第51話 クリスマスの準備が普通じゃない
12月25日はクリスマスだ。
子供にとっては大好きでとても楽しいイベント。
だが...大人にとっては子供を喜ばせる事が出来るか出来ないかのデスゲームに他ならない。
毎年あるこのイベントだが、今までは簡単だった。
それこそ、異世界人もいなければ、神様との交流もない。娘達は親の仕事のせいで、碌に同い年の友達もいない、そんな中出会った同い年の異世界人...それも超ド級。
だからこそ、今までは結構手に入れやすいものをリクエストされていた。大きなぬいぐるみ、大好きなお菓子、滅多に行く事のできない外食。
娘達は普段から察しがいいのか人混みを避けれるようなものをリクエストしてもらえている。
大体、「サンタさんに届けておくから」なんて告げて娘の欲しいものを聞いていた。
今、俺達がぶち当たっている問題は娘達がサンタさんにお願いしたものだ。
「難しいよね...」
「サンタさんにお願いする事じゃないよなぁ...」
互いに頭を抱える。
いつもの様にサンタさんへと書かれた手紙を二人で見て、思わず絶句してしまった。
【力】
それなりの大きさの紙に大きく一文字ちからと書かれている。
間違ってもカタカナの【カ】ではないだろう。
良い子にしていたら貰える。という謳い文句に対して、こうも素直に【力】と書かれてしまってはどうすればいいのかわからない。
異世界の頂点に君臨する人たちを見て憧れを抱いてしまったようだ。
そんなの俺だって欲しい。
「力を授けるのは簡単だけど...この世界だと....う~ん...」
「あげたくてあげれるもんじゃないだろ...」
「これって...愛菜達も悩んでるはずよね?」
「まぁ...おそらく?」
閃きを得た嫁は黒電話に手を掛け、いつもの様に異世界人と会話を始める。
「あぁ~やっぱり~」とか「うちも悩んでて~」などなど...聞こえる内容からして、向こうも相当悩んでいる様だ。
欲しいものが全て手に入る環境で生きている子供が一体なにを望むというのか...。
ペットにドラゴンが欲しい!と言われてもあの人ならばすぐにそれに対応するだろう。
だが...こっちの世界は違う。あの人に頼んで力を貰ったとしても、この世界では持て余してしまう。
嫁がいい例だ。運動会での戦闘力を鑑みれば、普段はかなり力をセーブしている状態なのだろう。
魔法も抑え、速度も抑え、力も抑える。
全てを開放出来ないのはかなりの苦痛を伴う、その上で娘達に力を与えるかと言われれば...渋々NOだ。
正しい力の使い方は出来るだろうが...間違いなく面倒ごとに巻き込まれるだろう...。
それから、異世界の人たちも交え談義をした...そして俺達は思った。
「やっぱうちの子は良い子ね...」
「あ、あぁ....流石に奴隷はな....無理」
しみじみと思う。
異世界の子達に比べればうちの子の願いはかわいいものだ。
覇王様のアイデアを取り入れる事で、俺達が真衣と由衣に与えるプレゼントは解決した。
最高のライバルとかを所望されなくてよかった...。
そうして俺達のプレゼント選びは終了した。
今年のクリスマスはきっと普通じゃない...(´;ω;`)
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