第43話 帝国皇子に婚約を申し込まれて受けてしまいました・・・・

「お嬢様!」

倒れ込んだ公爵令嬢に使用人や護衛達が飛んでくる。

しかし、我が家の使用人や護衛と言うか兵士達は飛んで来ない。普通はお嬢様(私の事)を少しくらい心配してくるところじゃ無いの? というか奴ら私を恐れすぎているんじゃないの?


なんだかなあ、という感じだ。


「いやあ、姫が剣で負けて怪我する可能性はこの付近10000キロ内ではあり得ません」

「何でよ?お兄様とかいるじゃない」

ヘルマンに私が文句を言うと

「兄上はもし姫を怪我させたら母上が恐ろしいので絶対にされません。周りも剣聖の妹を怪我させたあとの事を考えて絶対にしません。ゲフマンのアホどもは剣の実力自体無いので姫様に瞬殺されましたし、すなわち姫様は無敵なのです」

ヘルマンが余計な一言、いや一言以上を叫んでくれた。


「なによそれ」

思いっきりしばこうにも近くにいない。それがために離れているのか?

この事も考えていたのか。


なんかムカつくんですけど・・・・

公爵令嬢の傍に行ったと思われるフェルに八つ当たりしようと思って令嬢の周りを探すがいない!


「何をしている?」

いきなり後ろからフェルが現れた。

「えっ、なんであんたがここにいるのよ。恋人の側にいかなくて良いの?」

「はああああ!」

フェルが不満そう私を見て続けた。


「だから、ここにいるんだけど」

「えっ?」

私はとっさにフェルが言ったことが理解出来なかった。


「エルの恋人でいたいからここにいるの!」

なんだろう。これは冗談のつもりなのか?


「つまらない冗談言ってないで早く令嬢の所に行けば」

「冗談じゃないんだが」

「私の事、好きだって聞いたこともないし」

私が言うと


「判った」

フェルは頷くやいきなり私の前に跪いた。

何故か頭の上には転移防止用の魔方陣を掲げている。


そして、「ギャアッ」と叫ぶお姉様の声がして、公爵令嬢の上に叩きつけられたような気がしたけど、私はそれどころじゃなかった。


「エルヴィーラ・ハインツェル。あなたが好きです。どうか私と婚約して下さい!」

私はその言葉に固まってしまった。

えっ、嘘!フェルから婚約の申し込みされちゃった。


まさか。


私は心つもりはなにもしておらず、パニックになった。


「一体、な、なに言い出すのよ!」

私はそう叫ぶのが精一杯だった。


「やった、やっと言えた・・・・・」

何かフェルは言えたことで感動しているんだけど。なんで・・・・というか、こんな事言うな。


「えええええ」

私は叫び、固まってしまった。


「エル、俺ははっきりとお前に言ったからな」

「いや、言ったからって、そんな事言ったって、あそこに倒れている公爵令嬢が可愛そうじやない」

「ヘレナは単なる親戚だ。

俺はエルが、小さい時から好きだった。そう、俺はエルがボケナスベルンハルトの婚約者だって知らなかったんだ。

知った時にどれだけショック受けたことか。でも、それでもずうーーっとエルのこと思っていたんだ。父とか母とかからは早く婚約者を探せとかムカつくことばかり言われて、本当に辛かった。

本来はエルと一緒に学園生活送りたかったけれど、エルがあのボケナスと仲良くしているところなんか見せられたらショックのあまり死ぬと思ったから、一緒に学園生活を送れなかったんだ。

だから、エルが婚約破棄されたって国際会議場で聞いた時には、思わず飛び上がって喜んでしまったんだ。

それは悪かったと思っている。

でも、それから慌てて飛んでき今に至っている。どうか俺の申し込みを受けて欲しい」

そう言って差し出しているのが、花ではなくて帝国の宝剣なんだけど・・・・・


「いや、フェル、でもあなた帝国の皇子でしょ。私なんて単なる辺境伯の末っ子よ」

「関係ない。そんな事言ったら俺なんて高々帝国の第五皇子だぞ」

「いやいやいや、帝国って言えば大国じゃない」

「ハインツェルは強国だろう。その姫なんだから問題ない」

「でも私出来ない姫よ。掃除ダメ、洗濯ダメ、料理ダメ、裁縫ダメ、絶対にその公爵令嬢よりも出来ないわよ」

私は自信たっぷりに言い切った。後でビアンカからそこは自信を持っていうところではないと怒られたが・・・・


「別にそんな事、姫がやる必要ないだろう」

「それに、剣はお兄様に相手にもされず、魔術はお姉様の足元にも及ばないのよ」

「剣の実力は帝国でもおそらく10指に入り、魔術の力も10番以内に入れるよ。そもそも、戦神エルザベート様の生まれ変わりと呼ばれているんだから問題ないだろう」

「でも、不能姫よ」

「それ俺には関係ないだろう。

それよりも、また、お前がよそに攫われるのは嫌だ。俺が知らない間に勝手に婚約されているのも嫌だ。だから俺と婚約して欲しい」

フェルは何か必死だ。その必死さは嬉しいんだけど。だってわたし出来損ないの姫だし・・・・


「いや、でも」

「デモもくそもない。またいくらでも俺の胸で泣かせてやるから」

「えええ、何かそれ意地悪されるみたい」

「俺が意地悪したことあるか」

「むかし、宝剣を抜かせた」

あれ以来最悪なんですけど・・・・・


「子供の時だろう。最近、意地悪したか?」

「うーん、それはないけど」

「ケーキ食べに連れて行ってやっただろう」

えっ、それと関係するの?


「まあ、それはそうだけど」

「帝国堂の本店には皇族専用のメニューがあってダブルチョコパフェなるものがあるんだぞ」

「えっ、ダブルチョコパフェ・・・・」

「俺の嫁になったらいくらでも食べさせてやるから」

「ダブルフルーツパフェも?」

「あるかないか知らないけど、お前の頼みなら作らせる」

「本当に?」

「当然だ。じゃあそれでいいな」

「うーん、いいかも」

私はそこで頷いてしまったのだ。なんか違うと思ったけど。


「エル!」

喜んだフェルの胸に抱きかかえられてしまった。


周りのみんなは唖然としていた。


食い物で釣られたみたいだろうか。


だって、フェルとは幼なじみだし、色々と気を使ってくれるし、私を怖れないし、辛い時は胸で泣かせてくれるし・・・・。どの道政略結婚ならば、ベルンハルトに比べても剣良し魔術良し、学力良しで性格も良し。私をたててくれるので言うことはなかったんだけど。



ダブルフルーツパフェで釣られた姫と延々と兵士たちに噂されることになったのは誤算だったけど。

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