第48話 運動会が普通じゃない その3
殺し合いの様なドッチボール。
本気な挑戦者に対し、王者は圧倒的に優勢。
戦闘中に茶会を開いてしまうほどに余裕が溢れている。
どんなに強く挑戦者が投げようと、見向きもせず片手で止めてしまう。
それほどまでに圧倒的な強さを誇る二人の覇王様。
試合のラスト一分、あろうことか審判が試合に参加した。
途端に遊びはやめだと言わんばかりに本気を出す覇王様たち。
たった一人の介入で戦況は一気に傾いた。
あり得ない速度を誇る変化球。
そこまで広くないコートをぐるっと回れるほどのスピンが掛けられたボールは受け取るだけでもそれなりの難易度を誇る。
現に一人では受けきれていない、キャッチはするが、回転のせいか手からこぼれてしまう、それをもう片方がフォローする感じで、なんとか凌いでいる状況だ。
劣勢に立たされている状況を打開するべく覇王様たちは一つの策を講じた。
それは邪魔者の排除だ。
障害にはなり得ないからこそ放置していた有象無象の挑戦者たちを片っ端から排除していったのだ。
だが...それが逆に仇となる。
人が減って動きやすくなったのか、シーラさんの動きが格段に良くなったのだ。
一切表情を変化させることなく、容赦のない変化球を打ち込むシーラさんに覇王様たちは完全に防戦一方...チャンピオンが挑戦者に変わった瞬間だった。
その結果...覇王様と混沌の神様は敗北した。
「力の制御が甘いですね」
「くそ...ボールが脆すぎる...」
「我輩としたことが...」
不意に思ったのは、覇王様よりも強いんだ...という事。
口ぶりから、てっきり一番強いのは覇王様だと思っていた。その素朴な疑問を満身創痍な嫁に問いかけてみる。
「シーラちゃんはあの二人の頭脳だから...力の制御はシーラちゃんの方が上手い...」
息も絶え絶えながら俺に説明してくれた。
それの補足をドミナミさんが続ける。
曰く、シーラさんはあの二人が持つ、全知全能スキルを擬人化した存在だと言う、全てを知り、全てを兼ね備えた存在、本来は脳内で本体のサポートをする能力だが、覇王様がそれではつまらない、と肉体を与えたようだ。
シーラさんは全てを知っている。数え切れない程ある分岐した未来から確定した事象に沿って動く、全てはシーラさんの手のひらであり、手中。
もうシーラさんがラスボスでいいんじゃないかな...。
衝撃の...いや、ドン引きの事実を聞き、その途轍もなさに絶句する俺を他所に閉会式が行われた。
嫁の友達は何故こうも規格外なのか....最初から普通の運動会じゃなかったが、後半はもう、運動会ですらなかった。
嫁主催の運動会は普通じゃない...。
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