消えるのが確定した

放置した兄貴が復活して二日。

兄貴は未だ俺の家に滞在していた。


「そんなに怒らなくてもいいだろギル。」

「近寄るな変態兄貴。そのせがむような視線が怖いんだよ。」


本を読んでいる俺に近付き、頭を撫でてくる兄貴。

皮膚の硬いゴツゴツとした手が髪をなぞる。

兄貴に撫でられるのはそこまで悪くないし、俺もそこまで襲ってきたことを怒っていない。胸を触るくらいなら兄貴のことだからやりそうだとはと少し思っていた。


だけど、俺のことを獲物でも狙うようなギラギラした目付きで見るのは予想してなかった。明らかに俺のことを性的対象として見てるだろ。俺は男だし、これからも男をやるつもりだ。ご褒美は一回や二回しか無いからご褒美というんだ。もう女になるつもりはないからな。


「ところでギル。お前に言っておくことがあってな。」

「唐突にどうした兄貴。」

「ギルはヤルヴァン王立高等学園に入ってるだろ。聞いていると思うが、ザマテスに壊された設備などを修理をしているようで学園は長期休みだ。」

「まぁ、その通りだな。」

「ここからがまだ聞いてない話だ。ギルの学園に居る奴等はこれからの国の中枢を担うだろ。今回は大丈夫だったが、第二のザマテスのような奴が現れたら纏めて殺されてしまうかもしれない。だから、この長期休み中に騎士団に混じって生徒自身の実力を上げることにしたらしい。しかも合宿らしいぞ。」


は?

長期休みが合宿に入れ替わる?

騎士団のメンバーは分からないが、絶対にあんな奴等と合宿なんてしたくないぞ。鍛える前にストレスで死ぬ。ミルなんて絶対に連れていってはいけない。


……まぁ、どちらにせよもう行かないし関係ないか。


「……長期休みが合宿に変わったってことであってるよな兄貴? 」

「その通りだ。」

「……もう学園には行かないことにしたんだ。だから、話をしてくれて悪いが長期休みが合宿に変わったとしても行くつもりは無いから大丈夫だ。」

「やめとけ。どうやら他国への牽制の意味もあるらしいからな今回の合宿。俺の騎士団でも死んだ奴がいたが、国が主導して訓練する時は理由なしに抜けたりサボったりすると大貴族で無い限り平気で見せしめに殺されたりするからな。逃げても国中追っかけられるぞ。……とりあえず参加しといた方がいい。」


兄貴が淡々と諭すように述べる。


聞いたことないぞそんなの。

見せしめに殺すとかあるのか。

殺されない自信はあるが、日常的に殺されるのを警戒するのは非常に面倒臭い。プライバシーなんてあったものじゃないなこの国。でも、あんな奴等が国の上層にいるので当然か。……一回ザマテスに滅ぼされた方が長期的に見たら良くなりそうじゃないか?


「それじゃあ、行くしかないか。ところで、合宿の期間はいつからだ?」

「大体後一週間後だ。ちなみに、俺もその合宿に強制参加だからな。何かあったら助けてやるよ。困ったことがあったら言えよな。」


言い終えると、兄貴が少し強く俺の肩を叩く。全然痛みは無いが、兄貴のこういうところは変わってないなと思った。やっぱり優しい。


「そういえばギル、一つお願いしていいか。」

「ん? どうしたんだ兄貴?」

「ちょっと、模擬戦でもしないか。この休み期間中に体が鈍りそうでな。ギルは相当強くなったらしいし、別にいいだろ?」

「……模擬戦か。」


兄貴の体を横目で見ると、服の上からでも分かるくらい筋肉が盛り上がっている。見た目では負けそうだが、兄貴と俺ではレベルが大きく離れているので多分負けない。魔法でもそうだ。

勝負は始める前から分かっているようなもんだが、やってみるのもありはありか。

俺は頷いて了承した。


「別にいいぞ。」

「よく言ったギル。この勝負で負けた方は勝者の言うことを聞くことになるからな。騎士団の模擬戦は基本そうだった。模擬戦と言ったからには、負けたら俺の言うことを聞いて貰うからな。」


そう言い終えると、ギルの胸や尻にザルテマが卑しい視線を向ける。ギラギラとした視線はギルの神経を抉る。一度女体になったギルがそんな視線に気がつかない訳がなかった。


俺に模擬戦を仕掛けて来たのは、そういうことだったわけか。

兄貴をぼこぼこにすることを決めた俺は、兄貴の逃げ道を塞ぐように尋ねた。


「負けたら言うことを聞くのは分かった。だけど、兄貴も負けたら俺の言うことを聞くよな?」

「ああ。聞いてやる。流石にそんな不公平なことはしない。」






数分後、ザルテマはブランコの姿に成り果てていた。



ーーーーーーーーーー


「どうだ兄貴。女性姿の俺に遊具として遊ばれるのは屈辱だろ。悪いことを企んだお仕置きだ。ご褒美があったんだから、お仕置きがあるのも当然だよな?」

「………お仕置きじゃなくてご褒美だろ。」

「ん? 何か言ったか兄貴。」


こんな会話があったとか無かったとか

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