またしても訪問

アラルナの前でやらかした次の日。

またしても、珍しい人物が家に訪れていた。


「おいおい。いつの間にこんなに格好良くなってたんだよ。ミルも噂の通りスタイル良く、べっぴんさんになってるし。 わざわざ心配する必要なんてなかったな。」

「……兄貴、何か心配されるようなことなんてしたか?」

「はぁ? ギルは親父や母さん、妹達から嫌われてここに居るんだろ? 少しのお金と家だけ渡されて生活してるって聞いたから、見にきたんだよ。ザマテス襲撃事件が起きて一度暇が出来てたまたま実家に帰ったら、お前達の姿が無いんだからめっちゃ驚いたぞ。言ってくれれば助けてやったのに。」


ツンツンと不満そうに俺の頬を人差し指で押してくる俺の兄ことザルテマ。

ナハネス家次男で今年で二十歳。長い金髪に身長は185センチくらいで、中性的な可愛いげのある整った顔をしているが、中身は優しいヤンキー。とんでもない見た目詐欺だ。言動と見た目が全く合ってない。

幼少期から大の女好き。ミルと兄貴は結構仲が良かった。兄貴は15歳の頃から王都の魔法騎士団に所属。所属してからずっと寮生活で家に居なかった。


兄貴が居なくなってからまもなく、俺が家から追放されたので兄貴は気付かなかったのか。兄貴の言うように俺も言ってなかったし。


「久し振りですザルテマ様。ザルテマ様こそあまり変わっておらず、少し安心しました。……ですが、頬をツンツンとするのを止めて貰ってもいいですか? ギル様のほっぺは私の物です!!」

「相変わらずお前のギル好きは治ってないな。だが断る!! 俺は昔からギルのほっぺたが大好きだったんだ。しかも、前触った時より明らかに質感がいい。いくらお前でも絶対に渡さん。」

「何でですか!? 私のほっぺたですよ!! 返して下さい。」

「いーや、俺のほっぺただ。魔法騎士団に所属してる間ずっと触れ無かったんだ。少しくらいいいだろ。いや、滅茶触らせろ。」

「駄目です。反対です反対!!」


何でこの二人は俺に聞かないで俺のほっぺの所有権で争っているのだろうか。

ミルはいつものこととして、兄貴はどういうことだよ。


ところで、ミルの独占欲が最近更に増した。『私の物はギル様の。ギル様の物はギル様の。ギル様自身は私の物。』と料理を教えている時に上機嫌に鼻歌で歌っていた時は思わず皿を落としてしまった。その後詰められたのは言うまでもない。俺の方が強い筈なのにたっぷり愛を味わされた。


「くっ!! 魔法騎士団に入ってるのに何でこんな筋肉が付いてるんですか。魔法メインですよねあそこ。なのに、どうして王国騎士団並みの筋力があるんですか!! ……これでも私獣族なのに。」

「筋肉がある男の方が格好いいだろ? それに、万が一魔力が切れたら肉弾戦になるからな。筋肉はつけといて困らない。」

「こんなことに使わないでくださいよ!!」


俺のほっぺたから兄貴を引き剥がそうとするミル。兄貴に後ろから抱き付いて、兄貴を自分ごと俺から離そうとするがびくともしない。ミルの言ったように獣人は人間と比べると女性が約1.5倍。男性は二倍くらい筋肉が強い筈だ。獣族のミルに全くびくともしてない辺り、相当五年間で兄貴が強くなったということだろう。


ギルのほっぺを摘まむザルテマは服の上からでも分かる程厚い筋肉が付いていて、魔法使いにしては珍しいがっちりとした体型をしていた。顔が中性的なだけにあまり体型が似合ってないが、それだけ苦しい訓練を重ねて鍛えあげたということだろう。しかし、あくまでザルテマは魔法を鍛える為に入団したので、魔法の実力もそうとうなとこまで上がっている筈だ。……ギルに比べると蟻みたいなものだが。


