第9話 三人で寝るには


 花梨ちゃんに説明して、なんとかお風呂の件は納得してくれたので、後は布団に入って寝るだけなんだけど……俺のベッドは狭い。


 このベッドは、もちろん一人用だ。眺めていても広がる訳もなく……。


「さぁ……寝ましょ?」


「ああそうだな?」


 取り敢えず……狭いので二人をベッドに寝かせて……俺は床で寝るか……。


 床でも寝れるだけのスペースは残っている。


 ただ、布団がないので座布団を敷いて寝る事にした。


「それじゃ、俺は下で寝るから……」


「我もじゃ♡」


「なら、私も……下で……」


 いや、ベッドで寝ないの!?


 仕方ないので……折りたたみ式だったベッドを畳んで、床に布団を敷くことにした。


「これで、寝れるだろう?」


 布団だけだと狭いので、その分座布団を敷いた。……やっぱり布団はもう一組欲しいよな?


 掛け布団を横にして使っているから足が出てしまうんだ。


 ……さて、これからが問題だ。


 俺は、さっき二人を抱いて寝てやると宣言してしまった。


 二人同時に抱きしめるってどうすれば良いんだ?


 イリスティラは幼児体型だから、ちょうど俺の腕の中に収まるが、花梨ちゃんはそうもいかない。


 取り敢えず、俺は真ん中に寝たんだけど、寝返りが打てない。


 さぁ、どうする?やはり……交互か?交互なのか?


 俺は抱くと言ってしまったので、両手に腕枕を強いられていた。


 要するに……動けないのだ!


 しかし、辛うじて首だけは動かせる……。


 イリスティラは軽いので、持ち上げる事は出来るだろう。


 そして、俺が身じろぎしていると……左右両側からキスされてしまった。


「「ちゅ♡」」


 俺は腕がホールドされていて動けないので、ほっぺにキスされたんだ。


 すると……イリスティラが、俺の腹の上に乗ってきた。

 

 おっと、これなら抱けそうだ。


 俺は開いた左手でイリスティラを抱きしめて、頭を撫でてやったら、イリスティラは気持ちよさそうに寝ていた。


 すると、花梨ちゃんがもぞもぞと動き出して、俺の顔を覗き込んでいた。


 その瞳に吸い込まれるように……俺と花梨ちゃんの顔は重なり合った。


 花梨ちゃんからされた長いキス……。ちょっと苦しいんだけど?


 でも、唇と唇が触れ合うだけの軽いキスだった。


「レモン……好きよ♡」


「俺も……好きだよ♡花梨」


 そもそも俺達は付き合った事すら無かったのだから、拙いのは勘弁して欲しい。


 俺は異世界で勇者として生きてきたが、元の世界に帰るつもりだったので、女の誘惑には耐えてきた。


 なので……俺は未だに童貞だ。


 ……すまん……誘惑に耐えたのは嘘だ。


 異世界に未練を残したくなかったのもあるが、俺が好きになった女には……全て男がいたからだ。


 告白しようとしたら寝取られていた時もあった。


 本当に、運のない男だったという訳だ。


 まぁ……そのおかげで、俺は異世界に未練を残す事なく帰って来られたんだ。


 ここで重要なのは、俺は童貞で、誰とも付き合った経験が無いという事だ。


 イリスティラを抱えて、花梨ちゃんにキスされた俺はどうすれば良いんだ?


「レモン?私もいるんだけど?」


 イリスティラを抱きしめていたら、今度は花梨ちゃんがイリスティラごと俺に抱き着いてきた。その反動でイリスティラは、ずり落ちてしまったけど、起きる気配はない。


「ねぇ……抱いて?」


「おう……」


 良かった……抱くだけなら何とかなる。


 俺は花梨ちゃんの体を優しく抱きしめた。


 花梨ちゃんの良い香りが俺を包み込む。花梨ちゃんの体は、柔らかくて……暖かかった。


「ねぇ……レモン?」


「どうした?」


「しないの?」


 したくないと言えば嘘になる。目の前には憧れだった花梨ちゃんがいるんだ。


「いいのか?」


「うん……優しくしてね?」


 俺は、初めて花梨ちゃんにしてみることにした。自分からキスだ……。


 こればっかりは、しろと言われて出来るものではない。

 

 花梨ちゃんは目を瞑った。これか?このタイミングなのか?これは俺も目を瞑った方がいいのか?

 いや、目を瞑ってしまうと、花梨ちゃんの可愛い顔が見れなくなる!それに、ズレたらどうするんだ?


 俺は位置を確認してから、目を瞑った。そして、花梨ちゃんの口にキスをした……と思ったら、鼻の先だった。


「ご、ごめん……慣れてないんだ」


「もう……」


 俺の初の試みは、見事に失敗したのだった。


 いつのまにか……イリスティラは、俺の腰に抱きついていた。








読者様へ


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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こちらは暇な時にゆっくり投稿予定です。 まったり進みます。


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