第四膳 問い『餃子と共同作業』

 自分が好きだからと言って、相手が好きとは限らない。

 

 いや恋の話とかではなく、人間関係の話でもない。

 そんな大それた話ではなくて、食べ物の話だ。


 今になって気づかされる。

 自分がおいしいと思ったものを人に食べさせたい。

 自分が作った料理でおいしかったと感動させたい。


 わたしが考えていたのはそればかりだったのではないだろうかと。

 そこには見えない相手どころか、身近な相手に対する思いやりすら欠けていたのではないかと。


 たぶんそうだったんだと思う。

 だから料理人として、男として、父親としてわたしは失敗したのだ。


 本当に今さらだと思う。それでもこうしてタマと出会えて、それに気づけて良かったと思えた。だから今日は『やり直し』の料理を作ろうとメニューを決めた。


「今日はさ、餃子を作ろうと思ってね。ちょっと手伝いをお願いしたいんだ。どうかな? 手伝ってくれるかな?」


 タマはわたしの心の中は知らない。知らないままに、エプロンを腰に巻かれて、キョトンと自分のことを指さしている。二人しかいないのに。


「もちろん! 今日は餃子の皮を包むのを手伝ってほしいんだ。それにね、餃子はいろんなアレンジができるんだよ。餡はもちろん、タレだっていろいろ……」


 そう。二人でたくさん話そうよ。何が好きとか嫌いとか。

 どうとしたいとか、したくないとか、なんでもいい。


「……今日は二人で究極の餃子をつくろうよ!」

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