ミルに抱き付かれて何度も後ろに引っぱられる兄貴。引っ張る度にミルは反動で兄貴から離れ、意地でまたくっついて兄貴を俺から剥がそうとする。その姿はまるで子供が重たい物を一生懸命運ぼうとしているようで見ていて心がぽかぽかと温かくなる。しかし、俺はミルの姿より段々と顔を気味悪くニヤけさせていく兄貴に目線が向いた。



兄貴の顔がにやついているが、まさかミルの胸で喜んでないよな。魔法騎士団は『清く貴く』というスローガンの元不純異性交遊が禁止されていたから、そうとうきている筈だ。特に女好きの兄貴なら。昔親父に無理矢理入団させられて珍しく泣いてたのを覚えている。だが………いくら兄貴といえど、相手は選んだ方がいいよな。


ギルはザルテマに光線のような鋭い殺気をぶつけると、ザルテマはギルの圧倒的強者の殺気に一瞬で泡を吹いて倒れた。中性的な顔が台無しである。ミルは一瞬で倒れたザルテマを見てはっとすると、ギルの方を向いた。


「今のは、ギル様がやったんですか?」

「ああ。ミルに抱き付かれて興奮していたようだったからな。魔法騎士団に所属していたとはいえ、興奮する相手は考えて貰わなければならないからな。ちょっとしたお仕置きだ。」

「……私の体で興奮していたんですか? 」

「……顔がこれでもかとにやけていた。でも、よくよく考えたらミルの体で抱き付かれたら我慢しようとしても興奮しちゃうな。何かごめんな兄貴。」


泡を吹いて倒れた兄貴の顔を横にし、服を軽く外して呼吸をしやすくさせる。流石に死なないとは思うが窒息されたら困る。訓練の成果なのか、無意識中にも関わらず腕から倒れて、腕である程度衝撃を吸収していた筈だから多分少し経てば治ると思うが。


八つ当たりしてしまった兄貴をまじまじと見つめていると、ミルがワクワクした子供のような雰囲気で手錠とロープを倉庫から持ってきた。手錠なんて買った覚えがないが、ミルが買っていたのだろうか。でも、一体何に使うんだ。


「何に使うんだそれ?結構物騒な物だが。」

「久し振りにザルテマ様に悪戯でもしようかと思って。私の体で興奮したお仕置きですよ。お仕置き。ギル様、手錠を腕に付けてもらってもいいですか?」

「ああ。分かった。」


ミルに言われた通り、兄貴の右腕と左腕に手錠を掛けた。手錠は鉄製で結構厚く出来ていて、ムキムキになった兄貴でも壊すのは無理そうだ。ミルがその後に、両脚に手錠を掛けた。


「その次はザルテマ様の体を縛るのを手伝って下さい。」

「縛るって、その為のロープか? 」

「そうです。全身をぐるぐる巻きにします。起きちゃうと失敗しちゃうので、速くやりましょう。」


何だか拷問するみたいだなと思いながらも、ミルの楽しそうな表情に惹かれて兄貴の体をロープでぐるぐる巻きにする。呼吸もさっきより安定しているので、窒息の心配は無さそうだし縛っても大丈夫だろう。


少ししてロープに包まれた兄貴が完成した。兄貴の様子はまさに泣きっ面に蜂だった。


「兄貴を抵抗出来ない姿にしたが、どうすればいいんだ?」

「次で最後です。物干し台と洗濯竿を持ってくるのでちょっと待ってて下さい。」


洗濯竿に物干し台? これらを一体何に使うんだ? 兄貴を縛ったのは洗濯物みたいに干す為か? ……だが、それはもう悪戯じゃ収まらずもはや拷問な気がするが。


兄貴のこれから起こるだろう未来を憂いていると、洗濯竿と物干し台を持ってミルがやって来た。


「それじゃあ、最後にザルテマ様を横にした状態で吊るします。」

「……やっぱり吊るすのか。」

「はい。新しい手錠を持ってきたので、洗濯竿とロープを手錠で結びつけます。私じゃ持ち上げられないので、ギル様はザルテマ様を持ち上げて下さい。」


ミルは物干し台をセットすると、金属製の物干し竿をセットした。


兄貴の体を洗濯竿近くに持ち上げると、ミルが器用に洗濯竿と縄を結びつける。ミルによって兄貴はいとも簡単に洗濯物のように干されてしまった。少なくとも気を失ってる間にしていいことではない。拷問でも聞いたことないぞこんなの。ミルはこれをしたかったのか?


