第44話 帝国皇子視点8 エルとやっと婚約できました

俺はエルの姉上から意見をもらって色々修正した。


花はなかなか厳しいという事で、バラを1輪とお菓子にした。

それで良いのかと思いつつ、まあ、お菓子を贈ってエルに怒られたことはないから良いのか・・・・


そろそろいいかなと思って思い切ってエルに告白に行った時だ。


「フェル!」

俺はエルから呼びかけてもらった。これは脈があるのではないかと俺は喜んだ。


「あなたから最近いろんなお菓子貰っているんだけれど、私に何か頼みたいことがあるんじゃないかなと思って」

「ああ、実はそうなんだ」

エルの言葉に俺は姿勢を正した。

「実は・・・・」

ちょっと言いづらい。思い切って言え、フェルナンデス!俺は思いっきって言おうとしたまさにその時だ。


「で、私に誰を紹介してほしいの?」

「えっ?」

俺はエルの言葉に固まってしまった。誰を紹介して欲しいってどういう意味だ?

違う。俺はお前が好きなんだ。


俺は頭を抱えてしまった。



それから帰還命令がきて、俺たちはハインツェルに帰った。道中、あんなことがあってからなかなかエルに話せていなかった。これではいけないと思いつつ、色々やろうとしたが、なかなかうまくいかなかった。


ハインツェルの城門では多くの人の出迎えがあった。

そして、俺は思ってもいない奴の出迎えを受けたのだった。


「フェル!」

そう言って喜んで駆け寄ってくる従姉妹を見つけたのだ。母の妹の娘だった。

こいつとは妹分としていろんな相談に乗ってやったりしていた。


「ヘレナ!」

俺は飛び込んできた従姉妹を抱きとめていた。


「どうしたんだ。こんなところまで」

俺は驚いて聞いていた。こいつまさか、叔母に黙って出てきたんじゃないだろうな。俺はそこが心配だった。


「だって、あなたが戦場に行ったと聞いて驚いて飛んできたのよ。心配で心配で」

「いや、戦闘といっても殆どなかったし、お前を心配させることもないかと」

「何言っているのよ。叔母様もとても心配していらっしゃったわよ」

まあ、俺の母親は過保護だからな。

黙ってきたのでないのならまあ良いだろう。


「ああ、エル、こちら俺の母方のいとこでへレナ・ホルスト公爵令嬢だ。俺の幼なじみなんだ。ヘレナ、こちらはエルヴィーラ・ハインツェル。ハインツェル王国の第二王女だ」


俺はエルに紹介したが、何故か二人の間に険悪なムードになっている。

妹分のヘレナを恋人のエルに紹介したかったんだが、まあ、エルにはまだ告白できていないし・・・・・


エルはさっさと城に入ってしまうし、ヘレナは母からの書状を持ってきていた。

その辺の侍女にお菓子を持ってきてもらう。


何か母の書状は面倒くさいものだった。

そっちに集中していると、ヘレナが勝手に口にお菓子を放り込んできた。

それよりも、母だ。さっさと帝国内で婚約者を見つけろとか好きなことを言っていやがる。俺がエルと婚約をさっさと進めろと書類を送っているのに何を考えている。これは強硬手段しかないかと思い悩んでいた時だ。


俺はいきなり頬を思いっきり張られていた。


それもエルにだ。


えっ、俺は何故殴られたかよく判っていなかった。


「な、何かて凶暴な女なの。さすが辺境伯の娘ね」

ヘレナが言うが、俺はそれを無視して、エルを追いかけることにした。


「ちょっとフェル、帝国にはいつ帰ってくるの」

「悪い。帝国には帰るつもりはない」

「えっ、そんな」

ヘレナはショックを受けたみたいだったが、俺は元々そのつもりだったし、オーバードルフ内に空いた領地はたくさんあるから、どこかを分けてもらえればエルと一緒に治めたら良いんじゃないかと、勝手に想っていたのだ。



