六月二十一日 1700

朝から垂れ込めていた雲が切れ太陽が顔を出した。折角なので艦橋から出て、空を見上げるもその姿は普段と変わらないように見える。

「弓ちゃん、日食見える?」

隣の艦橋に声をかけると兄がひょこっと顔を出し、おれと同じように空を見上げる。

「全然。本当に欠けてんのか?」

「今、欠けてるらしいけど……やっぱ太陽見るやつないとダメだな」

正式名称の思い出せない黒い板を頭に思い浮かべながらも、太陽をチラチラと盗み見る。

「次の時、買ってこような」

「次っていつ?」

兄がそう言うので、ポケットから携帯端末を取り出して検索してみる。画面に表示されたその結果に思わず笑いが込み上げた。

「三年後だって」

「あー、無理だな」


何もかもが最期。それはそれで面白い。


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