六月十二日 1312

【のとじま】の自衛艦旗返納式の余韻をしみじみ噛み締める昼。灰色の空の下、二本煙突の掃海艇が一隻、慣れ親しんだ岸壁を離れた。

「なんか、改めると恥ずかしいな」

甲板の前の方で、距離を取った故にまばらになってしまった登舷礼に混じり、掃海艇【あいしま】を見送る。

「がんばれよ」

小さな声でエールを送れば照れくさそうな顔で敬礼をする【艦霊】の姿が見えた。普段は何かと格好つけようとしているくせに、こういう時はしおらしくて可愛げがある。

「あとで能仁(のりひと)に教えてやろう」


反対側の海を守る君へ

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