第7話 試合

 一週間という期間はあっという間で、俺たちは選手登録を済ませると足早に会場へと向かっていた。

 デブリベルトと呼ばれる人類が宇宙に進出して以来捨ててきたゴミのたまり場。

 そこが今回のASGの会場になる。

 デブリベルトは様々なものが浮かんでいるので、それを駆使した戦いが求められる。その分、戦略の幅も広がるため、ぼーっとしている暇はない。さっさと会場にあるものを把握、敵チームとの交戦に備えなくてはいけない。

 俺たち六人は、即座にミーティングを開き、あらゆる事態に対処できるよう、様々な知識が叩き込まれた。

 とは言えそれがすべてではない。

 戦場にはいかなるときも油断してはならないのだ。

 チームは三十二チーム。トーナメント方式でトップスリーに入るのは骨がいる。

 チームトリニティやチームネメシス、ネビュラなど。

 うちの学園からは大蛇おろちとガマの二チームだ。

 女子グループが大蛇。俺たち男子が大蛇だ。

 大蛇は戦術パターンが多く、結束力も強い。

 一方でガマは個々の力は強いがまとまりがない。特に火月が突出しているのが見受けられる。

 そのリーダーは熊野だが、実際のところ火月に振り回されていることが多い。

 第一試合が始まると俺たちはAnDにて別命あるまで待機。その間にメンテを行う。

 常に完璧を求められるが、一秒も惜しい今ではメンテにも注意を払う。

 AnDは戦闘用マシンだが、精密機械の一種でもある。危険は避けたい。


 一時間後。

 ようやく俺たちの出番だ。

 俺は機体を流し、戦闘空域に固定する。

 火月と熊野も続いて固定し、カウントダウンが開始される。

 3、2、1

《スタート!》

 その合図とともに火月が三連発の射撃を行う。

 それがデブリの合間を抜け、敵AnDのエンジン部に直撃する。

 相手が慌てふためいているが、非情にも終了の合図が鳴る。

《試合終了! チームガマの勝利!》

 大々的に放送され、火月がガッツポーズをとる。

 何もすることなく一試合目を終えた俺たちは輸送船に戻る。

「てめーに活躍なんざさせねーよ!」

 けけけっと性格の悪そうに笑いを浮かべる火月。

「そうか」

「すかしてんじゃねーよ! てめっ!」

 俺はすかしたつもりもない。難癖をつけらてはかなわん。

 しかし火月はそうは思っていないようで、腸が煮えくり返るような思いで俺を睨んできた。

 応じず、俺は休憩スペースに入る。

 ここからなら観戦できるかな? と思い窓の外を見る。

 どこまでも暗く透明な宇宙。その広大さに人類は憧れてきた。

 その憧れが今目の前にある。

 資源もエネルギー問題も解決した宇宙。そこには無限の可能性があるように思えた。

 光が走る。

 AnDの光だ。さすがネメシスのエース・ジークフリート。無駄のない洗練された動きで難なく敵を撃破している。

 他にもエルビンやノーム、灯里、真也といった各高校のエースを見て奮い立つ。

 俺はあいつと戦えるのだ。

 心が沸き立つというもの。根っからの戦闘狂。そんなんだから軍人家系の高校に入学させられたのだろう。

 第二試合は明日の午前。

 明日はどんな戦いが待ち受けているのだろう。狂みたいなのは勘弁だ。何もできずに終わったではないか。

 俺は気晴らしにシミュレートに取り付き、暇な時間を潰した。

「あ、やっと見つけた!」

 俺を見つけ嬉しそうに顔をほころばせるティアラ。

 無重力なので上から降りてきたティアラは、俺の差し出した手を握る。軟着陸すると、ほっぺをふくらませるティアラ。

「またシミュレーション? 飽きないね」

 どこかおばあちゃんぽい言い方をし、戦闘成績を見やる。

「パーフェクトじゃん。もういいから遊びにいこ?」

「え。ああ」

 ティアラが強引に俺の手を引くと近くにある廊下への通用口に入る。

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