大火その2

 Side 木里 翔太郎


『あらかた、敵を片付けたが……』


 周りを見渡す。

 燃え盛る建造物や車含む構造物。

 倒れ伏す人々。

 この世の地獄のような状況である。


『待って、まだ新手がくるみたい』


 傍にいる手毬が言う。


『クソ!!』


 俺は舌打ちして迎撃準備をする。

 現れたのは三機。


 新手のパワーローダー。

 三機ともアインブラッドタイプだ。

 更に奥には量産型のアインブラッドタイプの姿も見える。


『敵も味方もアインブラッドタイプ――アインブラッドの叩き売り状態だな』


『粗製乱造されてるとも言うわね……それよりも来るわよ』


 量産型のアインブラッドタイプはともかく新手の三機を相手する。

 カラーは赤、青、黒。


 赤色は大剣を持った近接戦闘型。

 青色は両肩のキャノンと手に持ったバズーカ、シールドが特徴的な砲撃型。

 黒色は背中の航空機のような翼が印象的な空中戦闘型だろうか。


『あんたらが噂の学生部隊か!!』


 赤色の奴の大剣を振り被って攻撃してくる。

 声色からして俺達と同い年ぐらいだ。


『お前らもぶっ壊してやんよ!!』


 続いて青い機体が。

 此方も同い年ぐらい。


『破壊する』


 さらに黒い機体がミサイルを乱射してくる。

 こちらは女の子の声だ。


『量産型のアインブラッド部隊も同じ!! 今のところ私達と同い年ぐらいよ!?』


 と、手毬が知らせてくる。

 つまりこいつらは俺達と同じ少年少女達の部隊だ。

 腐っているとは思っていたしこれぐらいは平然とやるだろうとは思ってはいたがこうして見せつけられると心に来るものがある。


『俺達がおかしいのか、この世界が狂っているのか分からなくなってきたな……』


『今は嘆いている暇はないわ!! 来るわよ!?』


 サエの言う通り世の中を嘆く暇はない。

 戦わなければ自分だけでなく大勢の人間が死ぬ。

 少なくともマトモな状況ではない。


『まずは俺からだ!! 黒いアンちゃん!!』


『来たか!?』


 赤い大剣装備の奴が来る。

 両手にブレードを持って相手の大剣を受け止める。


『中々いい反応だな!!』


『この機動性にパワー、今迄の連中とは違うか――』


『ホラホラ!!』


 そう言って赤い大剣装備の奴が猛攻を仕掛けてくる。


 

 Side 手毬 サエ

 

(援護に行きたいけどこっちもキツイのよね!!)


『ヒャハハハハハハハハ!! ネイキッドのお嬢ちゃん!! 中々やるじゃねえか!!』


 私は青い新型のパワーローダー、アインブラッドタイプの攻撃を避ける。

 両肩や胴体からのビーム砲、手に持ったビームバズーカ、シールドからもビーム兵器の塊のような機体。

 その見掛けに反して地面を滑走していて機動性も高い。

 

 人型の高機動ビーム砲台――恐らくそう言うコンセプトの機体なのだろう。


 私も砲撃の合間に反撃をするが構わず攻撃してくる。


(このままじゃ町が――)


 と焦りの感情が出るが、町の被害を気にしていたらこっちがやられる。

 

『アナタから崩す』


 黒い空中飛行型が襲来。

 感情があまり感じられない少女の声。

 戦闘機型に変形して機銃とミサイルを乱射して飛び込んでくる。

 

(上空を抑えられた!! このままじゃロクに動けなさい!!)


 青い奴の大火力に加えて、黒い奴に制空権を奪われる。

 このままではキツイが――


『翔太郎!!』


『ああ!!』


 私達は一人で戦っているワケじゃない。

 皆と一緒に戦っているのだ。


『なんだ!? 交代か!?』


『でやぁあああああああああああああ!』


『なっ!?』


 私は赤い近接型の新型へ思いっきり蹴りをかます。

 その隙を突いて木里が殴り飛ばす。


『次、上空の奴!!』


『了解!!』


『ッ!!』 


 翔太郎は背中のバインダーに内蔵されたレールガン。

 私は背中のフライトユニットから二門のキャノン砲と手に持ったビームライフル、ガトリングシールドを発射して弾幕を張る。


 黒い空中の新型は飛行機形態から装甲を動かして人型形態になり、急ブレーキした後、その場から離れて行った。


『おらおら!! よそ見している暇はないぞ!!』


 安堵する暇もなく、続いて青い砲撃型の新型が弾幕をばら撒いてくる。


『私は右!!』


『俺は左!!』


 私は右。

 翔太郎は左へ飛ぶ。

 

『手は割れてるんだよ!!』


『落とさせない』


 翔太郎の方に赤い新型が。

 私の方に黒い飛行型が人型形態で仕掛けてくる。


 私と木里はその攻撃を凌いで再び空中で合流。

 

『これで!!』


 黒い飛行型の新型から放たれるミサイルを背中合わせになって二人で迎撃する。


『ヒャハハハハハ!! 楽しませてくれるじゃねえか!!』


 その隙を突くように私と木里に青い新型が自慢の火力で弾幕を張ってきたので再び散開した。


『今度は仕留める!!』


『なんの!!』


『ッ!?』


 飛行型で突っ込んできた黒い新型を蹴り飛ばす。

 翔太郎の方も赤い近接型を剣で上手く捌いて蹴り倒した。



 Side 雪代 マイナ


『各員は今のウチに態勢を立て直して!! 手が空いている人間は援護を!!』


 敵の新型三機は木里君と手毬さんの二人が抑えてくれている。

 戦闘が激しいせいか敵も戦いに参加できずにいるようだ。


 この隙に味方全体の態勢を立て直す。

 

 状況は油断ならないけど徐々にだが此方が優勢に傾いている。


『部隊の再編成、再配置を急いで!! それが済んだら反撃に移る!!』


 私はとにかく頭を必死に働かせて指示を飛ばした。  

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