16_コア

 ダーカーは、鬱蒼うっそうと茂った木々に激しく衝突し、動きを止めていた。そして、ダーカーの身体の中央から、コアが現れて薄暗い周囲をほのかに照らす。

 

「出た、コアよ!あれを破壊すれば、ダーカーを倒せるはず」


 紅園はダーカーの身体から飛び出したコアを見て黒瀬に言った。


「あれがダーカーのコアなのか。動きが止まっているうちに、破壊しよう、朱音」


「ええ、だけどあなたの短剣の威力では、コアを破壊できないかもしれない。コアは硬い膜に覆われていて、強烈な一撃を加えないと破壊できないの。それに……」


 紅園は、悲しげな眼差まなざしでダーカーから浮かび上がる出雲の顔を見つめる。


「あのダーカーは自分の手で倒したいんだね。分かったよ。僕が朱音をダーカーのコアまで導く」 


「ありがとう。ダーカーは私の手で倒して、この戦いを終わらせる」


 黒瀬たちはダーカーのコアを破壊するため地面を思いっきり踏み出した。


「朱音、ねえ、どうして。私を倒そうとするの?私のことが、嫌いなの?あなただけは、私の味方だって思ってたのに!!許せない!!!許せない!!!!」


 出雲は、負の感情に支配され、屈折した気持ちを顔に出す。湧き上がる感情に身を任せ、いくつもの触手を漆黒の身体から伸ばした。


 これで、終わらせる。


 黒瀬は、影で作り出した短剣を取り出し構えると、影をまとった靴底で地面を滑る。


「お前は邪魔だ!!!私と朱音の邪魔をするな!!!」


 ダーカーは漆黒の身体から伸ばした触手を使って、黒瀬を襲う。幾数もの触手が、黒瀬の四方八方しほうはっぽうから伸びて命を刈り取ろうと迫りくる。


 すべて断ち切る。


 黒瀬は、なんとか次々と襲い来るダーカーの触手を回避し、次々と短剣を振り下ろし切り裂いていく。


「私の手が、手が切り裂かれていく。ああ……痛い……痛い」


 ダーカーは黒瀬に触手を何本も一斉に引き裂かれ、動揺する。その隙を見逃さず、黒瀬は紅園に叫んだ。


「今だ!紅園、ダーカーのコアを狙え!」


「ええ」


 紅園は頷き、そう言うと、影で巨大な鎌を作り出し、鎌にありったけの影力を込める。影力を宿した鎌は、禍々まがまがしい紫色の光を放つ。


 ダーカーのコアの目の前まで接近し、紅園は紫色の光を放つ鎌を構える。


「この一撃に。私の全身全霊をかける」


 

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