比良坂市決戦その3

 Side 木里 翔太郎


 比良坂市を巡る戦いは正念場を迎えていた。


 敵の無人パワーローダーに大型のパワーローダーの設計思想から外れた、小型の陸上戦艦みたいな何か。

 

 黒鬼隊に天王寺 イチゼンの取り巻きの高性能機部隊。

 

 厄介なのは敵の無人パワーローダーだ。


 戦闘機状態と人型に変形させるギミックを持った無人機。


 より具体的には両腕にバインダー。

 頭部、胴体は戦闘機のコクピットみたいだ。

 両足はブースターになっている。

  

 それが巧みに変形状態を切り替えて両腕のバインダーからビームマシンガン、背中からミサイルを発射して攻撃してくる。


 今は三機相手取っている。

 

 更に地上からは小型の陸上戦艦のようなパワーローダー・・・・・・なのか?


 パワーローダーの上半身が見えている。

 上には巨大な大砲にミサイルポッドが二つ。

 彼方此方に砲台。

 巨大な脚のような大型ホバーユニット。

 サイズ的には大型トラック(10トン)サイズぐらい。


 そんな化け物が火器を惜しげも無く放出している。

 装甲も堅く、てかどんな装甲を採用しているのか遠距離からのビームの狙撃を耐えてしまう。

 マジもんの化け物だ。


 問題は無人機。

 機械的な効率の良い回避運動を披露しながら反撃してくる。

 俺は舌打ちしながらどうするのか考える。


『木里君、僕達はチームですよ』


『和泉先生!?』


 と、和泉先生の重火力機体が地上から牽制する。

 続いて巨大なビームの奔流が飛び込んで来た。


『今のはタツヤか!?』


『はい。加勢に来ました』


 相川 タツヤ。

 先程のはアインブラッド・ウイングのバスターキャノンだろう。


「サエちゃんもタマには私達を頼ってね」


「ミク――」


『その通りです。今は私達もいます!!』


『ミホも――』


 牛島 ミクさんと豊穣院 ミホさんが手毬を挟み込むようにして語りかける。

 手毬は二人に応えるように「そうね――任せたわよ」と答えた。




 

 Side 荒木 将一


 此方にも小型の陸上戦艦みたいななにかなパワーローダーや無人パワーローダーが三機ほどやって来た。


 瞬と二人がかりでも中々に手強い。


 だが――


『将一には触れさせない』


 本野 真清の正確なビーム射撃で相手を牽制し、


『はああああああ!!』


 ヴァイスハイト帝国相手に白兵戦を行い続けた愛坂 マナの近接攻撃が敵の無人機を損傷を追い込んで、


『狙撃はあんまり得意じゃないけど――決めてみせる!!』


 実戦で磨かれた朝倉 梨子の狙撃が更に無人機を追い込んでいく。

 

『先輩方、援護します』


『ユカリに任せろなのだ~♪』


『部長もいるぞ――』


 と、アンナやユカリ、高円寺部長などが援護に回ってくれる。


 更にはアインブラスター隊は両チームのエースを援護するように展開。

 敵を近寄らせないでいる。

 

『子供達に負けるな!!』


『俺達も後に続け!!』


 更には比良坂市の自衛隊やミーミルの部隊。

 

 降伏して此方側に加勢してくれた自衛隊の部隊までもが協力して俺達を援護してくれていてる。


『皆、私を忘れてないかな?』


 レギンレイヴから通信。

 プレラーティ博士だ。


『フォーメーション整いました。これより敵艦、敵部隊に艦砲射撃を行います』


 続いて雪代 マイナさんからも通信。


 気がつくと敵だった自衛隊の陸上戦艦がレギンレイヴと整列。


『カウント十以内に射線から離れてください』


 そこから十カウント。

 急いで射線から離れ、0になったところで一斉砲撃が開始された。


 



 Side 天王寺 イチゼン


 なんだこの流れは?


 なんなんだこの流れは!?


 どうしてこうなる!?


 どうしてだ!?


