国の成り立ち編

大火

 Side 木里 翔太郎


 騒がしくも平穏な毎日を比良坂市で送っている中、日本各地では反政府活動が活発化。


 それを政府は武力で弾圧し、さらに反政府活動が活発化すると言う悪循環に陥っていた。


 だがここで事件が起きる。



 レギンレイヴ内のブリーフィングルーム。


 モニターの前に映し出された映像。


 それは一つの街が業火に包まれると言う信じ難い内容だった。


 そしてそれは遠い外国とか、紛争地帯とかではなく、日本で起きた出来事だと言う。


 これを行っているらしい無人機や四つ目の黒いパワーローダー、厳つい小型の陸上戦艦のようなパワーローダーには見覚えがあった。


 天王寺 イチゼン。


 その一派の連中だ。


 まるで人間を殺すのを楽しみ、競うようにして殺戮の限りを尽くし、建造物を破壊している。


 とても同じ人間がやる事ではない。


 気がどうにかなりそうだった。


 泣き崩れる者もいた。


 焼き払われた場所はただ平和に生きたくて中立宣言をしていた場所らしい。


 にも関わらずこの仕打ち。


 何か裏があるのではないかとも思った。


 だがそれよりも怒りが勝った。


 同時に奴達はまた中立宣言している街に部隊を差し向けている事を知る。


 俺達はレギンレイヴ艦内と供に、虐殺を阻止するためにその街へと向かった。


 もはやこれは戦争でも内乱でもない。


 ただの虐殺だ。





 Side 木里 翔太郎


 レギンレイヴの搭乗志願者は多かった。


 やはりあの衝撃的な映像が原因だろう。


 近隣の自衛隊も。


 中立を決め込んでいた自衛隊ですらも動き始めていた。


 皮肉ではあるがこんな形で纏まるとはありがたい事である。


『どうにか間に合ったか!?』


 辿り着いた場所では既に近隣から駆けつけた自衛官達が虐殺者相手に必死に戦っている。


 だが敵の兵器との性能差や、防衛対象を背後に戦っているせいか、上手く戦えないでいた。


 だから俺達は――


『行くぞサエ!!』


『ええ翔太郎!!』


 俺とサエは二人で先行。

 その背後から牛島 ミク、和泉 ツカサ、相川 タツヤ、豊穣院 ミホ。

 他の竹宮高校チームの面々が空中降下を決めながら出撃していく。

 

 恐ろしい光景であるが、皆戦意は十分だ。


『味方を巻き込んで核兵器を撃つだけじゃなく!! 一般市民すら虐殺するのがお前らのやり方か!?』


 本当に戦うべき敵は言葉で上手く現せないがそいつは眼前にいる。

 俺は容赦なく、敵のパワーローダーにサイドスカートのブレードを振り落とす。


『陸上戦艦はレギンレイヴで抑える! 敵の虐殺をなんとしても食い止めろ!』


 と、プレラーティ博士は珍しくもシッカリとした口調で訴えかける。


『防衛ラインを設定! 防衛ラインに近づく敵を迎撃してください! 今回の敵は今迄の相手とは違います! 腕に自信の無い人達は複数での行動を心掛け、人命救助に回ってください!』


 雪代 マイナさんもレギンレイヴ艦内から必死にオペレートしてくれた。

 俺は怒りと憎しみでどうにかなりそうになりながらも手毬と一緒に暴れ回る。


『反逆者どもが!』

 

 敵のそう言って襲い掛かってきたが――


『何が反逆者だ!? お前らがやってるのはただの虐殺じゃないのか!?』


 と返すも、


『我々の正義を成すためだ! この程度の犠牲など大した事ではない!』


 そこまで聞いて俺は確信した。

 こいつらに何を言っても無駄なんだと。


『その正義のために何人殺す気だ!?』


 と叫んで腰のブレードでパワーローダーを斬り捨てる。

 

『こいつらを野放しにしちゃいけない! ここで倒さないと新たな犠牲が増える!』


 サエも右腕のビームライフル、左腕のガトリングシールドや背中のフライトユニットのキャノン砲で勢いよく撃破していく。


 敵のパワーローダーが次々と撃ち抜かれていき、爆散していった。

 サエも情けを完全に捨て去っている。

 敵を殺すのに躊躇いがない。  

 

 他の皆も負けてはいない。

 恐ろしい状況の中、高い戦意の中で自衛隊と一緒に戦っていた。


『何をしている!? 早く反乱分子を処刑せんか!!』


『だったらお前がやってみせろ!!』


『ひぃ!!』


 偉そうに指示を飛ばしていたパワーローダーを二刀のブレードで力任せに斬り捨てる。

 

『子供達に負けるな!』


『大人の意地を見せろ!』


 駆けつけて来た自衛官達も負けてはられないとばかりに虐殺者相手に攻撃を行う。

 性能差はあるが士気は高く、勇敢に立ち向かう。

 

『違反分子を纏めて処分する良い機会だ!!』


『纏めてここで処刑しろ!!』

 

 と、相手側も応戦する。

 実弾やビームなどが飛び交い、流れ弾で被害が出る状況。

 もうこうなったら早期に戦闘を終結させるしかない。


『無茶を承知をお願いします! なるべく早く戦闘を終結させてください! 町への被害が拡大しつつあります』


『了解!』


 雪代 マイナさんの訴えに俺は勢いよく答えて背中のバインダー内蔵型レールガンをぶっ放し、敵のパワーローダーを纏めて撃破する。


『木里さんと手毬さんは空中の無人パワーローダーを! 豊穣院さん、相川さん、和泉さん、牛島さんは陸の大型パワーローダーを! 他の部隊は引き続き救助作業、防衛ラインの死守に努めてください!』


 続けてマイナさんの指示が飛ぶ。


 空中の無人機――以前戦った、戦闘機を人型にしたような外観のマシン。


 アレは並のパワーローダーや腕では歯が立たない。


 それに無人機と言う事は人を――女子供を殺すことには躊躇いなどないだろう。


 早急に倒すために俺はサエと一緒に空中に飛翔した。

 



 Side 敵側司令官


 陸上戦艦ブリッジ内部。 


 報告がリアルタイムでモニターに映し出されていた。


「無人パワーローダー、イレイザー!! 苦戦しています!!」


「例の少年少女部隊のパワーローダーです!」

 

 例の少年少女部隊のパワーローダー。

 ヴァイスハイト帝国との戦いに生き残り、日本政府の追撃を退け、比良坂市で暴れ回った奴らか。


 あの部隊のパワーローダーは性能はいいが腕も立つ。


 余程のことが無いと撃墜は無理だと言わしめた無人のパワーローダーを撃破する程だ。


 恐らくこのままでは落とされるだろう。

 

 戦況も悪化している。


 このままでは自分が処分されかねない。


「一旦部隊を下げ――」


『いいや、このまま突撃させろ! あの部隊がいるんだ! 必ず殺してやる!』


「ですがイチゼン様――」

 

 と、ここで天王寺 イチゼンが指揮に口を挟む。





 Side 天王寺 イチゼン


『今度こそ、今度こそ殺してやる!!』


 今回は特注のパワーローダーも用意した。

 

 量産型のアインブラッド部隊も。


 それにしても――


『目標は排除するだけだ』


『今度は楽しめるといいんだけどさぁ』


『ねえねえ? 今回も沢山遊んでもいい!?』


 あの三人。

 特注のアインブラッドタイプを身を包んだ連中。

 使えるのか?


 まあ使えなかったら切り捨てればいいだけだ。

   

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