第39話 ラスボスが普通じゃない
妖怪達と進む肝試しもようやく折り返し。
突き当りの神社にある賽銭箱に5円玉を置く。
「児戯よな。実に退屈であった」
「うん...つまんない...」
呆れる二人に残念がる妖怪達...。
楽しませろとでも命令されていたのだろうか...もしかして絶滅の危機???
相手が妖怪であろうと、座敷童の様な子供が悲しい表情をしているのは胸が痛む。
「大丈夫だよ、おじさんがそうはさせないよ」
「おじさん....」
「そうだよね?アブちゃん?」
「うむ。無用な殺しはせぬ。我とて覇道を進む者、下の者を軽んじる事は許されぬ。だが...」
「うん...ママは...わかなんない...天上に居る人は...下の気持ちなんて...考えない。たぶん...ママは考えない」
最後の言葉に顔を青ざめる妖怪と俺。
「ひとまず...戻ろうか...あんまり遅くなっても、メトラさんの逆鱗に触れそうだし」
妖怪達は激しく頷き、俺の後ろに隠れるように来た道を戻った。
そして...あと少しでゴールと思われた時、あたりの空気が変わったのが、常人の俺でもはっきりと理解できた。
全身に感じる寒気、夏とは思えない程の冷たい風が通り抜ける。
「こ、これは...」
「ママだ...」
一瞬で身が引き締まる妖怪達と俺。
一旦落ち着こうと思い深く息を吸うと肺に多少の痛み、これは多分冷たい風を一気に吸い込んだ影響だろう...吸った息をゆっくり吐きだすと、当然の様に息は白くなった。
進む足がどんどんと重くなっていく...それは妖怪達も同じの様だ。
「座敷童ちゃん大丈夫?」
「うん...でも、この先...こわい...」
目に涙を浮かべながら声を振り絞る様にいう座敷童。
それでも足を止めずに歩きやがて...。俺達の恐怖の対象が姿を現した。
そこは行軍だった。
禍々しい鎧を身に纏う騎士が隊列を組み乱れる事無く歩いている。
隊の中心には神輿。騎士が神輿を背負い、その上にはメトラさんと守り神さんと我が息子快の姿。
騎士の一人が大きな扇子を仰ぎメトラは退屈そうに玉座に座り果物を食べている。
守り神さんは快の手を握り死んだような笑みを浮かべている。
守り神さんからすれば、妖怪は恐らく上位の存在だ。
玉藻前さんなんていい例だ、ただの妖狐よりも圧倒的上位種である九尾、それが怯えた表情をし、こちらを見上げているのだから...。
反対に快はとても楽しそうに神輿から妖怪達を見物している。いいなその立場...。
守り神さんはメトラさんに気に入られたらしく、時々果物を貰っている...ひとまずは安心。
妖怪達と俺は道を譲った。
アブちゃんとミリィちゃんは普通にすれ違っただけだが、俺達は完全に大名行列で道を開ける平民となった。
退屈そうな表情を浮かべるメトラさんは上から妖怪達を値踏みするように眺めその中から、俺の手を握る座敷童へと視線を動かす。
怪しく笑みを浮かべると、なにかで座敷童を持ち上げ、神輿に乗せ頭を撫で始めた。
「お持ち帰り決定ね...フフッ」
背筋が氷河期を迎えた。
あれがラスボス...霊...ゴーストタイプ達の女王...どう考えても普通じゃない。
余談だが...その日以降、日本に座敷童は現れなくなったという。なんでだろう...俺は知らない。知りたくない。
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