14.197番の男
私が浴室から出ると、197番の男は裸のままで椅子に座ってテレビを見ていた。人気の学園ドラマだ。教師役の女優が生徒たちに「恋愛とは・・」と言っている。
日常から隔絶したホテルユーカリの中で、テレビの中にだけ日常があった。
私はすばやくベッドの布団の中に潜り込んだ。布団の中で胸を覆っているバスタオルをとってサイドテーブルの上に置いた。男のカバンの横だ。
すると、197番の男がテレビを消して布団の中に潜り込んできた。私をしびれを切らして待っていたのだろう。荒い息を吐いている。
そして、私は197番の男を抱いた。
・・・・・・
私は197番の男を抱いた後で、ベッドに横たわって、隣の男の貧弱な身体を眺めた。
さあ、どういうふうに197番の男から話を聞き出そうか?
そう思ったときだった。部屋のドアが開くのが私の眼の端に映った。
えっ・・
私が顔を上げると、315号室の入り口にオーナーの岩本とあの大倉が立っていた。岩本の口が開いた。
「奥さん。失礼しますよ。お楽しみのところ、すみませんねえ」
私は初めて岩本の声を聞いた。身体にまとわりつく嫌な声だった。
そのとき、197番の男がベッドの上にあった掛け布団を床に落とした。そして、私の胸の上に馬乗りになった。
あっ・・
私の裸の下半身が岩本と大倉の眼の前にさらされた。
197番の男が両手を私の脇に差し入れて私の両方の二の腕を押し上げた。そして、そのまま私の両手をベッドに押し付けた。私は197番の男によって、万歳をするような格好でベッドに押さえつけられてしまった。
岩本と大倉がベッドの脇にやって来ると、私の下半身を覗き込んだ。
「やめて・・見ないで」
私は抵抗したが、足がむなしく宙を蹴っただけだった。岩本がベッドに上がった。そして、私の両足を大きく押し開いた。私の股間を凝視した。
「やめて、お願い、やめて」
大倉がベッド脇の椅子に座って、今度は私の顔を覗き込んできた。私の髪の毛を掴むと、私の顔をぐいっと自分の方に向けた。首に激痛が走った。私の口から悲鳴が飛んだ。
「ひぃぃ」
大倉の声がした。
「奥さん。あんたはここで殺されるんだ。死ぬ前に真相を聞かせてあげよう」
私の口から声が出た。
「あああ・・やめて・・ああ・・お願い・・許して・・」
私の声を聞きながら、大倉が続けた。
「八代はね、我々の高田馬場会を裏切ろうとしていたんだ。分け前のことで
私は岩本の視線に喘ぎながら思った。
そうか。私と七海が買った二人の男は最初から仕組まれていたのか・・
私の胸には197番の男が馬乗りになって、私の両手を万歳の形でベッドに押さえつけている。そして、私の下半身は岩本に大きく押し広げられている。私は全裸だ。全裸では男たちに抵抗しようもなかった。
197番の男が「抱いてください」と言ったのは、私を全裸にして抵抗できないようにするためだったのだ。197番の男は罠だった・・
私の眼から涙がこぼれた。私は首を振った。
「ああ・・見ないで・・お願い・・やめて」
絶望が私を襲った。
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