アンブラへの道

01_猛攻

 浮游ふゆうの力。目玉のダーカーに託されたけど、うまく扱えるだろうか。


 いや、考えるのはやめよう。


 とにかく、やってみるしかない。


 黒瀬が考えていると、ワームワームの輪っか上の身体におびただしい目が現れる。 


 なんだ、いきなり目がいっぱいで気持ち悪い……。


 現れた複数の目は四方八方しほうはっぽううごめいた後、すべての目が一斉に黒瀬の方に視線を向ける。


 み、見られた!?


 黒瀬は、ダーカーの視線を感じて、一瞬戸惑うが、ダーカーから放たれる異様な殺意に触れて、気持ちを切り替え周囲を警戒する。


 この殺意、来る。どこから……横か。


 瞬時に、黒瀬は気配を感じた方向を見た。輪っか状のワームワームがいる方向とはまた違った方からだ。


 いきなり輪っか状の物体が現れた!?危ない。


 突如、現れた輪っか状の物体から、いきなり巨大な手のようなものが出てきて、黒瀬を握りつぶそうとする。


 かわさないと……握りつぶされる。


 黒瀬は、浮遊の力を使って、巨大な手からなんとか逃れる。間一髪かんいっぱつだった。あと少し反応が遅れていれば、彼は謎の巨大な腕に、握りしめられ命を落としていた。


 巨大な手は、黒瀬を掴むのに失敗すると、輪っかの中に、戻った。


 間違いない。あの輪っかからあの手は現れ、僕を襲ってきた。だとしたら、輪っかはどこから現れた。


 黒瀬は、心を落ち着かせて目を閉じると周囲の気配を感じ取る。


 なんだ。この感じ……。


 黒瀬がぱっと目を開けた先には、イモムシのような、細長い物体が彼の周囲を凄まじい速度で移動していた。


 なんだ、あの細長い物体は、こちらに迫ってくる。


 複数の細長い物体は、黒瀬の近くまで来ると、輪っか状に形を変える。


 やっぱり、輪っかの正体はこの細長い物体だったのか……。まずい、また、来る。構えろ。巨大な手が襲ってくる。


 イモムシ状の物体が作り出した複数の輪っかから、巨大な手が飛び出て、彼を襲う。


 周りを囲まれた。四方八方から、手が迫ってくる。このままだと、手に捕らえられる。こうなったら……。


 黒瀬は、持っていた短剣を構え影力をためる。そして、四方八方から迫りくる手に、向かって短剣を振った。


 逃げる必要はない。攻撃してくるなら、すべて断ち切るだけだ。


 短剣を振った直後、四方八方から迫る手と輪っか状の物体が一瞬で断ち切れる。

 

 行こう。この先にあるコアへ。次の攻撃が来ないうちに。


 輪っか状のワームワームは、次第に、音を立てて、黒瀬の元に接近していた。


 時間の猶予ゆうよは、あまり残されていない。輪っかを抜けられなくても終わり。時間が経てば、接近するワームワームに襲われ終わりの状況。


 そんな状況に、黒瀬は、命の危険を感じるとともに、どこかわくわくしていた。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る