「ありがとうございますギル様。やっと完成しました。昔から考えていたんですよね。それじゃあ……一緒に乗りましょう?」

「え? あ、兄貴に乗るのか?」

「はい。遊具でこんなのあったらなぁと思っていたんですよ。ギル様が冒険に行ってる間に試作品とか作ってみたんですが、耐久性が無くて直ぐに壊れちゃって。なら、新しい素材で人間ならどうかと思ったんですよ。生憎ザルテマ様はムキムキですしね。耐久性もありそうです。」


ミルが言っているのはブランコのことだろうか。

確かこの世界にはブランコが無い。そもそも遊び道具がほとんどないのだ。そんな中ブランコを思い付いたミルは凄いと思うが、人間を素材として使うのはどうなんだろうか。しかも兄貴は次男とはいえ貴族だぞ。いくら仲が良かったとはいえ、どうかと思う。……でも、ミルが楽しそうだしいいか。


ミルは大きく右足を華麗に上げると兄貴こと人間ブランコに誇った。人間ブランコに乗れたことに達成感を感じたのか、少女のような純粋な笑みを浮かべて楽しそうに笑う。その笑みは人を魅せるものがあり、思わずミルに見入ってしまう。やっていることはあれだが、凄く絵になっていた。


ミルの体重で兄貴のお腹の部分がやんわりと凹む。ミルの体重に体が反応したのか、兄貴がゆっくりと目を開けた。


「あ? 今どういう状況だ。何か重いんだが訓練中じゃないよな。……いいや訓練はありえない。確かザマテス襲撃事件があってあの地獄から帰って来た筈だからな。じゃあ…何で重いんだ? それに何か体が動かないぞ。」

「重い重いうるさいですね。耐久性はありそうですが、うるさいことがデメリットですね。喋れないようにする道具を使う必要がありそうです。………そんなに重いって言うのなら、重いなんて言うことが出来ないくらい苦しめてやりますよ。」


女性に重いと言うのはやはり駄目らしい。

ミルは意を決めたように洗濯竿にぶつからない程度に跳ねると、兄貴の上に勢いを付けて着地した。どすん。ミルはスタイルがいい分見た目以上の重さがある。ミルが着地しすると同時に兄貴は呻き声を出した。


「ぐっ……お、おい何すんだよ。てか何で俺は吊られてんだ? 手錠やロープ何かも使ってるし。取りあえずなんでもいいからはやく下りろ。後下ろせ。」

「私の気が済むまで下りませんよ? それにギル様から聞いたところによると、私の胸が当たって興奮していたようですね? それなら今の状況はそんなに悪くないと思いますよ? だって、私のお尻に触れることが出来ているんですから。」

「なっ!! おいギル貴様、お前何言ってんだ。マジでぶっとばすぞ?」

「ギル様をぶっ飛ばすって言いました? そんなこと言ってると一生下ろしませんよ?……そもそも勝てないと思いますけど。」


兄貴が目を細めてこちらを鋭く睨む。だが、中性的な見た目をしている為全然怖くない。結構本気で怒っているようだが、どちらかといえば可愛さの方が勝っていた。


興奮していたのは否定しないんだなと兄貴の女好きに呆れていると、ミルがまた兄貴の上でヒップドロップをした。どすん。さっきよりも大きな兄貴の呻き声が響く。


だが、ミルに言われた通りミルのお尻に触れることが出来ていると気付いたからか、口では嫌なように言うも表情は楽しそうだった。性欲には勝てないらしい。全く兄貴らしいといえるが。……って俺が言うことじゃないか。


