の頃のことを思い出したので、その経験を書くことにした。

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