乗鞍ヒルクライム その①
じゃ〜ん!
今回は結果からいくぜ!
2022年 {12}1°17'12
前章のこれまでの記録と比べてみてくれよ。
うわっ! 順位に使っていた⑩とかの数字、スマホで10までしか出てこないよ。
仕方ない。{12}で許してな。
一緒に走った女子選手の事も色々書きたいけど、今回は登場人物は数名に絞っておく。
ここでの呼び名は例の如く、あだ名でもないし、俺がそんな風に呼んでるわけじゃなくて、ここで書いてるだけだから。
あっ、ここからは俺口調はやめて書いていく事にする。
紛らわしくて申し訳ないけど、書きやすいように書いていくよ。
☆
なんて
何が?
乗鞍の景色? 風?
そうじゃなくてゴール後の感情。
中止になった2年間の空白を経て、今回一番強く感じた事。
乗鞍のゴール後に、こんな穏やかな感情が訪れた事が不思議だった。
コロナ前の2年間は今回よりは順位もタイムも良かったけれど、泣いちゃう位悔しさの方が大きかった。
勿論、大会を走った喜びも大きかったのだけれど、いい歳して何でこんなに悔しいんだろう、いい加減にしろよって自分でも思う位、いつも悔しさは付き
大昔、大学生で初めて走った時の感情は忘れちゃったけど、2007年からはずっと「悔しい」って気持ちが一番強かったと思う。
怪我明けとかで思っていた以上に走れてしまった2大会以外は全て‥‥‥
私が連続出場し始めた2007年、その時のチーム員が女子総合優勝したんだけど、1°08'10がその時のコースレコードになって、その記録を更新する事がずっと目標だった。
それを目指していたからいくら優勝しても、「記録が、記録が」って感じで嬉しさよりも悔しさが優っていた。
2012年からは自分より明らかにレベルが上のキコちゃんが出場し始めて、彼女に少しでも長く食らい付いていこうとするレースが続いていた。
キコちゃんならコースレコードをすぐに大幅に更新するだろうと思っていたけど、彼女は何故か苦戦し続けていた。
運悪く、悪天候の為に続けて3年間、フルコースでレースが出来なかった事も痛かった。
私自身も格上の相手に勝つ事を諦めてはいなかった。何があるか分からないのがレースだから、彼女を負かす可能性をずっと求めていたし、コースレコードだって目指し続けていた。
2016年は、身体の故障をきっかけに自分自身の取り組み方も変えて、ヒルクライムに関して自分の中では第2章が始まった。
年齢別に2つに分けられていた女子のクラスも1つに統合された。
それでも走れるようになってくると、また欲が出て、順位や記録を求める自分は以前と変わらなかった。
勿論、変わった部分も色々あったけどね。
2017年は再び本気で狙っていたし、2018年からは強豪選手層がグッと厚くなって、2019年には12年ぶりにコースレコードが更新された。
1°06'48
その夏に、うちに合宿に来てくれてて、一緒に練習し遠征したエルの優勝タイムだ。
乗鞍の大会を勝ち続けて、私よりずっとコースレコードに近い存在だったキコちゃんはこの年は3位だったにも関わらず、エルのレコード更新を凄く喜んでいたのは意外な気がしていた。
キコちゃんは閉会式の時に声を掛けてくれて、「悔しい気持ちはあるけど、今回は自分の力を出し切れたから嬉しい」というような事を言ってくれた。
これまでずっと優勝しながらも「悔しい」を連発していたのに⁉︎
ちょっと不思議な気はしたけれど、それを私に伝えてくれた事が、あの年の『のりくら』を通して私が一番嬉しかった事かもしれない。
私はその年の、ゴール後は悔しいの中にある仕方ないという気持ちが強かった。
☆
そして2年間の空白を経ての今回、冒頭の感情がそれだった。
今年に入って3レース目。
5月の車坂峠のレース後も「悔しいっていう気持ち、今回はなぜかあまりない」って書いていた。
6月の美ヶ原のレース後もタイムが全然良くなかったのに、あまり「悔しい」って感じじゃなかった。
それが不思議だった。
でも、この2つのレースは乗鞍に向けての通過点って気持ちが強かったからだろうなって思っていた。
それと、6月に「?」って思った事が1つあった。
ロードの全日本選手権にマスターズクラスがあって、60歳以上のクラス(男子)で往年の名選手対決があって、3名の尊敬する先輩達の戦いに注目が集まっていた。
勿論、現役の時のような取り組み方ではないけれど、かなりのガチ勝負。事前情報からしてラヴさんの優勝を予想してた人は多いんじゃないかな? 私もそう予想してた。
結果は予想に反してラヴさん3位。フェイスブックに「?」と思う投稿がされていたんだ。
【勝つ気満々でスタートして見事に負けたのに‥‥‥ゴール後の心境はとても穏やか? 爽やかと言うか、走り切った満足度が悔しさを大きく上回っていた】と‥‥‥
私は「超いいね!」って思いつつも、それは本心じゃないんじゃないかと思ってコメントを入れてみた。
でも、やっぱり本心だって返信がきた。
へ〜、ラヴさんが???
