第38話 キャストが普通じゃない...

 息を殺して歩いた。

 それが何故か...三人で始めた肝試しも今では大所帯となっているからだ。

 当然人間ではない、百鬼夜行と言っても過言ではない。

 日本に噂として知れる妖怪達。一本だたら、七人ミサキ、犬神、えんえんら、座敷童、玉藻前、ろくろ首。そして一際目立つがしゃどくろ他にも様々な妖怪たちが...。

 それらが俺の横を取り囲み共に歩いているからだ。胆を試すどころの騒ぎではない。


 玉藻前は狐の尻尾が何本も生えているので、触りたい気持ちもあるが...恐怖が勝つ。

 こちらに危害を加えるつもりがないのは伝わってくるのでひとまず息を殺してひっそりと耐えているのだ。


 たぶん俺達は歓迎されている。

 何故、そんな事を思ってしまったかと言うと、持て成されているからだ。


 俺が怖がっているのを悟ったのか、そっと優しく手を握る座敷童。ヒンヤリしていて気持ちい。暑い夏には丁度良い。が!!時折こちらに見せる顔をが日本人形みたいな顔をしていて怖い。


 そんな中でも、アブちゃんとミリィちゃんの所に寄り付く妖怪は一切いない、おそらく、あの子達に秘められている力を恐れているのだろう...。

 その為...百鬼夜行に参加中の妖怪達は俺の横を歩くようになった。


「力ある者に媚び諂う事もできぬとは...所詮は力無き定命の人族に嫌がらせをしてる者どもだ...他愛もない」

「うん...下等種...はぁ...ママはどうして...こんな下等種...」


 2人の言葉に顔を引きつらせる妖怪達。

 俺の顔も引きつりそうだが...意を決して俺は妖怪達に問いかける事にした。


「あ...あの...どうして、皆さんは参加されているんですか...?」


 するとろくろ首の長い首が俺を取り巻きそっと耳元で囁く。


「脅されてる....」

「えぇ...」


 衝撃の事実と囁き方に顔から血の気が引く。

 日本の有名な妖怪が脅されて...肝試しに参加しているなんて前代未聞だそれもキャストとして...。

 俺の更なる問いかけに対し玉藻前は妖艶に答える。


「妾達は日本の由緒正しき日本妖怪...いわば絶滅危惧種じゃ、それが今...根絶の危機を迎えておるのじゃ...それと妾がこれを申した事は内緒にしておくれ....でなければ妾は...」


 妖艶だと思ったのは俺の勘違いだった。

 目に涙を貯め必死に懇願する姿に威厳はない...もしかして...赤チームの時に聞こえていた悲鳴って...。


「さっきの方は恐ろしいお方でした...」


 そう答えたのは雪女だ。

 あぁ...やっぱり...嫁を怖がっていたのか...ってことは...真衣と由衣は嫁を見て泣いたのか...そう思うと少しだけ面白く感じた。


 背筋に走る悪寒に身震いをした俺は妖怪達と肝試しコースを進んだ。

 普通じゃないお化け役の人達とだけど...

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る