交流

 Side 木里 翔太郎


 俺は今比良坂学園のチーム。


 荒木 将一と一緒にいた。


 気の良さそうなメガネを掛けた茶髪の兄さんと言った感じだ。


「何度か組んだ仲だけど、こうして会話するのは初めてだな」


「まあな。お互いよく生きてたもんですよ」


「違いない」


 と、会話する。


 学生同士の結託を政府を恐れていたのか交流などの催しはほぼなかった。


「比良坂市ってどんなとこなんだ?」


「まあ、大企業お抱えの地方都市って奴さ。こんなご時世だから寂しくなったけど――都会は都会で賑やかだけどその反面治安が悪くなってるって話だし」


「それどこの情報?」


「友人に元日本政府の工作員がいてな。そっからの情報だな。後はこの目で直接確かめた」


「友人に日本政府工作員云々は置いとくとしてこの目で見たのか?」


「ああ。足りない物資仕入れたりとか情報収集とかでな・・・・・・酷いもんだよ。賑やかなのは僅かな場所だけで少し目を向ければ抗議運動とか、ホームレスとかがイヤでも目に入る」


「本当に変わっちまったんだな。この国」


 ずっと外部から遮断され、逃避行していてそんな事になっていたとは知らなかった。


「ああ。政府の要人の何人かは首都圏から離れているって言う話も聞いたな・・・・・・中には実質他国へ亡命した奴とかもいる」


「メチャクチャだな・・・・・・」


「誰も核兵器使用の責任を取りたくないんだろう。最悪辞任して天下りかまして有耶無耶にするつもりなんだろうさ」


「どこでこの国は間違えちまったんだか・・・・・・非核三原則はどこにいったんだ?」


 俺は頭を抱えた。


「日本の政治家はその程度だったて言う話なんだろうさ」


 荒木さんの言う事ももっともだ。 

 気が滅入ってきたので俺は「話を戻そう」と比良坂市について尋ねた。


「そこもやっぱり治安が悪いのか?」


「まあな。ヴァイスハイトや自衛隊の脱走兵とか野盗連中相手にしたりとか・・・・・・後は反乱軍とかレジスタンス、PMCの連中とかも一戦交えたこともある」


「当分、戦いからさようならとはいかないのな」


「まあそう言うことだな」


 なんとなくは覚悟していたが本当にイヤな時代になったもんだ。

 

「俺も戦いばかりじゃなくてちゃんと地の足ついた将来送りたいから頑張らないと」


「俺もだ」


「・・・・・・なあ?」


「どうした? 顔を真っ赤にして?」


「そっちも女いんの?」


「その物言いだったそっちも?」


 荒木さんは頷いた。

 俺も正直に「そっちもか」と返事をした。


「お互い頑張ろうな。幸せな将来のために」


「あ、ああ。荒木さんこそ・・・・・・」


 と、俺と荒木さんは誓い合った。





 Side 木里 翔太郎


 真夜中。


 もう直ぐ目的地の比良坂市と言うところで追撃が来た。


 敵は飛行型のパワーローダーと戦闘機の混成部隊だ。


 所属はお馴染みの日本政府。


 空中戦艦レギンレイヴは対空砲火を起動させ、飛行可能なパワーローダーは出撃する事になった。


 俺達、暫定的に竹宮高校チームと呼ぶが――和泉さん以外は全員飛行可能なので出撃である。


 比良坂学園チームも全員出撃とのことだ。



 希に見る空中での戦い。


 飛行型パワーローダーの姿だけでなく、戦闘機の姿まで見える。


 またこの場所に待ち構えていたのか市街地に戦車の姿や陸戦型のパワーローダーの姿まであった。


 どうやら自衛隊――日本政府の連中は俺達を本気で殺したいらしい。

 

