03_避雷球
黒瀬たちが、影の世界アンブラに向かっている途中、世界各国で、街が影に沈む現象が起こっていた。
日が沈み、夜の漆黒に染まった時のことだった。
アメリカ AM13:15 ニューヨーク
フランス AM14:34 パリ
日本 AM15:16 東京
目撃者によれば、街は夜の闇に沈むようにして消えていったという。その様子はまるで、影が街を丸ごと飲み込んでいくような光景だったと語っている。
一夜にして、世界の大都市が消失した事件は、世界の人々を
この
※※※
「黒瀬くん、この街って……」
紅園も、落下してきた街の見覚えのある光景に驚きを見せる。
「ああ、この街を知っている。アメリカ、フランス、そして日本。僕たちが生まれ育った世界の都市が落下して来てるみたいだ」
黒瀬もまさかアンブラに来て最初にこのような光景を目にするとは想像すらしていなかった。
「おそらく、これは影隠しね。人が影隠しにあうなら分かるけれど、今回みたいに街が丸ごと影隠しにあうなんて信じられないわ」
紅園は、無惨に落ちていく建物の瓦礫を見つめて言った。
「街ごとは初めてなのか?」
黒瀬は、街ごとの影隠しは異例と聞き驚いた。
「私が知る限りでは初めてよ。それにしてもこれ程の対象物を一度に影隠ししてしまうなんて、何者なのかしら。とても個人では無理だと思う。何人かが、関わっていそうね」
紅園は、右手を唇の辺りに寄せ、考えを頭で巡らせる。
「そうなのか……」
建物や車両の
黒雲で発生したいくつもの雷が落下物に反応して、激しい音を立てながら閃光を走らせた。雷に当たった落下物は、瞬時に焼き焦げたり、炎を
「雷は周りの落下物に反応してるみたいだ。俺たちの周りに影で
黒瀬は少しでも雷の危険を回避するため紅園に考えを伝えた。
「確かにそうね。少しは雷に打たれるリスクを減らせるかもしれない」
二人は、すぐさま影で周りに複数の球体を作り出した。球体に雷が落ちて感電しないよう、ある程度の距離をとる。
とはいえ、雷に打たれるリスクが0になったわけではない。
二人は、いつ何時雷に打たれてしまうか分からない不安を抱きながら黒雲からこのまま抜けるのを待つ。
押し寄せる雨粒を含んだ暴風と取り囲む黒雲で、落下する先が全く見えない。
いつになったら、この黒雲を抜けられるんだろう。
黒雲が激しくうねる音がした。
影の世界アンブラでは、影の化け物ダーカーもそうだが、特異な自然環境もまた脅威の一つなのかもしれない。
そう言った脅威を乗り越えながら、どこにいるかも分かっていない春野を探し出し救い出さなければならない。
黒瀬は、アンブラで彼女を救い出すことがどれほど困難なことなのか、身に沁みて感じるのだった。
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