必死にエルを追いかけたが、エルは脚も早かった。


途中で見失ってしまった。


でも、エルのことだからおそらく高いところだろうと、目星をつけて探すと、城壁の上にいた。

それも城壁の陰で突っ伏して泣いていたのだ。


「エルっ、どうしたんだ。いきなり俺を引っ叩いていなくなるなんて、本当に探したぞ」

俺は声をかけた。

でも返事がない。


「一体どうしたんだ。いきなり走っていなくなるから、必死に探したんだぞ」

俺はそっと後ろからエルの肩に手を置いた。


でも、エルは更に泣き出したのだ。


「えっ、ちょっと、しばかれたのは俺なのに、なんで叩いたエルが泣いているんだよ」

俺は驚いて言った。

でも、俺の胸の中でエルは思いっきり泣いていた。


「どうしたんだ。エル?」

泣き止みそうになる度に俺は聞いたが、その度にまた泣き出すのだ。


まあ、ベルンハルトとの婚約破棄されたこととか、不能姫とからかわれたりして色々悩んでいたんだろう。


俺はエルの頭をポンポンとなでた。


その後、俺はずうーっとエルにつくことにした。なんとかして告白しないと・・・・もたもたして邪魔が入ってもいけないし。


そんな中、トイレの中までまで付いて行こうとしたが、それは叩き出された。


でも、出てくる時は何故かヘレナと一緒だった。

何か一発触発の感じなのだが・・・・

えっ、こいつら何をしているんだ。


何故か訓練場に行き、訓練している奴らを追い出して二人で対峙している。


「いや、ヘレナ。エレと勝負するのはまずいって」

俺はエルの手を握りながら言う。いや、エル相手にヘレナでは絶対にかなわない。エルは剣聖にはかなわないのかもしれないが、それを除けば王国ではほとんど無敵で、帝国でもベスト10にはなれるはずだ。


