第8話「幸せな時間」最終話・ざまぁ




それから隣国に着くまでの間、レイと昔の思い出話をした。


子供の頃に隠れんぼしたり、庭でブランコやシーソーに乗ったり、私の焼いた黒焦げクッキーをレイが全部食べてくれたり、そんな他愛もない思い出の話を。


レイはニコニコしながら私の話を聞いてくれた。


「ところでずっと気になっていたんだけど、このドラゴンさんはどうしたの?

 レイの眷属なんだよね?」


ドラゴンの指は五本あった。


ドラゴンのランクは爪(指)の数で決まる。


爪の数が多いほどドラゴンとしてのランクが高い。


五本指のドラゴンは最高ランクだ。


レイがAランク冒険者とはいえ、五本指のドラゴンを眷属にするのは簡単ではないはず。


そんなドラゴンをどうやって眷属にしたの?


「シュテルンベルク帝国の皇子と証明された日に、皇帝陛下父親に『今まで誕生日に贈り物が出来なかったわびだ』と言われプレゼントされました」


五本指のドラゴンをポーンと誕生日プレゼントとして息子に与えるなんて、シュテルンベルク帝国の皇帝は凄いな。


「じゃあ、通信用の魔石も皇帝陛下から?」


「それは実母からプレゼントされました。 赤子を誘拐されたトラウマから、二時間おきに僕と連絡を取らないと不安になるようで」


ああ……過保護系の母親か……。


嫁姑バトルが面倒くさいことになりそうだな。


まあ、レイの実のお母さんは十六年間も息子に会えなかったんだし、仕方ないか。


レイのお母さんとも上手くやっていく道を見つけよう。


「シュテルンベルク帝国に着いたら、いっぱいメリーを甘やかして溺愛します。

 それから義父母の捜索をして保護します。

 ホルン王国の王子をメタメタにして、メリーの名誉を回復させます」


「忙しくなりそうね」


私もラルドおじさんと、カーラおばさんに会いたい。


「安心してくださいメリー。

 ホルン王国の第一王子と、ロイエンタール侯爵夫妻とその娘をボッコボコにして、再起不能にまるまで叩き潰してやりますから」


そう言ってほほ笑んだレイは、真っ黒なオーラを纏っていた。


今のセリフと、レイの体から出てくるどす黒いオーラのどこに安心できる要素があるのかしら?


レイが「ボッコボコにする」と言った下りは、聞かなかったことにしよう。


私は、 

「ほどほどにね」

とだけ伝えておいた。







一年後、父と継母と妹が私を虐待していたことが白日の下にさらされた。


ワルデマー殿下は、国王陛下夫妻が留守の時に勝手に貴族令嬢を断罪した罪に問われ、廃位された。 


父と継母は侯爵と侯爵夫人の身分を剥奪され、マダリンも含め三人とも平民になった。


ドラゴンさんが壊した塔は再建され、平民になったワルデマー元殿下と父と継母とマダリンが収容されたという。


私は無実が証明され、ホルン王国からがっぽり慰謝料を頂いて、ロイエンタール侯爵家の家督を継いで女侯爵になった。


レイこと、シュテルンベルク帝国の第一皇子レイナード・シュテルンベルクと婚約中。


ロイエンタール侯爵家の領地視察は家令に任せ、私はシュテルンベルク帝国に住んでいる。


通信用の魔石を使い、シュテルンベルク帝国からリモートで仕事をしてる。


レイの実母とはレイの取り合いになって時々バトっているけど、そんな日常もなかなか楽しい。


レイは一年かけて、ホルン王国の片田舎にある港町で、漁師をしていたラルドおじさんとカーラおばさんを発見した。


二人とも苦労をしたせいか、四年の間にとても老け込んでいたが元気だった。


レイはラルドおじさんとカーラおばさんをシュテルンベルク帝国に連れていき、宮殿の近くに住まわせた。


ラルドおじさんとカーラおばさんの家で、レイとラルドおじさんとカーラおばさんと私の四人で、お母様の思い出話をするときが一番楽しいのは、レイの実のお母さんには内緒。






――終わり――



最後まで読んで下さりありがとうございます。


作者は強めのざまぁを書くことに疲れました。


これからは温めのざまぁを書きます。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「幼馴染が皇子様になって迎えに来てくれた」  まほりろ @tukumosawa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