 艦の防衛。


 空中部隊の迎撃。


 陸戦部隊の迎撃。


 この三つに別れて攻撃する事になった。


 自分達は空中部隊の迎撃だ。


 陸戦部隊の連中は荒木さん達が受け持つ事になる。


『待ち構えていたにしては変ね? なんか上手く連携が取れてないような』


 と、手毬の言葉通りの事を自分も感じていた。


『上の命令に慌てて緊急配備した感じじゃないか――まあ襲い掛かってくる以上、手を抜く事はしないが』


 それに敵からはしつこさを感じない。

 まるで死にたくないと言う感情みたいな物を動きから感じ取れた。 

  

『それにしても――ミホ、動きから迷いが感じられないわね。機体性能も凄いけど――この日のために努力して来たって言うけど』


 豊穣院 ミホ。

 学生時代は大人しい淑女だが好奇心旺盛な子供っぽいところがあり、いざと言う時は芯の強さを魅せる女子だった。


 だが今は動きに迷いがない。

 

 水を得た魚のように純白のパワーローダー『ルナ』で背中のバインダーを展開して空中を飛び回る。


 背中のバインダーで特殊な粒子を制御して、まるで自由自在に空を飛び回っているのだそうだ。


『なんだあの白いパワーローダーは!?』


『パワーローダーがどうしてあんな自由に飛び回れる!?』


 この特殊な粒子は比良坂学園の生徒達が使っているアインブラッドタイプとは違う法則の粒子制御技術らしい。


 どちらかと言うと手毬やミクが使うネイキッドローダーの浮遊ユニットの技術を発展させた奴だそうだとか。


『敵の白いパワーローダーに追われている!!』


『誰か助けてくれ!!』


『戦闘機が食われた!?』


 敵の大型飛行用ブースターで空中に無理矢理飛んでいたりするパワーローダーやジェット戦闘機とか相手に互角以上の戦いを魅せている豊穣院 ミホのルナ。


 これは負けてられないと俺と手毬も奮起する。



 Side 荒木 将一


 空の方は大丈夫そうだな。


 こっちは戦車や従来のパワーローダーを相手している。


 戦車は耐ビームコーティングとかとんでも技術が施されているワケでもないので今のパワーローダーの手持ち武装でも十分破壊可能だ。


 中にはレギンレイヴの艦砲射撃で粉砕されたのもいるが運が悪かったとしか言いようがないだろう。


 今居るメンバー・・・・・・女性ばっかだ。

 瞬は残留メンバーだがそれを差し引いてもどうしてこう俺の周りは女性だらけになったのだろう。


 皆気合い入れて次々と敵を撃破している。


 パワーローダーの性能が良いのもあるが伊達に最前線で戦い続けたワケじゃない。

 それは竹宮高校の人々も同じだ。


 他校の連中は壊滅して吸収合併を繰り返したそうだが・・・・・・これも運が悪かったとしか言いようがない。


 気持ち切り替えて集中しよう。


 今は敵だ。


 正直歯応えがない。

 