「……っと、そもそもの目的を忘れていました。私が考えていた遊具は別にお尻で跳び跳ねるものじゃありません。ぶらぶらと揺れるのが目的です。ちょっと移動しますね。」


ミルは兄貴に誇るのをやめると、兄貴に巻き付いたロープを掴んで兄貴の腹の上に座り直した。一瞬元に戻った兄貴の腹が、ミルが座ると同時に再び凹み始めた。


「ぐうっ……」

「それじゃあ、重心を移動させて実際に揺れてみましょうか。」


兄貴のことは無視することに決めたようで、呻き声を出してもミルは反応しなくなった。これが放置という奴か。


ミルは肉付きのいい白い脚を曲げたり伸ばしたりすることで、本物のブランコのように段々と揺れを大きくしていく。揺れが大きくなる度に兄貴の呻き声が大きくなっていくが、そんなの気にならないくらいの満開の笑顔をミルは咲かせていた。


人間ブランコは加速するように揺れが大きくなっていき、兄貴の頭が天井にぶつかりそうな程にまで上がる。物干し竿と物干し台はぶるぶると先ほどから震えていて、瀕死になりかけである。

天井にぶつかりそうになりザルテマの本能意識が刺激させられ、ザルテマは冷静を取り戻す。

身動きの取れない状態で且つ勢いのついた頭で天井に頭突きをするなんて冗談じゃない。

兄貴のにやけていた表情は硬くなり、ミルに真剣な声で非難を飛ばした。


「ちょっ!? いまぶつかりそうだったぞ。危ないから下ろせ。そして下りろ。てか、このままじゃ酔いそうだ。下ろさないで全身汚れても知らないからな。」

「もしそんなことしたら一生遊具になってもらいますよ。………でも、確かに危ないですね。ちょっと揺れるのはやめましょうか。」


ミルは軽くヒップドロップをすると、運動が下に掛かりブランコの揺れが弱くなる。不意打ちのヒップドロップに兄貴は今日一番の大きさの呻き声をあげた。そんな兄貴に対してミルは当然といった表情だった。


「い、いきなりするならちょっとは声掛けろよ。揺れは弱くなったが別の意味で出そうだ。」

「………汚いですよ。そんな言葉は貴族なんですから使わないで欲しいです。」

「……そんな貴族様に乗って遊んでるお前に汚いとか言われたくねぇよ。」

「………」


ミルは無言で今日何度目か分からないヒップドロップをした。兄貴に正論を言われたのが悔しかったのかもしれない。どすん。兄貴がヒップドロップに合わせて息を吐く。すると、ミルは無言で何度も兄貴にヒップドロップを続けた。まるで答える隙など与えないように。


「……そもそも喋る遊具があるのがおかしいんですよ。私が喋らないように直してあげないと。」

「お、おい。マジでやめろ。本当に出そうだから。……分かった分かった。俺が悪かったから。」

「仕方ないですね。これで最後にしてあげます。」

「ぐはっ!!」


今日一番の高さで桃尻を落とすと、優雅に人間ブランコから下りた。その姿は何処の国かのお姫様のように雅やかで、その美しさに世界が一瞬止まった気がした。

ミルが下りたことで凹んでいた兄貴の腹は少しして元の形に戻ったが、兄貴の表情は戻りそうになかった。女性の居ない環境で五年近く過ごしてきて、ミルのボリュームのある尻で遊ばれたのだから快楽と苦痛と屈辱が混ざりに混ざりあっていたのかもしれない。



それを示すかのように兄貴は何とも言えない表情で硬まっていた。


「それじゃあ、運動してお腹も空いてきましたしちょっとご飯作ってきますね。要望はありますか?」

「消化の良さそうな温かい物を頼む。」

「分かりました。頑張って作りますね。」


ミルは俺に頼られたのが嬉しいのか上機嫌でリビングに向かっていった。



俺はミルが居なくなったことを確認すると、そっと人間ブランコを元の姿に戻してやることにした。昔はそうでも無かったが、快楽のレベルが上がったことでいかに禁欲が辛いか兄貴に同情したからだ。


しかし、人間ブランコから人間の姿に戻してやっても兄貴の表情は変わらず、見ていてこちらが辛くなるような顔をしていた。


うーん。どうするべきか。何だかんだいって俺も協力したしな。兄貴が流石に可哀想になってきた。

女性を用意したら間違いなく兄貴は跳ね上がる程喜びそうだが、そんな女性はミル以外に居ない。ミルを渡すのは論外だし、ミルに散々苛められた後だと逆に萎えそうだ。




……ん? いや、俺が女になればいいのか?

