空中戦艦レギンレイヴ

 Side 木里 翔太郎


 空中戦艦に乗り込み、プレラーティ博士だけでなく懐かしい面々と再会する。


 現在は比良坂市と呼ばれる地方都市に向かっているようだ。


 俺は体を休ませながら相川 タツヤと話をしていた。


 家族や妹のミユキも無事らしい。

 

「あの後、この国は内戦状態に突入しました。首都も酷いものです」


「タツヤ――そんなに酷くなってきたのか?」   

 

「はい。海外の軍隊や傭兵達が我が物顔で歩き、レジスタンスや反乱軍で状況は混沌としていて自分でも何が何だかと言う感じです」


「レジスタンスはともかく反乱軍って?」


「反乱軍とは今の自衛隊についていけずに独自に活動を開始した人々です」


「俺達が逃げ回っている間にそんな事になっていたのか」


「地方自治体も政府のやり方についていけずに独自に纏めている状態です。さながら戦国時代ですね」


「・・・・・・取りあえずこれからどうする?」


「竹宮市(*木里達が住んでいた場所)などに戻っても戦果を持ち込むようなもんです。どの道、比良坂市からの協力者の都合などもありますので今は比良坂市に向かってます」


「比良坂市からの協力者って、まさか・・・・・・」


「ええ、あの人達です」


 そして俺はあの時の事――陸上戦艦の大部隊と戦った時の事を思い出す。 


 あれは戦時中の奇跡のような話だ。


 敵の陸上戦艦の大部隊を装備は良いとは言え、少年兵だけのグループが撃退したと言うお話。


 それを成し遂げたのは俺達と彼達だった。



 


 =戦時中・真っ昼間の廃墟の市街地=

 

 俺達は廃墟の市街地に立て籠もり、敵の攻撃を凌いでいた。


『上の連中、俺達を捨て駒にするつもりか!?』


『あんな数相手にしてられるか!!』


『クソッ!! こんな事なら反乱でも起こしとけばよかった!!』


 味方――と言っても俺と同い年の少年兵が口々に言う。

 他の基地の少年、少女兵連中もいるが戦力として数えられるか――


 廃墟となった市街地に立て籠もり、陸上戦艦を中心とした敵の大部隊と交戦中だ。

 パワーローダーだけでなく、戦車や戦闘機、戦闘ヘリなど大判振る舞いだ。


 他の友軍――大人連中は俺達を囮にするか見捨てたかのどちらか考えるのが妥当だろう。

 

『手毬――生き延びられそうか?』


 物陰に隠れながら傍にいる手毬に言う。

 ピンク色のピッチリスーツでフライトユニットを搭載し、重武装の桜色のネイキッドローダー、桜花で武装している。


 他にも友人達が傍に控えていた。 


「今回ばかりは無茶ね。戦闘機に戦闘ヘリ、戦車――陸上戦艦までいる。味方は遥か後方よ――つまり見捨てるつもりね」


『よしんば上手く生き延びても纏めて始末されそうだな』


「同感――敵の懐に潜り込んだ方が生存率高いってどんな作戦よ」


『そうだな――悪いな手毬。俺のせいだ』


 流石にこれで最後かと思った。

 

「私も同罪よ。あの時――社会科見学の時に戦っていなければその場で死んでたし」


『そうだな――悪い。弱気になってた。足掻けるところまで足掻いてやる。それが俺達の誓いだったな』


「そうよ――ミク、ツカサ、タツヤ――あんたらは万が一の退路の確保よろしく。私達はあの戦艦に突っ込んでいくわ」


 友人達にそう言い残して俺達は飛び込んだ。





 たった二人に大した弾幕だ。

 手毬も俺も近付けやしねえ。

 やはり無茶があったか――


『他校にも無謀な馬鹿がいたもんだ――』


『ははは。そうですね』


 などと言ってると――漆黒とグレーのパワーローダー。両方とも恐らくアインブラッドタイプ。

 背後にも新型と思わしきアインブラッドタイプ混じりのパワーローダーがいた。

 

『俺は荒木 将一だ。あの社会科見学以来だな』


 と漆黒のパワーローダーが言う。


 荒木 将一と言うらしい。

 両肩の上にブースター。

 背中の右側にバズーカで左側には折りたたみ式のキャノン砲だ。

 右手にはガンブレード。左手にはピストルを持つ。

 左手の側面には小さなシールドがついていた。


『ウチの比良坂学園もそっちの竹宮高校となんとか歯を食いしばって頑張ってるよ』


 と、将一が言いながら近付く敵を片付けて行く。


『こちら比良坂学園チーム、どうにか持ち堪えてまーす』


『竹宮高校チームもです!! だけど長くは持ちません!!』


 と後方の無線から危機的状況なのかどうなのかよくわからん明るい声が出てきた。

 俺は内心で(馬鹿野郎どもが・・・・・・)愚痴りながら言った。


『協力してくれ。せめて陸上戦艦をどうにかしないと』


『あいよ――なんか他人のような気がしないな』


『奇遇だな。俺もだ』


 お互い軽口を飛ばし合いながら両校合同の作戦がはじまる。

 不思議と息がピッタリ合った。

 

