第7話 恋人飛ばしちゃったね?



「ねぇ……あなた?」


 え?あなた?まだおままごと続けるの?


「住民票は明日に取りに行く?」


「そうだね……確かに平日じゃ無いと住民票は取れないと思うけど?」


 今はコンビニでも取れなかった?


 でも、今のおままごとって、本当にリアルだよなぁ。


「それで、新居の方なんだけど……」


 そうだよね?結婚したら新居とかいるよな?


「とりあえず住所は、レモンの家にしといたから」


「うん、構わないよ?」


「我もじゃ!」



 花梨ちゃんのお古の洋服を貰って、家に帰ろうとすると、花梨ちゃんは旅行の準備を始めた。ん?大きなボストンバッグに色々と詰めていたので、国内旅行の予定でもあるのだろう。


「じゃ、花梨。今日はありがとう。そろそろ帰るよ?」


「ちょっと待って!私も行くから」


 え?私も行く?もう旅行に出かけるのかな?


 花梨ちゃんは、大きなボストンバッグを持って俺達と一緒に家を出た。


「花梨ちゃんはどこまで行くの?」


「そうだね……やっぱり初日だし……し……シーまで行っちゃう?」


 シー?ああそうか……あのリゾート遊園地に行くのかな?


「俺も行っていいの?」


「うん……むしろ一緒に、イって欲しいかな?」


「それなら、我も行きたいのじゃ!」


「そうだよね?うん、イリスも一緒に行こうか?」


「えええ?イリスちゃんには……まだ早いと思うな?幼児だもんね……」


「むぅ……」


「そうかな?まぁいいか、バイトしないとお金も無いしな?」


「え?あ……そうね学生だものね……子供はまだ早いかな?」


「ということで、俺は行かないから……一人でいってくれないか?」


「ええ?イかせてくれるなら構わないけど……でもレモンにもイって欲しいな♡」


 花梨ちゃんは顔を真っ赤にして悶えていた。どうしたのかな?


 俺の家は、花梨ちゃんの家からそれほど遠くはなかった。結構近くに住んでいたんだな……。


「さぁ……イリス着いたぞ?」


「ただいまなのじゃ!ふふん!」


「ただいま……あなた♡」


「ん?ああ……おかえり花梨♡」


 やっぱり花梨ちゃんは可愛いなぁ♡……告白したら恋人になれるかな?彼女だったらどんなに良かったことか……。


 ん?……って、いうか何で?花梨ちゃんが付いて来たの?


「今日から、この家で一緒に住む事になって本当に嬉しいの……レモン♡好きよ♡」


「え?一緒に?……今……俺の事好きって言った?え?」


 次の瞬間、俺は花梨ちゃんにキスされた。


「ん……ちゅ♡」


 え? 俺にはどうしてこうなったのか、分からなかった。


 おままごとをしていたんじゃ無かったのか?


 いや、おままごとでキスまでは、しないよな?それに俺の事好きって今、言ってたのは紛れもなく本当だろう。だってキスしたんだよ?


 って事は何か?俺は……両想い?


「ふぅ……俺も花梨が好きだよ」


「むぅ……我は?」


「もちろん、イリスも好きだよ?」


「むふぅ……であろう?我もレモンが、好きなのじゃ♡」


「はぁ……良かったぁ♡ちゃんと、好きって言ってくれたね?」


「今まで言えなかったけど、花梨の事は前から好きだったんだ」


 花梨ちゃんは目に涙を浮かべて……喜んでいるんだよな?


「良かった……今日ね?婚姻届け出して来たの」


 え?


「……さっき名前書いて印鑑押したやつだよね?」


 出して来た?え?


「本当に?」


「うん……もう、私達夫婦なの……恋人飛ばしちゃったね?」


「は?」

 

 何してくれたの?花梨ちゃん?さっき、恋人になれたと思ったら……一つ飛ばして……ふ……夫婦だって!?


「我もじゃぞ?」


「え?どうしたの?イリス?」


「我とレモンは、婚姻の儀式を済ませたのじゃ!ふうふなのじゃ!」


「え?」


 今イリスティラは、なんて言った?婚姻の儀式?済ませた?


 異世界式の……魔王による婚姻の儀式だって?あれって心に刻まれる強力なやつだろ?おいおいマジか?



 ……って事は何か?俺はイリスとも結婚しているのか?


 かたや戸籍による結婚、異世界式の結婚。この二つは両立可能だ。だって方式が違うからな?

 

 でも、俺は大学生なんだぞ? 勤労学生でバイトしないとお金も無い。


 はぁ……。


 嬉しいよ?花梨ちゃんと結婚出来て嬉しい。でも何か違う気がするんだ。


 イリスティラは、何を考えているのか分からないし。


 イリスを倒した責任は俺にあるから、俺が面倒を見なければならない。


 それが結婚だというならば、甘んじて受けなけれればならないだろう。



 ――こうして、訳が分からないうちに、俺と花梨ちゃんと魔王イリスティラの結婚生活が始まったのだった。








読者様へ


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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こちらは暇な時にゆっくり投稿予定です。 まったり進みます。

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