 今回の作戦のために無理矢理引っ張り出した上に休戦条約で気が緩んでいた連中とかなんだろう。


 まあ銃を向けてくる以上は手も抜けないのだが。


 気がつけば俺達は敵を撤退に追い込んでいたので帰還する事になった。



 Side プレラーティ博士


「やはり我々はテロリスト扱いか・・・・・・他にする事はあるだろうにご苦労なことだね」


 私はブリッジでそう呟く。


 雪代 マイナは「ともかく彼達を休ませてあげたいです」と苦々しく言う。


 私と違って彼女――元竹宮高校の監督官は善良な女性らしい。


 まあだからこそ生き延びられたのだろうが。

 だがそれは精神的に苦痛だった筈だろうに。


 世の中何が幸いするか分からないもんだね。


「残念だけどもう一戦あるみたいだよ」


「なんですって?」


 雪代 マイナが驚いた様子だ。


「政府の連中、比良坂市に軍艦を差し向けたらしい。必要とあらば核兵器を使うような連中だし、無視する事はできないね」


「まさか、一般市民を核攻撃するなんて・・・・・・」


「今の日本政府なんて嘘を積み重ねて政治運営している民主主義の独裁国家だろう。一度使えば二度も三度も使えるだろう」


「それは・・・・・」


「それに核兵器じゃなくて毒ガスやら核兵器以外の大量破壊兵器とか使うのも考えられるね。そうした可能性がある以上は無視出来ないさ」


「・・・・・・日本はどこで道を間違えたんでしょう」


「少なくとも少年少女を率先して最前線に送り込む時点で末期だね。第二次世界大戦の頃から全く進歩してなかったらしい」


 と言うと雪代 マイナは沈痛な表情を深めた。

 ちょっと言い過ぎたかな?

 それにしても今時珍しく愛国心がある女性だ。

 

「ともかく戦闘準備を進めておこう」


「わかりました・・・・・・皆にそのように伝えます」


 いやはや。

 本当にこの国はどうなるんだろうね。 





 Side 手毬 サエ


 格納庫では忙しくパワーローターの整備点検が進んでいる。

 私達も手伝い、一息ついて豊穣院 ミホや牛島 ミクと会話する。


「す、凄かったね、ミホ」


「ええ。国がこんな有様ですから強くならないと生きていけませんでしたから」


 と、ミクの言った事にミホはそう返す。

 本当にこの国は末期のようだ。


 ふとここで女の子達が寄ってくる。

 数は三人。

 それぞれタイプは違うけど美少女である事は違いない。


「忙しくて挨拶遅れたけど自己紹介するね。私は愛坂 マナ」


 サイドポニーテールの可愛らしい女の子。

 茶髪のボブカット系で髪の毛を切り添えられている。


「本野 真清よ。よろしくね」


 茶色いセミロングの髪の毛で大人びた雰囲気を醸し出している。

 胸もそこそこある。


「朝倉 梨子だよ。梨子でいいわ」


 ちょっとボサッたい野性味溢れるブラウンのヘアースタイルだ。

 とてもイキイキしている。


 三人とも共通してスタイルがよくて可愛らしく、それぞれの魅力が溢れている。

 チーム組んでアイドルとしてやっていけそうだ。


 ふと思ったが――


「そう言えば荒木 将一以外、戦闘メンバーは全員女の子なの?」


「まあそんな感じかな? 他にも引率の宮里先生とかもいるけど。ほら、背が低い小学生みたいな先生」


 私の問いに朝倉 梨子が答えてくれた。


「ああ、いたわね。思わず二度見したわ」  


「加々美 瞬以外はほぼ戦闘要員は女性かな? 他の連中は――運が悪かったわね」


「そう・・・・・・」


 たまたまその二人の男子が生き残った感じなのだろう。


「加々美 瞬が生き残るのは分かるけど、将一が生き残るのは正直異常よね」

 

 本野 真清の言に愛坂 マナも「そうだよね。どこであれだけの戦闘力身につけたんだろう」と言う。


「まあそれを考えると私達も似たようなもんでしょ」


 と言うと皆押し黙った。


 ミクが「確かにそうですよね。パワーローダーの性能に助けられたのもありますけど、元はほぼ全員一般人ですし」と私の意見を補足するように意見を出す。


「いわゆる○ュータイプ的なアレなんでしょうか?」


「ミホ、あなたもなんだかんだで私達に染まっちゃったわね」


 豊穣院 ミホをオタク色染めてしまってちょっと責任感じた私であった。


 それに続くように愛坂 マナが「○ュータイプかぁ・・・・・・真清はどう思う?」と尋ねる。


 本野 真清は「○ュータイプか・・・・・・まあアテにはしないけどちょっと信じてしまう部分もあるかも」などと言い。


 朝倉 梨子なんかは「じゃあ○ァンネルとか使えるのかな私達?」などと言い合う始末だ。


 そこまで聞いて私は(あ、私達と仲良くできそう)などと思った。

 

 牛島 ミクも「な、なんか上手くやってけそうだね?」などと言っていた。 

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