疑心暗鬼

「それどういうことですか。」

夜ご飯の時に話した赤城くんが沈黙を破った。

「そのまんまの意味だよ。おそらくこんなかに殺し屋がいる。誰だよこいつ殺したの。次は俺を殺すんだろ。出てこいよさっさと。」

低く静かな声だが、とても怒りに溢れた声で彼は答える。少し正気を失っているようだ。


「ご友人を亡くされたことは本当にとてつもないことですが、一度落ち着きませんか。彼の遺体は一度彼の部屋のベッドに戻して、腐らないように冷房を一番低い状態でかけておきましょう。また、彼が自殺か他殺かわからない以上、もしかしたらこの旅館に彼のいう通り人殺しがいるのかもしれません。一度ここにいない方々も早朝ですが起こして、食堂に集まり、安否確認をしませんか。皆さんのこれからの安全のためにも。」


とりあえず私はそう言った。


「そうですね。俺もそれが良いと思います。男性チームで彼の遺体を運びましょう。女性の方々は残りの部屋に残っていらっしゃる方々を呼んで食堂に集まってもらえますか。」

再度赤城くんの呼びかけでそれぞれ行動することになった。


友人を亡くした彼は放心状態で浴室の隅に座り込んだ。

管理人がきっと彼を食堂に呼んでくれるだろう。そう信じて、私は女性陣と部屋に残っている人達を呼びに行った。


部屋に残った人たちを呼びに行くと、幸い全員無事なようだった。無理やり起こしてしまったが全員に食堂に行くよう伝えることも成功した。

全員そこまで慌ててはいなかったが、不安を表情に出さずにはいられないといった様子だった。


この中に殺人犯がいるかもしれないのだ。そんな人と今一緒にいると思うと平気ではいられないはずだ。

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