確かレベルが上がったことで使えるようになった魔法の一つに、性別を一定時間入れ換える魔法があった気がする。誰が使うんだよと思いながらも、あまりに他の魔法と性質が違い過ぎるのでその魔法が自然と頭に入っていた。俺がその魔法を使ったら、女になるのだろうか。……でも、女になるっていっても女になったら俺はどうなってしまうんだ?


兄貴の顔が視界に入る。すると、罪悪感が体中を巡った。


……仕方がない。女になってやるか。今の兄貴を見ていると罪悪感で押し潰されそうだからだ。このままだと俺のメンタルが死ぬ。五年振りの再開のプレゼントだと思ってやってやろう。別に俺がやりたくてやったわけじゃないからな。勘違いするなよ兄貴。……勘違いするなよ。


ギルは何百字にもなる魔法を詠唱始めた。ギルは一文字も間違えることなく詠唱を終えると、その瞬間ーーーーそこには神々しい美女がいた。宝石のように麗しく輝く長い金髪に、綺麗と愛愛しさを兼ね備えた黄金比のような整った顔。一目見たら誰もが欲情してしまいそうな男殺しの妖艶な体。その姿は、まさに女神の生き写しのように思えた。



……これが女性になるって感覚か。

俺は自分の体を見下ろすと、そこにら今まで見てきた女性とは次元の違う程艶かしいボディがあった。太りすぎても痩せすぎでもない、まるで誰かが造ったかと思うほどバランスのいい体は、自分の体とは思えなかった。


俺は今着ていた服を脱いで下着になった。

男用の服を着ているせいで胸の部分なんかはち切れそうだし、尻や腰の部分が明らかにサイズが合ってないのだ。肩幅なんかは余裕があるが、それでも苦しい。服が破けなかったのが奇跡だ。結構気に入ってた服なので破けなかったのはありがたい。

下着になったもののボリュームがあるだけにまだ苦しい。特に胸の部分に圧迫感がある。脱げるなら脱ぎたいが、全裸になったらそれこそ事案だし我慢するか。


俺はそのまま兄貴に近付くと、床に脚をつけて正座になる。そして、兄貴の頭を優しく自分の太ももに乗せた。所謂膝枕という奴である。たまにミルがしてくれるが、女の子特有のいい匂いと優しい感触が心地よい。兄貴も恐らく気持ちよく眠れることだろう。


俺は優しく兄貴の頭を撫でた。兄貴のさらさらとした髪が指の間を通り過ぎていく。口は悪いが悪い奴じゃないのだ。むしろ優しい。女好きなところがたまに癪だがそれも兄貴の魅力の一つということだろう。


膝枕をしながら優しく撫でていたせいか、兄貴の顔は少しずつ元通りになり、格好いいというよりかは可愛さのある中性的な顔に戻っていた。今ではすやすやと可愛らしくいびきを立てている。兄貴の調子も戻ったしもういいか。ミルがそろそろ何か作ってリビングに来そうだし、ご褒美タイムも終わりにしよう。


ギルがザルテマの頭を退けて静かに床に下ろそうとした時事件は発生した。突如ザルテマの腕が伸びてーーーそのままギルの胸を豪快に掴んだのだ。実に鋭く切れのある掴みで油断していたギルは対応出来なかった。


ザルテマが胸を掴んだ瞬間、ギルは大きな悲鳴をあげるとともにザルテマの頬に真っ赤な花を咲かせた。




ーーーーーー


次はザルテマ視点から始まります。

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