第8話 狭い部屋



 花梨ちゃんの婚姻届けフライング事件のおかげで、俺は花梨ちゃんと恋人になる前に花梨ちゃんの夫になっていた。


 それはイリスティラも同じで、イリスティラの婚姻の儀式フライング事件により、俺は魔王イリスティラの夫にもなっていたんだ。


「えっと、改めて、今日から……よろしくお願いします。あなた♡」


「うん、こちらそ……狭い家でごめんな?」


 そうなのだ、俺は大学生で一人暮らしをしている。そのため、部屋が一人暮らし用なので3人で暮らすにはちょっと狭いのだ。


 幼児体型のイリスティラまでは良かったが、花梨ちゃんまでとなると……ベッドが狭くなる。


 まぁ……取り合えず寝てみるか?


「すまないけど、ベッドは一つしか無いんだ。寝方を考えたいから、ベッドに一度横になってくれないか?」


「え?もう始めるの?ちょっと……心の準備が……あとお風呂入らせて?」


「しないよ?」


「え?……するよね?今日は初夜だよ?していいんだよ?」


 初夜ってマジか?おいおい早すぎるって。


「えっと、ごめん俺にも心の準備がいるんだよ?だから、入籍はしたけど、まだ、告白したばっかりだろ?恋人ってのを体感したいというか?恋人でまだしたいことあるだろ?」


「ううん?私はお嫁さんでいいんだよ?抱いて欲しいのよ?」


「そうじゃ!我も抱くのじゃよ♡」


「イリスは抱いて寝ても良いけど?」


「イリスちゃんは抱いても、私は抱けないって言うの?まさかロリコン?」


 ちょっと、花梨ちゃんが怖いんだけど?


「そうじゃなくて……分かった!二人とも抱いて寝るから、風呂入ってこいよ」


「うむ……一緒に入るのじゃ♡レモン」


 イリスティラは幼児体型なので、興奮したりはしない。だから俺は、イリスティラと一緒に風呂に入る事について抵抗がなかった。

 

「おう、洗ってやるぞ」


 イリスティラと一緒に風呂に入るのは初めてか。


 俺がイリスティラについて行こうとしたら、腕を花梨ちゃんに捕まれた。


「待ちなさい?」


 え?


「どこに行くつもり?」


「いや風呂だけど?」


「女の子の風呂を覗きにいくの?」


「違うよ?一緒にはいるん……?」


「私も入るから……」


 え?


「でも、お風呂狭いよ?」


「なら、私がイリスちゃんと入ってくるから、待ってて?」


「おおう……分かった」


 そして俺は、仲間外れとなり一人で後から入ることになった。


 風呂から出て来た花梨ちゃんとイリスは、何だろう入る前より仲良くなっている気がした。


「いいお湯だったわよ?」


「じゃ、風呂行ってくるよ?」


「うん♡いってらっしゃい♡」


 俺がイリスティラと花梨ちゃんの入った後の風呂に入ると、とても良い匂いがした。なんだろう俺がいつも入る風呂より良い匂いがする。湯船からか?


 イリスティラと花梨ちゃんが裸で入ったお風呂……。駄目だ……興奮してしまう。


 俺は煩悩を払った。


 ふぅ……。俺は勇者だ。俺は伝説の勇者レイモンドだ!


 もう大丈夫だ。


 煩悩を払った俺は、無敵モードになれる。こうして俺は今まで煩悩と戦って来たのだ。


 ん?この毛は……誰の毛だ?黒だから花梨ちゃんか?イリスティラは銀髪だから、花梨ちゃんの毛だろう。しかし、この形は髪の毛ではない……としたら?


 おおう!俺の煩悩退散!!


「はぁはぁ……だめだギブアップ!」



◇◇



 なんとか耐え切った俺は、頭と体を洗い湯船に浸かった。


「ふぅ……夢じゃ無いだろうな……」


 夢にしてはリアルすぎる。


 俺が考え事をしていると……何故か……お風呂のドアが開いた。


「もっかい、入るのじゃ!」


 威勢のいい声が聞こえたと思ったら、裸になった魔王イリスティラが入って来てしまった。


「え?お、おいちょっと?」


 イリスティラは俺が入っている湯船に、可愛いお尻から飛び込みをかけて来た。


 ザバーっとお湯が溢れ、イリスティラは俺に抱きつき、胸板に頬擦りをしてきて……何か可愛らしい。


「我はレモンと一緒がいいのじゃ……」


 何故かそんな魔王が愛おしくなってしまった俺は、イリスティラの頭を撫でてやった。


 こいつは……何で魔王なんかやってたんだろう?


 こんなに可愛いのに……。


「お前……可愛いよな?」


「レモンも……カッコいいのじゃ♡」


 俺は……こんなに可愛いやつを倒してしまったのか?


「痛かったか?」


「痛かったのじゃ……でもレモンの(攻撃)だから我慢したのじゃ……痛かった分……気持ち良くして欲しいのじゃ♡」


 俺はイリスティラを抱きしめてやった。


 すると……風呂のドアがまた開いた。


「ナニしてるのよ!?」


 花梨ちゃんの顔は真っ赤になっていて目はグルグル回っていた。


「いや……何もしていないよ?」


「(お風呂が)気持ち良かったのじゃ♡」


 してないって!いや本当に!









読者様へ


ここまでお読みいただきありがとうございます。

レビュー☆☆☆にコメント、応援♡を頂けたらとても嬉しいです。


こちらは暇な時にゆっくり投稿予定です。 まったり進みます。

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