グッモーニン・ヒーロー

 朝方、それはアラームが鳴る前に寝ている俺の心に響いてきた。

『私は全人類の心に語りかけています……眼醒めなさい……私は地球神ユーフラト……人に変革の時が訪れました……人類の修行の時は終わりました……これから地球人類は宇宙の理にのっとって『善』と『悪』のどちらかの超人に一斉に生まれ変わり、双方の相手が全て滅ぶまで戦い続けなければなりません……あなたはどちら側の超人に生まれ変わりますか……」

 変なまどろみだ。俺は寝ぼけながら、善と悪の超人にはどんな違いがあるのか、夢の中の神に訊ねてみた。

『双方とも一対一の強さは互角で、現人類の軍隊と一人で渡り合えるほどの戦闘力を持ちます……ただ、心が違います……善の側は正義の味方です……道徳や良心に従って、他人の為に戦わなければなりません……悪の側は邪悪の化身です……奪い、殺し、犯し、自分の欲望や本能のままに生きる事になります……双方ともそれらの道を外れた時、超人の力を失います……選択は自由です……あなたは善と悪のどちらを選びますか』

 きっちりと意識が醒めた。決まっているだろう。部屋の棚に並んだヒーローのフィギュア達にかけて、善の側だ!

『解りました……あなたは生まれ変わりました……あなたはこれから善の側の超人です』

 俺の身体はきっちり眼が開くと黄金色に発光し、布団を蹴散らし、ベッドの上に浮かんでキメポーズをとった。真っ暗な自室に太陽が生じたかの様。まるで宇宙刑事の如きメタリックボディは装甲ではなくこれが生身だ。

「電光英雄プラズマニア、誕生! ……で、俺が戦う悪の超人の数は何人だ、ユーフラト!」

『それは……』ユーフラトは沈黙で数秒を数えた。『あなた以外の人類全てです』

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