乗り始めたきっかけ
うろ覚えなんだけどさ、たぶん、鉄アレーがそもそものキッカケだったように思う。
大学2年生の夏。
俺はその時はバスケやってたんだけど、下宿アパートの部屋でも筋トレできるように鉄アレーが欲しいと思っていた。
大学は神奈川県の平塚市にあって、
5kgのいいダンベルがあったんだけど、これを2個持ってバスと徒歩で帰るのはキツいよね。自転車でなら持って帰れるかな? って思った。
で、自転車コーナーを見に行ったんだ。
そしたら一目惚れの自転車があった。
シティサイクル風の黒いママチャリ。
いくらか忘れちゃたんだけど、スゲー安いママチャリ。
それが気にいっちゃって。
徒歩圏内じゃなくて、もう少し足を延ばせる手段も欲しかったから、まずは鉄アレーの前に自転車が欲しいな、って思って。
両方買うお金は無かったんだと思う。
それで、鉄アレーは後回しにして、その自転車を買ったんだったと思う。
帰りはバスじゃなくて、このカッコいい黒いママチャリだぜ!
嬉しくってさ。
そのまま帰るのが勿体無く思えてさ。
ちょっと海の方まで行ってから帰る事にしたんだ。
ウォー! 海だぜ!
自転車に乗って海岸に出ると、何だか海がすごく綺麗に見えた。
どうせなら‥‥‥
あの島まで行ってみてぇな。
海沿いの道、134号線をずっと走れば江ノ島に行ける。
俺は自転車を飛ばした。
こんな気分は初めてだった。
自分の足で。
風を切って。
最っ高に気持ちいいぜ〜!
江ノ島に上陸。
江ノ島探検。
お気に入りの自転車に付けてあげようとキーホルダーを買った。
『あんたアホ? 私も。江ノ島』
なんて書いてあったかな? 少し違う気がするが‥‥‥
日が暮れないうちにと急いで家に帰った。変速も無いママチャリで40km以上は走った。
その疲労感と一人行動をした満足感に浸っていた。
快感だったんだな。
今度はもっと遠くへ行ってみたいって思った。
今度はちゃんと計画を立てて。
本屋に行って、湘南の本を買って睨めっこさ。やっぱ島がいいよなって思って。
どれ位走れるのか、どれ位時間がかかるのか、分からないけど、江ノ島が指標になるから、暗いうちに出発すれば、城ヶ島往復できそうだなって思った。
もう、ワクワク感しか無かったぜ。
海沿いの道もまだ暗かった。明るかったらどれだけ綺麗だろう? って思いながら走ってた。
披露山公園に上って、持ってきたおにぎりをかじり、再び走り出す。すごい冒険をしている気分だったな。
城ヶ島の先端。
真っ青な海と緑の木々。岩に打ちつける波の音。
ピーヒョロロロ〜♪
トンビが頭上を旋回する。
この素晴らしい景色を独り占め!
この時の感動は今でも忘れられない。
相棒の黒い自転車と共に120km。
達成!
疲れたかな? 忘れちゃった。
くっきりと日焼けの跡が残ったのは覚えている。
学生の頃は日焼けが肌に大敵だって事は知らなかった。黒くなるのはカッコいいとさえ思って、日焼け止めも全然塗ってなかった。
これがさ、歳とってくるとシミとかクスミの原因になっちゃうんだ。若い子、特に女子はちゃんと、最低限顔には日焼け止め塗ってから走れよ。
同じ下宿アパートの女友達が自転車部の人と知り合いで、俺の事を話したらしいんだ。
「ママチャリで城ヶ島行ったらしいよ」って。
「そんな
そう言ったのが、前章で登場したフモさんだったんだ。
初めての真っ赤なロードレーサー。少し前まで自転車部にいた女性の方が乗ってたらしいんだけど、今はもう乗ってないから、これに乗ってみろと。
なんだ? このハンドルは、どこ持てばいいんだ?(ドロップハンドルっていうんだ)
とにかくペダルに脚乗せて前進して椅子(サドルっていうんだ)にお尻を置いてみる。
オーットット。
真っ直ぐ進むの難しいぜ。
大丈夫かよ?
スゲー前傾。
ビューって進んじゃうけど‥‥‥
ってな感じで乗り始めて、校内とその近辺をフモさんに連れられて走った。
スゲーな。
ママチャリとはまるで別の乗り物だぜ。
俺は気にいっちゃって、その自転車をしばらく貸してもらえる事になった。
これ、めちゃ高級なロードだったんだ。ナガサワ号っていうやつで、スプリントの世界選で十連覇した中野浩一選手が乗っていたのと同じ自転車。
俺はフモさんと一緒に乗れるのが楽しみで仕方なかった。
俺、何も知らなかったからさ。しばらくは変速機能があるって事さえ知らないで乗ってたんだ。
前を走ってくれるフモさんに合わせてペダルを漕いでると俺の方がどんどん前に行っちゃうのは、俺が乗ってる自転車が高級だからだって真剣に思ってた。
ただ、フモさんより重いギアに入ってただけなんだけど、そんな事すら分からずに変速もしないで走ってた。
フモさん、教えてくれよ!
まあ、変速する事とかは男子にとっては当たり前なんだろうけど、女子ってそんなもんだぜ。(たぶん‥‥‥? 俺だけじゃないはず)
暫くは運動靴で頑張って走ってた。
懐かしいな。そんな始まりだったな〜。
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