「煩いですわ。フェル。今こそ、あなたの目を覚ましてあげますわ」

ヘレナは叫んでいたが、あっさりと当然ながらヘレナはエルに弾き飛ばされていた。


まあ、帝国の奴らはヘレナに甘いからヘレナにもいい薬になっただろう。


勝ったあと、エルがキョロキョロと誰かを探している。


「何をしている?」

後ろから聞くと

「えっ、なんであんたがここにいるのよ。恋人の側にいかなくて良いの?」

「はああああ!」

こいつ何を言うんだ。


「だから、ここにいるんだけど」

俺はエルの目を見ていった。


「えっ?」

エルはやっぱり理解していない。


「エルの恋人でいたいからここにいるの!」

俺はゆっくりと言った。


「つまらない冗談言ってないで早く令嬢の所に行けば」

「冗談じゃないんだが」

「私の事、好きだって聞いたこともないし」

エルが言うと


「判った」

これは俺が悪い。二度とエルが他の誰かの婚約者になるのは絶対に阻止しなければいけない。


俺はエルの前に跪いた。

いつもエルの姉上に邪魔されたので、今日は対姉用に魔法陣を展開する。


そして、何故かこのタイミングでエルの姉が転移してきたが、

「ギャアッ」魔法陣で横に弾き飛ばした。なんでそう何度も邪魔するかな。今回は俺は容赦しなかった。


「エルヴィーラ・ハインツェル。あなたが好きです。どうか私と婚約して下さい!」

エルは驚いているみたいだった。


「一体、な、なに言い出すのよ!」

「やった、やっと言えた・・・・・」

俺はエルの姉上に邪魔されずにやっと言えてホッとしていた。


「エル、俺は、はっきりとお前に言ったからな」

「いや、言ったからって、そんな事言ったって、あそこに倒れている公爵令嬢が可愛そうじやない」

俺は今までどれだけエルを恋い焦がれていたか、話した。


最後は帝国堂の見たこともない幻のお菓子で釣った。

それで釣る俺も俺だが、それにかかるエルもエルだ。

でも、なんで釣っても釣れれば官軍だ。


俺の母はグズグズ言ったが、認めてもらえないなら、二度と帰らない、と言い切ると諦めたみたいだ。

父の方はやっと婚約者を俺が決めた事にほっとしたようだ。

兄弟たちは俺が帝国の後継者にならずに、オーバードルフ辺境伯の配偶者になることになって喜んでいた。


そう、オーバードルフ王家は皆罪人になったので、残っている親戚でオーバードルフの一番強い血を持っているのがエルだったのだ。エルの曾祖母がオーバードルフの王女だった関係で、エルが継ぐことになったのだ。エルの姉上は面倒事は嫌だの一言で逃げ出したので、必然的にまともなエルになった。


俺は入り婿でそこに入ることになったのだ。


オーバードルフ領民も領主の配偶者が帝国皇子でもある俺ということで、納得はしているみたいだ。



俺はそんな忙しい中で、エルを連れて帝国堂に来ていた。エルに約束のダブルチョコパフェを食べさせるためだ。帝国にはいつ帰れるかわからないので、エルにねだられて連れてきたのだ。


「うーん、美味しい」

今日はオープンスペースで、食べていて、皆こちらを注目していた。


何しろ俺達の前には巨大なチョコレートパフェとフルーツパフエが鎮座しているのだ。


俺たちはお互いに食べさせをやっていた。


「ねえ、フェル、ダブルチョコレートパフェって帝国の皇族限定とか言っていなかった」

エルが聞いてきた。

「うーん、そうだったはずなんだけど」

何か周りのカップルの机の上にも同じような物が載っているように思うのだが


「申し訳ありません。殿下方の恋愛成就にちなんだダブルチョコパフェとはどのようなものだと、問い合わせが殺到いたしまして、陛下の裁断で1日限定10食を限りに、一般にも公開させて頂いた次第でして」

大慌てで支配人が飛んできて四苦八苦説明していった。俺の父にこんな事を了解貰ったなんて絶対に嘘だと思うのだが・・・・


まあ、俺はどうでもいいんだけど、エルは何か納得していないみたいだ。

ここで、グジグジ言われてそんなことなら婚約破棄するなんて言わす暇もなく、俺は懸命にエルの口の中にパフェを放り込んでいたのだった・・・・



ということで何か様になっていないが、これにて話は終わる。


蛇足だが、オーバードルフ辺境伯が今までのハインツェル辺境伯の秘密条項を継いでいくというのは公然の秘密だ。すなわち、エルが兄が王にふさわしくないと決断した途端に、オーバードルフ王国に替わるということで。エルのことだから、簡単には使わないと思うが、兄弟げんかのついでにやってしまいそうで、そこはしっかりと手綱をひいていこうとは思う。兄上は剣聖としては素晴らしいが、国王としては本当に良いのかどうかは疑問だ。まあ、文官がしっかりしているから良いとは思うのだが・・・・。


「隙あり」

エルが俺の口の中に巨大な桃を突っ込んでくれた。えっ、これ一口で食べられるのか?

口の中が思いっきり広げられたんだが。

それから喉につまらせて、エルに背中を叩いてもらったりして、食べきるまでが本当に大変だった・・・・




おしまい

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ここまで読んで頂いて本当にありがとうございました。これにて完結です。また、閑話、時々あげていこうと思います。ブックマーク、評価よろしくお願いいたします。


そして、次回作ですが、次は続編開始です。

「皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません!」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054917566155

新章はじめました。


その3年前の「赤い死神の大侵攻作戦で王国を蹂躙します…しかし、その前に無敵の戦神が立ち塞がりました」

https://kakuyomu.jp/works/16816452218396528480


で、シャラザールに退治されたゼウスらが復活。

ノルディン帝国と合体して史上最悪の南下政策を始めようとします。


クリスたちは大ピンチに陥ります。


果たして勝てるのか?シャラザールは?


今まで倒した標的も地獄から脱獄してきてさあ大変。


シャラザールも史上最大の危機です。


ぜひともお読み下さい。

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