すごいなって思う気持ちと、ちょっと、「つまんねぇ」と思っちゃった。もっと悔しがってほしいって気持ちも正直あった。
マスターズクラスって言っても全日本は中途半端な気持ちで出れないだろうし、それなりに懸けてやってきてるはずだから、絶対悔しい気持ちが勝るだろうにって。
どこかで、いつも自分が乗鞍のゴール後に抱く気持ちと同じであってほしいのに、って思っていたんだと思う。
私は一生きっとそんな穏やかな爽やかな気持ちになれないんじゃないかって、その時は思っていた。
それからわずか2ヶ月後に⁉︎
たぶんラヴさんが感じたのと似たような、穏やかな気持ちになるなんて⁉︎
レース前の意気込みはどうだったんだよ?
☆
およそ2か月前、美ヶ原のレースが終わって、6年前から私の心身のケアをして頂いている先生に報告を入れた。
その時に「これまで1番集中してできたレースの時は何を感じ、何を考えていたか」について考えるキッカケを頂いた。
正直、1番を探す所から簡単ではなかったけれど、これまでのレースの事を振り返り、思い出し、整理し、書いていく中で、発見というか、忘れかけていた物が蘇ってきた。
乗鞍に向けて、自分がそこにどれだけ懸けようとして、実際どうするかが大切だっていう事。
どうするのが正解っていうのは無いけど、自分はどうしたいかだという事。
乗鞍というターゲットに集中するのか、そこそこいくのか。
ただ「頑張りたい」だけでは、焦点はぼやけたままだ。
集中という言葉の捉え方が変化したように感じたのだった。
そこに全てを懸けていたと言えるあの頃のように集中する事は出来ないけれど、これからの2ヶ月間は、今よりそこに集中を向けようと思った。
身体的にも、昔のようにいい練習を沢山するなんて事は出来ない。
それでも、自由に使える時間をもっと乗鞍の為に使う決意をした。
地味なエクササイズとか補強とかセルフケアとか。
沢山自転車に乗る事だけが強化に繋がるわけではないから、今の身体を考えて、必要な、出来る強化を考えてやっていった。
まあ、そんなに早く努力は実る物ではないと思うし、急にやる事を変えたんじゃなくて今までより少し増やしたって感じだけど、不思議とすぐに気持ちと実行が身体にも繋がっていく感じがあった。
地味なエクササイズとか補強とかセルフケアをやっていく中で、自転車でのいい練習も少しずつ積めるようになっていった。これは嬉しかった。
8月には、MTBを頑張っているスーパー小学生女子や、インカレを目指す学生、また毎年恒例の夏合宿に来て下さる面々と一緒に走る機会にも恵まれ、過酷ながらも充実した日々を送る事が出来て、心身共に良い刺激を入れる事も出来た。
何より、楽しく走れていた。
大会まで1週間を切って、2ヶ月ぶりに先生に身体をみて頂いたら、久々にその身体を褒められた。
そうして迎えた今年の乗鞍だった。
ここにはあえて書かなかったけれど、大会前に立てていた目標がこれ。
【☆目指すもの
タイム
・「いい感じ」と思える事
・無駄に苦しまないでバイクを前に進ませる。
・集中した無に近い感情で走る。
・最低目標 1°15'00を切る
・上の目標 1°13'台
・予想タイム 1°13'50(かなり希望的)
頂上で戦った選手達と讃え合う】
今年は出場した大会全てがコロナ対策でスタート方式が変更された物となっていた。スタートが女子として区切られた物にはなっていなくて、男子と混走で決められた時間内に各自スタートしてそのタイムを競うという形が取られていた。
だから誰かと競うのではなく、自分自身が最速タイムで走れるように、と考えていた。男子の集団を上手く使えれば、好タイムも期待できるかなとも思っていた。
☆
おいおい、乗鞍の為に時間を費やし、集中を向けて、良い状態で迎えられて、良い走りが出来そうだって思えていたのに、全然目標に届いてないじゃないかよ。
膝痛で出場がやっとだった年を除けばワーストタイムだぜ。
それなのに穏やかだったのかよ?
長くなってきたので次章に続く。
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