 どうしてあいつらの有利になるように物事が進んでいくんだ!?


 ふざけるなああああああああああああああああああああああああ!?





 Side 増援艦隊提督(つまり今の敵側の司令官)


「敵の攻勢苛烈!!」


「艦隊の被害報告止まりません!!」


「パワーローダー部隊被害甚大!!」

 

「戦闘ヘリ、戦車部隊などの通常戦力から救援要請多数!!」


 戦いは決したのを感じた。


 戦略、戦術的にも我々の負けだ。


 最初から大部隊で押し潰していればこうにはならなかっただろうに。


 これを策士、策に溺れると言うことか――

 

 だがやるべき事は残っている。


「あのボンクラ息子(天王寺 イチゼン)の言う事は無視して構わん!! 我が感は殿を勤める!! 非戦闘要因は即時退艦。無事な部隊、艦は撤退支援。撤退が無理な艦は艦を放棄しても構わん!! 最悪降伏しても構わん!! とにかく生き延びて自分達が何と戦うべきかもう一度問いかけろ!! 我が艦は目標達成次第、敵に降伏する!!」


「ですが――」


「イヤとは言わせんぞ!! 従えないなら直ぐに艦を降りろ!!」


「りょ、了解!!」





 Side とあるパワーローダー部隊


 敵の猛攻が激しくて、前に進めない。

 隊の損耗率も高く、独断で何人も退避させた。


『クソ!! あのボンクラム息子(天王寺 イチゼン)のせいでメチャクチャな状況だ!?』


『どうしますか!?』


『自衛官としての責務を果たす!! 無事な部隊を旗艦に集結させて敵をなるべく惹きつける!! その後は降伏するなり、撤退するなり決めればいい!!』


『――そんな』


『俺達は何と戦ってるんだ!? 自衛隊は政治家の道具か!? 政治の歯車か!? そもそもこんな目に遭ってるのは馬鹿な政治家どもが問題を先送りしまくったツケだろうが!! ・・・・・・だが俺達にも責任はある。付き合うのはこれで最後だ!! お前達も撤退してもいいぞ!!』


『いえ!! 我々も戦います!!』


『お供します隊長!!』


『・・・・・・部下には恵まれたらしいな。馬鹿野郎どもが。これが最後の命令だ。もしも俺や誰かが死んでも相手を恨むんじゃないぞ。それは筋違いって奴だ・・・・・・さあ、最後の大仕事だ!!』


 部下達は元気よく『了解』と答える。


 本当に馬鹿野郎共だよ、お前らは。





 Side べヒーモスの装着者


 このゲテモノパワーローダーに放り込まれて今もどうにか生きている。

 確かに火力や防御力、機動力を両立させているのは凄まじいが・・・・・・いくら装甲が頑丈でも限度が――


 ビーム兵器はビームコートで減退が幾らでも受けられるワケじゃないし。

 レールガンとかミサイルとか艦砲射撃を受ければ一溜まりもない。


 雑魚はどうにかなるが、敵の空中戦艦(レギンレイヴ)や新型パワーローダー部隊(アインブラスター)はなんなんだアレは。

 

 あんなの開発して本当にただの武装勢力なのかよ。


 地上も上空も敵のエース達が出張っている。

 

 あの驚異的な無人機相手に互角かそれ以上の戦いを繰り広げている連中がそうだろう。


 本当にまだ高校生なのかよ。


 正直この目で今眼前に起きている光景を目にしてなかったら。


 無人機の強さを知ってなかったら信じられなかっただろう。


 今迄、あの驚異的な戦果の数々は嘘だと思っていたが・・・・・・まさか本当だったとは。


 勝てない。

 

 心底俺はそう思った。


 だが俺にも意地はある。


『このベヒーモス!! ただでは落ちんぞ!!』


 試したくなったのかもしれない。

 自分がどこまで戦えるのか。

 そうして何処に辿り着けるのか。

 

