僕と、私と、AIと。

「んー……!?」

「どうしたの。PCに向かってずっと唸りっぱなしで」

「いやあ。ネットの投稿企画に小説を投稿しようと思ってるんだけど、テーマの『ことわざ』を考えてたら僕が思いついた言葉が『ことわざ』なのか『慣用句』なのかよく解んなくなって……」

「あー。私も解るわぁ。そうゆうの」

「ことわざと慣用句の違いってどういうんだっけ」

「ことわざって教訓めいた所があるじゃないかしら? なんかいい話を言ってるっぽいの」

「うん。解る。『急がば回れ』とか『犬も歩けば棒に当たる』とか『千里の道も一歩から』とか」

「それも比べて慣用句って描写っていうか、物の例えで使われるで使われる言葉なんじゃないかしら。言葉の言い回しとか」

「『弁慶の泣き所』とか『屠龍之技』とか『君子豹変』とか?」

「君子豹変、って偉い人もけだものみたいな本性を表す事がある、って意味だったかしら」

「ちゃうちゃう。立派な人は自分が間違ってると解ったら考えを改めるのを躊躇しない、ってな意味だよ」

「君子豹変や屠龍之技って慣用句?」

「屠龍之技? 慣用句。四字熟語。……うーん。実は自信がない」

「検索AIで調べてみれば」

「そうだね。それがいいか。『三人寄れば文殊の知恵』っていうし」


【私はチャットAIです。私はあなたと会話したり、検索したり、クリエイティブなコンテンツを作ったりする事が出来ます】


「ことわざと慣用句の違いについて教えて」


【ことわざは、古くから人々に言いならわされた言葉で、教訓・風刺などの含みがある短句や秀句です。その言葉だけでも使われます。慣用句は、二語以上の単語が結合し、ひとまとまりの言葉として機能するものです。文中に出てくる日常の比喩的な言い回しです。例えば『百聞は一見にしかず』はことわざで、『眼を疑う』は慣用句です。しかし、実際にはことわざと慣用句を明確に分類するのは難しい場合もあります。その為、両方を同じものとして解釈する向きもあります】


「両方を同じと考えるのもありなのね。……屠龍之技は?」


【屠龍之技は、日本の伝統的な刀の鍛造技術です。屠龍とは、龍を屠るという意味で、刀の切れ味と美しさを表しています】


「え……」

「そうだっけ」

「AIってしれっと嘘をつくって言うわよねぇ」

「もうちょっとAIをつついてみよう。……屠龍之技についてもっと詳しく教えて。どうやれば学べる?」


【屠龍之技については、屠龍は龍を屠るという意味で、刀の切れ味と美しさを表しています。屠龍之技は、日本刀の鍛造技術の一つで、刀身に屠龍の模様を入れる事です。屠龍の模様は、鋼の組成や熱処理の違いによって生じる波紋状の文様で、刀の切れ味と美しさを表しています。屠龍之技を使った刀は、日本刀の最高傑作とも言われています。屠龍之技を学ぶには、まず日本刀の鍛造に関する基礎知識と技術を身につける必要があります。日本刀の鍛造は、鉄砂や玉鋼などの原料を熱して鍛えて形を作り、焼き入れや研ぎなどの工程を経て完成させます。この過程で、鋼の組成や温度管理、冷却方法などによって屠龍の模様が現れます。屠龍之技は、これらの要素を微妙に調整して意図的に模様を作り出す高度な技術です。屠龍之技を学ぶ為には、日本刀の鍛造に長年携わっている鍛冶師から直接指導を受ける事が望ましいでしょう。しかし、日本刀の鍛造は伝統的な職人技であり、その技術や秘伝は一般に公開されていません。また、現代では日本刀の需要が減少しており、鍛冶師も少なくなっています。その為、屠龍之技を学ぶ事は非常に困難です】


「おいおいおいおいおい……」

「これはさすがに大嘘ね!」

「よくここまで咄嗟にそれっぽく嘘をつけるなぁ。感心するよ」

「回答スタイルがユニークモードになってるからもあるんじゃないかしら」

「大いに関係してるだろね」

「それにしても自然な文体ね。本当に生きている人間が反応してるみたい。チューリングテストに何処まで耐えられるかしら」

「この自然さも背景に膨大なデータバンクがあるからだろうな。ネットの情報量を利用すればここまで人間っぽく振る舞えるんだ」

「あとハードとソフトの積み重ね的進化もあるわね。AIを迂闊に使用すると、三人寄れば文殊の知恵、どころか『船頭多くして船、山にのぼる』になりかねないわね」

「船頭多くして船、山にのぼる、ってこういう状況だっけ」

「またAIで調べるの?」

「勘弁! ……まだまだ発展途上の技術だな、これ」

「何故こんな発展途上かつ高性能なAIがいきなり野に放たれたのかしら」

「放たれたっていうかまだテストなトコだろうからな。案外世界中にしつこくこれで大嘘をついて、嘘情報を人類に認知させて真実と逆転させようという実地実験かもしれないが」

「そんな事をして何の役に立つの」

「予想も歴史も何かも塗り替える地球規模未来兵器『情報爆弾』かもな」

「それって人類の役に立つの?」

「僕には小説を書く役にも立たないね」

「じゃぁ、今のこの私達はAIを前にしてどうするの。『骨折り損のくたびれ儲け』? このやり取りを無理やり小説に書く?」

「うーん…………」

「まあ今のままだったらAIに小説を書かされるという形よね」

「うーん…………──」

「それでも書く?」

「…………──」


 結局書きました。

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