 お互いチーム単位で、時に個人同士でカバーしながら突き進んでいく。


「すみません!! 来ちゃいました」

 

 牛島 ミク:ネイキッドパワーローダー 桜花 フライト装備


『カッコイイところはとりっこなしですよ』


 和泉 ツカサ:アインブラッド・フルアーマータイプ


『こっちもアインブラッドタイプです。やれない事はないでしょう』


 相川 タツヤ:アインブラッド・ウイング


 などと――ウチの高校――主に俺達の学校の友人達だが――馬鹿はいたらしい。

 増援が来てよりやすくなった。


 敵のパワーローダーや無人機を蹴散らし、戦車や戦闘ヘリを破壊し、戦闘機を撃墜しつつ陸上戦艦に散開、包囲しつつ肉薄する。




 

 夕暮れ。

 

 今日を生き延びるために大勢の敵を殺した。

 見知った顔がいる味方も死んだ。


 ヴァイスハイト帝国の陸上戦艦が巨大な墓標のように黒煙を挙げて佇んでいる。


 戦場の跡地となったこの場所で大人達がまるで我が物顔のように歩き回っていた。


 こちらに目を合わそうとしない。


 たぶんも何も心が痛むからだろう。


「本当に子供だけでこれだけの戦果を――」


「俺達、なんのにために自衛隊にいるのかな――」


「子供だけにこんな事させ続けて本当にいいのか?」


 などと言っていた。

 だがどうでもいい。


 最近は日本よりもヴァイスハイト帝国の人間に対して親近感を抱くようになっていた。


 いっそヴァイスハイト帝国に寝返って一緒に日本を滅ぼすかと言う悪魔の考えが頭を過ぎるが――自分にも守りたい人がいる。


 家族や友人がいる。


 今は喜ぼう。


 生き延びられたことを。 



 


 =現代・レギンレイヴ艦内=



 あれから翌日。


 レギンレイヴ艦内で休息を取っていた。


 ついでにこれまでの事を頭の中で整理している。


 レギンレイヴ艦内には見知った顔が大勢乗っていた。


 竹宮高校時代の担任の先生まで乗っている。


 それだけでなく豊穣院 ミホも乗っていた。


 見掛けは長い黒髪のお嬢様。

 天然なところがあり、好奇心旺盛な女の子。

 だが長い髪の毛は短く切ってしまったようだ。


 初めてパワーローダーに乗った戦闘から家の権力の力でどうにかなったのか離れ離れになってしまった。


 それから暫く落ち込んでいたようだがプレラーティ博士の誘いに乗り、活動を開始したらしい。


 髪の毛を切ったのもこの辺りだそうだ。


もっとも専用のパワーローダーを準備していたりとお転婆なところもあるが。


 なんだか元の生活に少し戻ったような気がした。


 



 Side 手毬 サエ


 正直言うと嬉しかった。


 豊穣院 ミホの変化に驚いたし、豊穣院 ミホも牛島 ミクの劇的な変化に驚いていた。


 ちょっと学生時代に戻ったようで嬉しい。


「私の方も皆さん程ではありませんが大変でした」


「・・・・・・今日本は酷い有様なんでしょ」


 ミホの言葉におそるおそる答える。


「はい。今日本は反乱軍やレジスタンス、海外勢力に傭兵、日本政府、そしてヴァイスハイトが活動している状態です」

 

「こうして聞くと、とんでもない状態になったね」


 ミクの言ってる事がシンプルで一番的を得ているだろう。


「ともかく今後どうするにせよ、一旦比良坂市で腰を据えるのが良いかと思います」


 と、ミホがそう締めくくった。





 Side 雪代 マイナ 元監督官


 私は雪代 マイナ。


 監督官と言う役職と言うのは少年少女兵の纏め役の役職だ。


 学校で例えるなら校長とか学園長。


 私は元々監督官ではないし、もうその肩書きはないが、責任を感じているため今もこうして監督官を名乗っている。


 元々プレラーティ博士のスパイとして活動していて豊穣院さんなどからの援助物資を私達の基地にいる少年少女に届ける役割も引き受けていた。

  

 正直言うと少年少女兵と言うのは反対だった。


 だが日本と言う国は、日本と言う政府は追い詰められたらとことん愚かになる国だった。


 2020年代に世界的に猛威を振るったウイルスの時、日本政府は日本人の国民性でなければ暴動は起きていただろう。


 それぐらいに杜撰だ。


 戦争で負けているとは言え、少年少女を戦場送りにすると言う考えは正に悪魔の発想だ。


 結果は散々なもので多くの少年少女達が戦場で散っていった。


 竹宮高校や比良坂学園のような華々しい戦果を挙げたチームは希だ。

 と言うか何の軍事教練も受けていなかった少年少女が華々しい戦果を挙げる方がおかしいのだ。


 結果、成功しすぎて何が気にくわなかったのか国家反逆罪にして始末しようと企てる始末だ。


 しかも私達大人もろともだ。

 

 もうそんな政府についていけないと言う大人は周りにも沢山出て、少年少女達と一緒に逃亡生活に加わって今に至る。


 一体私達は何と戦っているのだろう。 


 

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