 上手く言葉では言い表せない何かが自分を駆り立てた。 





 Side 木里 翔太郎


 敵も後退をはじめ、場の流れは完全に此方に来ている。


 後は戦う気がある奴を倒せばそれで終わりだ。


 とにかく今は空中を飛び回る無人兵器を撃破していく。


『手毬、行くぞ!』


「うん、木里!」


 お互い名前を呼び合って無人兵器に攻撃を仕掛ける。

 敵の無人機は相変わらず無駄の無い動作で反撃をするが――


「そこ!!」


 手毬がガトリングシールドの弾丸をばらまく。


『今だ!』


 回避行動を取ろうとしたところに俺は腰にマウントしていたブレードを手にとって突っ込む。

 左腕のバインダーで防がれるが――


「合わせる!」


 手毬も日本刀型ブレードを手にとって斬り掛かる。

 右腕のバインダーで防ごうとするが――手毬の背中のフライトユニットに付けられたキャノン砲が、俺の背中のバインダーのレールガンが同時に炸裂する。

 

 まず一機目撃破。


 続いて二機目。


 勢いに任せて接近戦を挑む。

 上下、左右から挟み込むような空中戦でしか出来ない機動。

 他の無人機も援護に入るが構わずに突っ込む。

 

『一閃!!』


 俺はすれ違い様に無人機を切り裂いた。 

 辺りが浅いがそれで十分。

 すぐにその場を離脱。

 

「今度は私が!!」


 続いて手毬が仕掛ける。

 背中のキャノン砲を乱射して相手を牽制しつつ、右腕を跳ね飛ばす。


『トドメは俺が!!』


 相手が破損した瞬間を狙って、頭頂から股までをブレードで真っ二つにした。

 最後の一機。


『ここは私が!!』


 豊穣院 ミホのパワーローダー、ルナが粒子制御で形成したバリアで飛び込んで何度も体当たりをかます。

 

『もらった!!』


「そこです」


 態勢を崩したところを狙うように和泉 ツカサ先生と牛島 ミクの二人によるビームライフルの嵐が。


『トドメは任せろ!!』


 そこへ相川 タツヤがトドメの一撃――バスターキャノンを放つ。

 無人機はネジ一本残らず光の中に消失していった。


 残りは地上戦力。

 

 小型の陸上戦艦のようなパワーローダー。


 弾幕は厚いが――


『右!』


 俺は右。


「左!」


 手毬は左から攻め込んでいく。

 背後からは仲間達の援護射撃が敵の化け物のようなパワーローダーに着弾する。


『は、速い!?』


 敵が驚いている様子だ。

 最初見た時は驚いたが、ただの大きくて頑丈な移動砲台だ。

 撃破出来ないことはない。

 背後に回り込んで弱点っぽいところを勘でビームライフルを撃ち込む。

 

 すると敵は――どうやら陸上戦艦みたいな装備は外せるらしく、そこから普通のパワーローダーが飛び出て急いで後退した。


 他の陸上戦艦や無人機も大方片付けられていき――

 

『――我々は降伏する』


 勝負は決したかなと思ったところで敵は降伏を宣言した。

 




 戦いが終わった後も忙しかった。


 救いだったのは降伏して敵だった自衛官が此方にとても協力的だったと言う事だ。


 どうやら天王寺 イチゼンの一派や今の日本政府のやり方には疑問を持っていたり、ついて行けないと考える人間は自衛隊でもとても多いらしい。


 決定打だったのは二度目となる大量破壊兵器を使用しようとした事だろう。


 問題の天王寺 イチゼンとブラックオーガ・・・・・・黒鬼隊は味方を見捨てるようにして離脱したらしいが今回の一件奴の手駒も殆ど残っていないだろうと言う。

 

 更にはこの戦いに呼応するように日本各地で反政府デモやレジスタンスなどが活発化しているそうだ。


 これも俺達の勝利や大量破壊兵器の使用未遂などがキッカケだったらしい。


 スローガンは「自分達は何のために戦っているのか?」、『今立ち上がらずして何時立ち上がるのか』だ。


 俺達はこれからどうするか迷った。


 だがある事件をキッカケに再び戦う決意を固める事になる。

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